Neetel Inside 文芸新都
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中年戦隊ミドレンジャー
第六戦:お約束…ヒロイン大ピンチ!!

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第六戦:お約束…ヒロイン大ピンチ!!

倉庫中央の大きな会談にたどり着く4人。
「よし、ここでわかれよう。俺は二階の右側半分を調査する」
と、巧ことブルーが先陣を切って階段を駆け上がる。
「じゃ、僕は左側を」
肥満体の貴ことイエローが息を切らしながら二階を選んだのは、一階より僅かながら手狭で、かつ薄い天井から日の光が漏れていること。この男はヒッキーのクセに、クラガリが怖いのだ。

「OKッ! じゃ、私は下の階の左半分を捜索するわ」
「おいおい、順子、いやピンクを一人で行かせるのかよ?」
と、レッドこと洋助が不安そうに順子を見遣る。
「大丈夫よ、シングルマザーはツヨシってね! ジェノサイドの悪い人たちを見つけたら一人でやっつけちゃうんだから!」
ピンクは仮面の下でウインクしてみせる。そんな仕草に洋助はファイタースーツの下で、胸を高鳴らせた。

こつこつこつ…。ミドレン・ピンクの象徴、特殊アクリル製、クリスタルレッグウォーマーが薄暗い倉庫内に木霊する。
「おかしいわ。こんなに忙しい筈の倉庫に誰もいないなんて。きっとジェノサイドの悪い奴らが、作業をしている人たちを捕まえているんだわ」
と、勝手な想像をするミドレン・ピンク。小熟女戦士はたわわなお乳を少々気遣いつつ、薄暗い倉庫内を探索する。と、ここで読者の皆様は戦隊もののお約束と言えば何を想像するだろう。そう、紅一点、つまりはヒロインのピンチである。パワーで劣る女戦士に敵方が照準を合わせるのは当然のことだ。それは、この物語とて同じである。悪の魔手は確実にミドレン・ピンクに忍び寄っていた…。

突如現れたのは、ジャングルの倉庫作業服を着た男たちだ。
「うおおおお――――—ッ、休暇をくれぇぇ―――—ッ!!」
「体にとりつけられたGPSセンサーを外してくれぇ~~~ッ!! 荷物を運ぶ時間まで管理され、もう発狂しそうだぁ~~~ッ!!」
「これ以上働かされれば精神が持たんん―――ッ、みんな、もう通販を利用するのはやめてくれええぇぇ~~~~~ッ!!」
目を血走らせ、意識朦朧の状態で、泡を吹きながら口々に助けを求めながら、ミドレン・ピンクに駆け寄ってくる。
「み、皆さん、しっかりしてください! ジェノサイドに乗っ取られたこの倉庫で、過労死しそうなくらい働かされているんだわ。なんとか全員を助けなくっちゃ!」
優しさだけは売るほどある正義のヒロインは、それぞれの男たちを助け起こす。

「あなた方のほかにも、ジェノサイドに奴隷化されている人はいるんでしょう? どこにいるかわかりますか?」
「うぅぅ…だ、駄目だ…我々の動きはGPSで管理されている…。勝手に行動すれば…センサーが反応し小型爆弾が起動され、爆死させられる…」
「そ、そんなッ、酷い! すぐ外してあげますから!」
と、ピンクがむっちりレオタード姿の肢体を、汗に塗れた男に密着させ、爆弾を探し始めた。その時だ。男の一人が順子を背後から襲ったのだ。
「く、苦しィ…」
ピンクの首筋に強靭な男の手がぐいぐい食い込んでいく…。

「フハハハハハ、罠に掛かったな、ミドレン・ピンク!」
と、颯爽と現れたのは黒いマントに黄金の仮面をつけた大男。いや、実際の容姿は伺い知れないが、謎めいたベールにその身を包み込むようにして登場したその男は、苦しむ女戦士を小気味よく眺める。
「あ、あなたが…Mr.チャイルド…ね?」
「ふふん、そう呼びたければ呼ぶが良い。今日、お前たちを誘き出したのは、なにを隠そう、ミドレンピンク…お前を捕らえるためだ」
「な、なんですってぇ…うぅ…」
「戦隊ヒロインの女キャラは、敵に捕まって足手纏いになるっていうお約束があるじゃあないか。それを体現してもらおうか」
「あ、足手纏いになんて…なるもんですかぁッ…か、必ずあなた達を倒して…平和な世の中おぉ~~」
半白目を剝きながら窒息の苦しみに耐えつつ、レオタード姿の肉体を悩まし気に捩る。

そしてもがき苦しみながらも、唯一の武器、新体操のリボンを模したミドレン・電磁ホイップを起動させんと、手首に装着した小型スマホを操作する。
「おお、抗う気かね? 君を捕えている倉庫作業員たちは生身の人間だよ。スーパーヒロインの君が、一般ピープルに手を上げるのかね?」
「うぅ…」
ただでさえ気立ての佳い順子に、敵でもない男たちに武器を使う選択肢などあろうはずはなかった。

       

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