Neetel Inside ニートノベル
表紙

真司くんのゾ○アーク
その2

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 それから時は流れ、真司くんは無事志望していた中学校に合格した。
 そして合格発表の次の日、俺と真司くんは早速近所の公園に集まった。
 俺は真司くんにあの時受け取ったゲームカードを手渡した。真司くんはゲームカードを見て、データ消したりしてないよね、と冗談を言った。俺は、もちろん、何もしてないよ、と言った。


 セーブデータがそのままになっているのを確認した後、真司くんは俺にあるポ○モンをあげることにしたようだった。
 色違いのゾ○アークだった。ニックネームは「ナイトメア」、レベルは40。
「はい、このゾ○アークを君にあげるよ。ずっとゲームを持っていてくれてありがとう」
 真司くんはそう言った。
「うーん、でも……悪いよ。このゾ○アークは真司くんが頑張ってゲットしたものなんでしょ? それを何もしていない俺がもらうのは……」
「あーもう。いいの、いいの! これは俺の気持ちだから! 今までありがとな! それと、中学行ってもずっと友達だからな! とか、そういう色んな感謝を込めて、ってやつだから!」
 真司くんはそう言いながら、俺のDSを奪い取ってしまった。通信画面を開き、真司くんの色違いのゾ○アークは俺のDSに転送された。
「このゾ○アークは、いわば俺の形見! 違う中学校に行っても、俺のこと忘れないでくれよな!」
「形見っておい……。死ぬわけじゃないのに」
「それもそうだな、ははっ」
 その日はひたすら真司くんとポ○モンをして遊んだ。
 日が暮れて、門限の時間になった。俺と真司くんは家に帰らなければいけなくなった。
「中学は違うけど……、俺達、ずっと友達だからな!」
 真司くんは大きく手を振りながらそう言った。
「当たり前だ! また会ったら、よろしくなー」
 俺はそう言って手を振り返した。
 日が沈み、お互いの顔が見えなくなるまで、お互い手を振り合った。


 ……と、ここまで回想してわかるように、このゾ○アークは、とても思い入れ深いポ○モンなのだ。真司くんとのかけがえのない思い出が詰まっているポケモンなのだ。
 俺は、ゾ○アークを通して、真司くんのことを思い出せてよかったと、心底そう思った。


 そして大会当日。
 大会参加者が、会場になっている大講義室にわらわらと集まってきた。
 こんな大人数の前で、これからエキシビションマッチをするのかと思うと、何だか緊張してきた。落ち着かない。
 その様子を見た伊東くんが、俺に話しかけてくる。
「まあ……その……エキシビションマッチなんだし、気楽にいこうよ」
 俺は、あっ……そっすね……と、小さな声で頷いた。


 そして遂にエキシビションマッチの時間になった。
 こちらのパーティは、色違いのゾ○アーク、バシ○ーモ、イン○レオン、ラ○ドロス、アー○ーガア、ウー○オスという構成だった。
 対する伊東くんのパーティは、ラ○ドロス、ウ○ロイド、フ○イゴン、カ○・レヒレ、ヒード○ン、ヌ○ニンという構成だった。


そして試合が始まった。始めに出すポケモンはもちろん真司くんからもらったゾ○アーク。たとえ伊東くんがどんなパーティを組んでいようと、最初にゾ○アークを出そうと決めていた。
 モンスターボールからゾ○アークが繰り出される。色違いであることを示すマークが画面いっぱいに広がる。色違いのゾ○アークに視線が集まっているのに気付いた。会場は少しざわついていた。
 大画面に映し出される「ナイトメア」の文字に、正直にやけ顔が隠せなかったのはここだけの秘密だ。


 そして試合が終わった。
 結果は敗北。全くといって付け入る隙もなかった……というほどではなかったが、なんやかんやしている内にいつの間にか負けていた。フライゴンに3タテされた。
 負けて悔しいという気持ちも多少はあったが、緊張から解放された安堵感の方が大きかった。


 試合が終わった後、伊東くんが俺の方に来た。
「あのゾ○アーク、良い色してたね」
 伊東くんは言う。
「それでさー、あのゾ○アークを見てさー、君に会いたいっていう人がいてさー。まあ、ネットで知り合ったポ○モン友達なんだけどね」
 伊東くんは笑いながらそう言って、友達を紹介してくれた。そこにいたのは――間違いなく、見紛うことなく、真司くんだった。
 すらりと伸びた細い足。シュッとしたシルエットの青いジーパン。そして……ポ○モンが真ん中に大きくプリントされているシャツを着ている……そんな人間……、もといポ○モン好きは、今まで会った人間でも一人しか知らない。
 目の前にいるのは――間違いなく、真司くんだ。
「ん? 真司くんと知り合いだったりする? ははっ、世間狭すぎだな」
「ひ、久しぶり! 真司くん」
 俺はそう言った。真司くんは何も言わずにこくりと頷いた。
 そして昔話をしようとした俺を、真司くんはそれを制すように手を振り払う。
「久しぶりだな! 積もる話はあとでいいよね! よし! ポ○モンバトルをしよう!」
 俺は無言でこくりと頷いた。


 ポ○モントレーナーの 真司くんが 勝負を しかけてきた!


<終わり>


       

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