Neetel Inside 文芸新都
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幼馴染をモノにしたい俺のHな時空旅行
Travel6:恐怖のヤンキーVS幼馴染のマドンナ

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Travel6:恐怖のヤンキーVS幼馴染のマドンナ

平成初頭は、令和の時代からすれば、まあ何とも恥ずかしいと思うモノは少なくない。その一つがヤンキー集団の名前だと俺は思う。地元を騒がせていた暴走族グループ、ゴールド・エンペラー(略してGE)は、近くの民族系の日本でいうところ、高校生にあたる生徒が中心になって暴れていたメンバーだ。万引き恐喝、傷害事件と何でもござれの総勢60人で構成される彼らの所業は地元で知らない者はいなかった。名前の通り道交法を完全無視したダークな運転では、巻き添え事故まで引き起こし未だに語り草となっている。ただでさえ迷惑千万な存在の彼らだが、特に日本人中高生に対する敵愾心は半端なく、何人もの男子中高生がカツアゲされたり、リンチの餌食になっていた。かくいう俺も例外ではなく、何度となく彼らに捕まり、リンチされ、金を巻き上げられた。まあ、それだけで済めばいいのだが、この連中が単なる不良と異なる点は相手をとことんいたぶることを愉しむところにある。肉体的にも、精神的にも、だ。

朴愛信。GEのリーダーにして、喧嘩、というより格闘のプロ。某大学のレスリング部の連中とケンカし、一人で8人の猛者を打ち負かしたという伝説の男だ。が、コイツのエグサはそこからが本番で、ぶちのめした男たちを二人一組にさせ、シックスナインさせたのだ。その様子を写真に収め、大学関係者に暴露を示唆し、素人に全滅させられたことを隠蔽したい大学側から多額の『慰謝料』をせしめたらしい。真のアウトローを地で行く狂犬であり、ヤクザも背後に絡んでいると噂の連中。そんな輩に捕まれば、俺みたいないじめられっ子が何の抵抗もできるはずはない。そこそこ玩具にされ、嵐が過ぎ去る、いや猫に嬲られるネズミが苦痛に耐え忍ぶがごとく、連中が飽きるのを待つしかない。
「とほほ、なんだよ。タイムスリップしてきて早々、こんな連中と再会しちまうなんてさ」
まあ、俺に絡んでくるっていうことは、まずは金が目当てだろう。ん、違うな、そういえば…。過去の記憶を思い出そうとすると何か忌まわしい記憶が蘇る。朴がふふんと、顎をしゃくる。
「約束を果たしに来たぜぇ」
ポケットを探る。すると、おお、奇跡だ。なんと5千円札が一枚。俺はいそいそと、新渡戸稲造センセイを差し出した。むんずと、それを鷲掴みにしようとする朴。が、その俺の手を咎めるようにはっしと押さえつける。その手の主は…。

「ちょっと何しているの?」
と、ちょっぴり御節介なクラス委員の顔つきで、朴を睨む命知らずな美少女は、レオタード姿の越生郁子その人だった。
「こーいうのってカツアゲっていうんじゃなあい?」
明らかに正義感に燃えた声音で、俺の前に立つとGEの面々にお説教を始める。郁子はこういう性格だ。曲がったことは大嫌いだし、学校生活でも教師連中にも納得できないことがあると平気で意見をしていたっけなあ。郁子の真っ正直な行動は校長、教頭、学年主任は無論、校内のヤンキー、そして些細な虐めに至るまで無差別に該当し、おかげで淫キャラ、ならぬ陰キャラの俺も壮絶な虐めにだけは遭わずに済んだ気がする。が、今日は相手が悪い。単なる不良ではなく、市の教育委員会ですら手の出せない893の一歩手前の連中だ。純粋一直線なクラス委員長の女の子が太刀打ちできる相手じゃない。
「お、おいおい、郁子ぉ。相手がまずいって!」
俺が郁子を宥めに掛かる。

「ビクビクしてちゃダメよ! 晴クンみたいな弱腰な態度がこ~~いう人たちをつけあがらせるんだから!」
郁子はまるで臆する様子もなく、身を乗り出して腰に手を当てて、出来の悪い教え子に手を焼く先生のような表情で、俺らを取り囲むGEの面々を見回し諭す様に言う。
「良い? まだあなたたちの学校だって授業と部活やっている時間でしょ。青春時代はいっぺんしかやってこないぞ。いい歳して暴走族なんてしてたら後悔するんだから」
と、ある意味癇に障るが、優等生の美少女にして、レオタード姿の女の子から言われると、男心にぐっと突き刺さるお説教だ。
「さ、ウチの学校もみんな部活に補修に、それと帰宅部を装った覗き見にと、忙しい子たちばっかしなの」
郁子は、俺を冷ややかな瞳で一瞥しつつ、事態を収拾にかかる。
「ケンカとか、揉め事とか、恐喝とかは許しませんし、お相手出来かねますので。じゃ、そ~~言うことでお引き取りを!」
郁子は最後だけはユーモラスに、ペコっと頭を下げるポーズをとって俺を先導するようにその場を離れ始める―――—が…。

       

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