Neetel Inside ニートノベル
表紙

不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
44・再見!#イケメン格闘家!!!

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僕は打ち合わせが済んだあと一人で帰りの電車に乗った。

皆はレストランで食事会をするというが、僕は食欲が無いのでお断りさせてもらったのだ。

それに最近は自分時間が無くて、小説の展開を練る事も出来ない。

ガタンゴトン

こうして電車に揺られ、ぼーっと一人で空想に浸るのが贅沢に感じられる。

このまま帰宅するのがするのがもったいなくて、一つ手前の駅で降りて遠回りして帰る事にした。

♪ジャーンジャーン

駅から出て商店街のアーケードを歩いていると様々な音楽が聞こえてきた。

金曜の夜はストリートミュージシャンに解放されているようだ。

ミュージシャンが座って演奏していて、その周りには人がまばらに囲んで聞き入っている。

♪ポロロロポロロ~♪

考え中に音が混じると集中出来ないので足早に通りすぎようとすると、ふと……まるで僕の心にピッタリな音楽が聞こえてきた。

そるはまるでフーガの世界観のような音。

演奏していたのはブカブカの大きなパーカーを着てフードを目深にかぶった高校生くらいの小柄な少年だった。

少年はリュックを背負ったまま座り込んでアコースティックギターとブルースハープを奏で、時折ハミングを入れる。

声変わりはまだなのだろうか中性的な声が心地よい。

周りには観客は誰もいないし、手前のギターケースに投げ銭は無い。

僕は引かれるように前に立ち止まって曲が終わるまで聞いていた。

♪ポロン

最後にギターが響き終ると僕は拍手をした。

「僕、こんな凄くいい曲はじめて聞きました!」

「ありがとうございます」とぶっきらぼうに答えたその少年……いや女の子の声だった。

その子は
「昨日『雲海のフーガ』という小説を読んで、その感動を曲にしてみたんです」と言う。

えぇえー!!

どうりでピッタリなワケだ。

一瞬、自分が作者だと言おうかと思ったけど、恥ずかしいのでやめた。

「う……うん、僕もフーガ知ってる。すごく世界観に合ってると思うよ」

その女の子は
「いま配信中なので、それ以上近づくと顔が写つりますけど大丈夫? 視聴者全然いないけど……」と聞く。

彼女の後ろには小さな三脚に備えつけたスマホがある。

僕が映り込んではせっかくの配信が台無しになるので一歩下がった。

ドン!

背中に何かぶつかった。

振り返るとミリタリージャケットに迷彩パンツというラッパーっぽいゴツい二人組が立っている。

僕は
「すみません」と言ったが、二人は気にもせず女の子に
「そのスペースは俺たちの場所なんだ。どけよ!!」とすごむ。

女の子は
「ちゃんと規約に場所は早いもの順って書いてあった。遅く来たのならあなた達が他所へ行くか諦めるべきでしょ」と冷たく言った。

こんな恐そうな二人に言い返すなんて……凄い勇気だ。

「「どけっつってんだろがっ!」」

怒った男は女の子につかみかかろうとした!!

僕はとっさに
「ひぇ!暴力はダメですよ!」と、とっさに三人の間に割って入り思わず手をかざす。

その手に飛び込んできた男のアゴがちょうどカウンターで当たってしまった。

「ぐああぁぁ」とうめき声と共に男の首が「く」の字に曲がり

ドサッ!

と膝から崩れ落ちる。

え?え?え?

僕は
「す、すみません。
大丈夫ですか?」と聞いたが、男は白目を剥いて体を小刻みに痙攣させている。

ヤバい……どうしよう……当たり所が悪かったみたい。

「よくもやったな!」ともう一人が僕の肩を掴んで頭突きをしようとした!

ふえぇ……

「ご、ごめんなs……」と僕は頭を下げる。

ゴツッ!

ちょうど頭突きを頭突きで返した形になり、相手の男は崩れ落ち鼻血を吹き出し口から泡を吹いていた。

あわわわ、どうしよう……傷害事件を起こしてしまった……早く警察、いや救急車を呼ばないと……うぅそれでも澪奈さんはじめ皆に迷惑をかけてしまう。

周りの人だかりはスマホで僕を撮影し始める。ちょ!今から撮ったら僕が一方的に暴力を振るったみたいじゃん!

「あれガンジーとMCカオスだろ……二人とも一撃で倒したぜ」
「やべ、あの二人がやられたトコ初めて見た……しかも瞬殺って」
「ゴメンナって捨て台詞つきってエグくね?」
「相当な手練れだぞアイツ……まさか……まさかっ!」
「「「「「#イケメン格闘家!!」」」」」
「最近じゃ#秒殺貴公子って呼ばれてるらしいぞ!」
「いや#公開処刑人だろ!」

そんな勝手に恐ろしい二つ名をつけないでぇ……

野次馬をかき分けて数人組の恐そうな男達が凄い顔で
「この野郎っ!よくもガンジー先輩を!」とこっちに近づいてくる。

「逃げよう!」
女の子は荷物を素早く担いで僕を引っ張って商店街を走って逃げた。

       

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