Neetel Inside ニートノベル
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不人気叩かれ文芸作家の僕がプロデビュー…
47・ガンジー助走をつけて殴る!!!

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午後からは真琴の最低限の必需品、カーテンや布団や食器などの買い出しとなった。

軽トラをレンタルして僕と真琴で行こうとしたが予約サイトを見ると全て出払っておりコンパクトカーしかない。

「ダーリン、かさ張る荷物は無いからエリナと楓ちゃんも連れてってよ」とせがまれて四人で出かける事にした。

ブロロロ

僕が
「ジョーカー事件のあったホームセンターは何だか行きにくいから最近出来た所に行くね。
結構大型店みたいだから品揃えも大丈夫だろうし」と言うと

「「「はーい!」」」と揃った声が返ってきた。

目的地の店に着いたけど満車間際で店から遠い位置しか残っていない。

ガチャ、バタン

車から降りて店に向かおうとすると楓ちゃんが僕の袖を引いて
「ねぇねぇお兄ちゃん、肩車して」とねだる。

僕は
「楓ちゃん、小さい子じゃ無いから笑われるよ?」と答えた。

「いいの! これが最後だから」

最後……その言葉に胸がドキンとした。

来年はもう中学生だし、こんな事をせがまれるのもこれで終わりかもしれない。

「うん、じゃあ最後だよ」と僕は膝を屈めて背中を曲げる。

楓ちゃんはショートパンツの裾をたくしあげて僕の首に乗っかった。

心地よい重みを感じながら、ヨイショと立ち上がる。

「わー高ーい、こわーい」と頭上で弾む声。

「うぎゅ」

楓ちゃんの太ももに顔を挟まれて思わず声が出た。

「ダーリン」とエリナが僕に恋人繋ぎで右腕に絡めてくる。

左横の真琴が
「あの……牧野……先生」と何か言いたげな表情で言う。

「先生はやめてよ、何?」

「あ……じゃ…その……お父さん……って呼んでもいいですか?」と頬を赤らめる。

「え?え? お父さんって…そこまで年離れて無いし、それに僕はそんな立派なキャラじゃないし」

「立派だけど……やっぱり……ダメ……?」と真琴は目を伏せた。

「ダーリン、いーじゃない! マコちんはパパが恋しいんだから」

「んー分かった! いいよ。お父さんで」

「本当? 嬉しい!」と言って僕の左手を繋ぐ。

ポヨンと温かく柔らかいふくよかなお胸が当たる。

「ダーリン」
「お兄ちゃん」
「お父さん」

何だかメチャクチャな擬似家族だけど心が暖かいものに包まれる……望み薄だけど僕もいつか家族が持てたらなぁ。

その時
「おい牧野!!!!」と横から男の声がした。

見ると網田さんだった!!!

エリナは
「あ!!ホムセンジョーカーと一緒にやっつけられた失礼調子コキ失礼バカ野郎!!」と指差す。

「おン? この前の美少女名球会のカネヤンか」

「Nej! そんな喩え全っ然嬉しくないんだけど!
そーいやアンタ無期懲役で獄中死したって聞いたけど何でいるのよ!?」

「ば!バカ!
つきまといや盗撮くらいの軽犯罪で刑務所入るワケねーンだわ。
罰金刑なンだんだわ!」

真琴は
「つきまとい……盗撮……ヤダ」と呟いてゴミを見るような視線を網田さんに向ける。

「エ、エリナ落ち着いて。
それはそうと網田さん、どうしたんです?」

「呑ン気なこと言うンじゃねーンだわ!
牧野!お前のせいで就職先もロリコン事案野郎と言われてクビになったンだわ。
そンでこのホムセンにバイトの面接に来たら名前が知れ渡ってて断られたンだわ!
俺の人生メチャクチャにされてその復讐するンだわ」

ドン!

そう言って僕の胸を殴る。

「きゃー!!!」と頭上の楓ちゃんが叫ぶ。

肩車をしているせいで簡単にバランスを崩して危うく転けそうになったが……何とか持ちこたえた。

「ちょっ! 網田さん止めて下さい!! 危ないじゃないですか!」

もしも楓ちゃんに傷でもつけてしまったら……

「うるせぇーンだわッ!!もう一発食らうンだわ!!!」

ドン!!

「ま、待って下さい!!この子を降ろすから。
降ろしたら気の済むまで殴られますから」

「バカ馬鹿ばーか!!!
お前が反撃出来ないこのチャンスをみすみす見逃すワケねーンだわ。
こーやって無抵抗のヤツを蹴るのは楽しンだわ楽しいンだわ!!
俺の苦しみを、お前の体の痛みに代えて味わうンだわ!!
っしゃ!スパート掛けるぞオラッ!」

ビシビシと僕の膝に蹴りを入れる。

「やめてよ!ダーリンを傷つけないで」

「お兄ちゃんをイジメないで!警察呼んで死刑にしてもらうからね!!!」

すると真琴が僕と網田さんの間に入り、足を上げると

ビュッ!!!

と網田さんの鼻先の虚空に見事な蹴りを披露した。

「ボク……小さい頃から極真空手習ってたから……相手になりますよ」と真琴は静かに言った。

「ンほほ、これまた美少女名球会の大魔神ン佐々木のおでましか。
美少女を傷つけるのは俺の趣味では無いンだが背に腹は代えられねーンだわ!!」

ビシッビシッビシッビシッ! 
バッ!バッ!バッ!バッ!

網田さんの蹴りを真琴は見事に手でかわしていくが、いくら空手やってても男女の体力と体格差はいかんともしがたい。

真琴がよろける。

その時だった。

ドグシャボガっ!!!!

黒く大きな人影が飛び込んで来たかと思うと網田さんはその影に殴り飛ばされた!

ズザー!!!

吹き飛ばされて地面に這いつくばる網田さんが鼻血をダラダラと流しながら顔を上げる。

「痛ッ!!なンなンだオメー!」

その人は僕を振り返り
「昨日は世話になったな、アンタは手を出さずに見ててくれよ」と言う。

その男は昨晩、真琴に絡んだガンジーというラッパーだった。

「うらぁぁぁあああ!!」

ガンジーさんは思いっきり助走をつけて網田さんを殴り飛ばした。

ボグシャボキ!!グワシャブシャー!!!!!!!!!!!!!

「アッアッアッアッ……ンだわ……」

網田さんの顔は醜く歪んで視線はあらぬ方向を向いてフラフラとさ迷うように何処かへと歩いていった。

大丈夫かな、網田さん……

僕は楓ちゃんを降ろして
「何です? 昨日の復讐ですか?」とガンジーさんに聞いた。

彼は
「いやあの有名な#イケメン格闘家とやり合う勇気も実力もねーよ。
アンタにやられた動画を後から観てあまりの格の違いを思い知ってな。
詫びを入れようと思って探してたんだ」

「詫びとかそんなのはいいですよ、結果的に殴ってしまった僕に非があるんだし」

「おいおい……心までイケメンかよ。あんた若いのにどんだけ器がデカいんだ!!」

僕は
「でも謝るんなら、この子に謝って下さい」と真琴をしめした。

ガンジーさんは深々と真琴に頭を下げた。
「すみませんでした!!
キミの言う通り規約に違反した俺が悪かった。
言い訳は言わねぇ。
もう二度とあんな事しないと約束する」

「ボクも少し言い過ぎてた……ゴメン」と真琴は手を差し出すと、ガンジーさんと握手をした。

良かった……

ガンジーさんは
「アンタみたいに有名人になると名を上げようとさっきみたいなチンピラが因縁吹っ掛けてくるだろう。
そんなハエみたいな輩は俺や後輩が追っ払ってやるよ」と言った。

な何だかバイオレンスなフレグランスが……

「い、いえお気遣いなく……」

「Nej! ダーリンは最強なんだからオラウータンが襲ってきても大丈夫なんだから」

オラウータン?心優しき森の人がなぜ襲う? チンパンジーでは?

ガンジーさんは
「まぁ確かに#秒殺貴公子ならやられる心配は無いにしても、暗闇で後ろから鉄パイプで不意討ちって事もあるだろうからな」と笑う。

いつから平和な町が世紀末設定に!!!

「ははは……じゃあお願いしようかな」と僕は答えるしか無かった。


       

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