Neetel Inside 文芸新都
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まほうつかい おんな レベル1
○月×日 時をかけたい少女

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 あれから十数分。
 未だ解決をみない豚コマ問題。答えの出ない晩御飯の方程式。
 おばさんをだまくらかそうと私が購入せしお肉は、紆余曲折を経、今宵の一皿となるに至った訳ですが。肝心のメニューが決まらないのです。

「じゃあ、うな丼」
「無理」
「えび天丼」
「不可」
「鉄火丼?」
「理不尽。ご飯に生肉乗っけて出すわよ」

 にべもないお返事たち。ちょっとくらい検討してくれたって。
 まったく。おばさんはワガママです。まったく。聞き分けがありません。
 もっとさー、こっちに、歩み寄ろうよ。

「むー……。よし。すこーし冒険して、ドン・モハメでどうだー」
「少しどころか、未曾有の大冒険よ」

 うん。確かに。のちのちの、みずのはごろも不足が懸念されてしまいますね。

「じゃあねじゃあねぇ……」
「もういいわよ。あなたに任せてるとろくに話が進まない。微動だにしない。豚肉の身の程を知りなさいよね」
「えー」
「生姜焼きでいいわね。はい。決まり」
「もー、しょうがないなー。とかゆって」
「……」
「……」
「……」
「……今の、キャンセルしてもいい?」

 いいよね?
 だって。ほら。ぼうぎょキャンセルたたかうとか、ありますもの。メカニズムの裏をついて、合法ですもの。
 ね。ね?
 されどおばさんは無情に首をふるふる。左右に振る振る。

「こぼれた水は、返らないの。過ぎ去った時間は、二度と、取り戻せないものなのよ」

 ……そうだね。まほうつかいはえてしてパーティの一番後ろだもんね。
 およそキャンセルのまかりとおらぬポジショニング。ひとたび決断を下したならば、二度とは覆らない悲しき四番手なのです。強敵との熾烈を極める戦闘のさなか、いよいよもって、くだんの裏伝家の宝刀・防御しながら攻撃戦法を繰り出さんとし、ぼうぎょ。ぼうぎょ。ぼうぎょ。ぼうぎょ―― あーっ! そんな勇み足。そういう悲しみ。あぁ……4人、がん首揃えて みをまもっている……。

「そっかー……」

 しからばかくなる上は、私は旅立つしかないのでしょうか。この世に残されたたった一握の希望を求めて。究極の人生やり直しアイテム、ときのすなを探して。
 この道わが旅、果てしなく続く……。

       

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