数年前、譜面アプリを見ながらメタリカの曲のギターリフなどを練習していた。各パートごとにMIDIになっており、練習したいパートを流しつつ、TAB譜を見ながら弾ける、という便利なものだった。
しかしそのMIDIの音色が、リアルなエレキギターの音と勘違いされたのか、「この建物は楽器演奏禁止です」と書かれた紙が家のポストに投函された。イヤホンをつけて、エレキの生音のシャカシャカ音だけなら大丈夫かと思ったが、それでも再び「楽器演奏禁止」の通達が届いた。
以来ギターは物置の奥に仕舞われている(中2の時に買ったフェンダースクワイア)。
以来私は打楽器として扱われている。
親指の腹で胸を叩くと低い音が出る。これをバスドラとする。他の指の指先で腹を叩くと軽い音が出る。これをスネアとする。
「デッデデタデ、デッデデタデ、デッデデタデ、デッデデタデ」
とやると、「アアアーア!」と息子がレッド・ツェッペリン「イミグラント・ソング」を歌い出す。
そんな頃もあった。
先日、息子(現在5歳)とゲームで遊んでいたところ、急にゲームの手を止めて、私の元に近寄ってきた。ループするゲーム音楽の「タンタンタン」というリズムに合わせて、私の背中を叩き始めた。最初は多少ズレていたが、段々ときっちり音楽と重なるようになり、それに伴い威力も増してきた。「タンタンタン」という軽い音色の音に合わせて、「バシンバシンバシン」と私の背中が鳴る。
「痛いよ」
「それってあなたの感想ですよね」
それ、この間寝言でもはっきり言ってた。
おまけ。
我が家の多様性教育。
「クレヨンしんちゃん」を見ていたところ、息子が「どうして風間くんは『もえP』好きなの隠してるの?」と聞いてきた。
「魔法少女もえP」という、プリキュア的なアニメを、優等生のおぼっちゃん「風間トオル」は大好きなのだが、女の子向けのアニメだからといって恥ずかしがって公言しない。そのため、たびたびもえP好きをしんのすけたちにバレそうになると、必死になって隠す(しんのすけは多分とっくに気付いてる)。
「小さい子、女の子向けのアニメだから、男の子で大人びている自分が好きなのはおかしいと思っているんじゃないかな。別に誰が何を好きになってもいいんだから、健ちゃん(息子)も、好きなものは正直に好きだと言えばいいんだよ。ほら、恥ずかしがらずに言ってごらん、『パパ大好き!』って」
物凄いスピードで「はぁ? 何言ってんだこいつ」という顔でこちらを振り向いた息子の顔を、私は忘れない。
(了)