ジャルグ・バンリオン
#13
◯訓練宙域
エシラとニーヴが模擬戦用ビームサーベルで格闘戦訓練をしている(他のMSは周囲で見ている)
激しくビームサーベルを打ち込むニーヴ
ニーヴ
「落ちろ! 落ちろ! 落ちろ!」
剣撃を受けるだけで精一杯のエシラだが、ニーヴが振りかぶった瞬間をついて一太刀浴びせる
ゾーイ
「判定は相撃ちだ!」
苦々しい表情のニーヴ
◯バリシャノン MSハンガー
ズィール隊とエシラが談笑している
ゾーイ
「小回りのきかないフェザーでよくニーヴと相打ちまで持ち込んだね、さすがニュータイプ」
エシラ
「ニュータイプなんて止めて下さい……そのレッテルはウンザリだから」
ジェリー
「ふーん、ねぇ自分がニュータイプっていつ分かったの?」
エシラ
「……高校生の頃、自転車に乗ってたら狭い道の出会い頭で車にはねられたんだ
ケガはそれほど酷くは無かったんだけど、目を打ったから一応入院した先で視野検査をしたの
白いボードの一点を見つめて、光の点が現れたらそれを視線で捉えてボタンを押すっていう検査だったんだけど、私は光が現れる前にボタンを押していたらしい
ほんの0.何秒とかそんなものなんだけどね
それから軍の人が来て、アルバイト代わりにって言ってお金をもらって施設で検査を受けさせられた
ウチは裕福じゃなかったし、それに軍に勧められてそのまま入隊して本格的なニュータイプ試験を受けたのだけど……
ニュータイプには主に二種類あってパイロット向きの空間把握能力が異常に高いのと感応、感受性が高いタイプ
私は感受性が高すぎて人の感情に過剰反応してパイロット向きじゃなかった
それで気がついた……よく子供の頃から人の強い感情に自分の気持ちが押しつぶさそうになって気持ち悪くなってた事」
ゾーイ
「それであまり人に関わろうとしないのか?」
エシラ
「ええ、あまり良い事が無かったもので」
アイリーン
「それだけ喋れるなら充分よ」
エシラ
「アイリーンは心開かざるを得ないというか、話しやすいのよね
なんでか知らないけど」
アイリーン
「ミラーリングよ」
エシラ
「ミラーリング?」
アイリーン
「心理学で同調効果って言ってね、相手の仕草と同じ事をするの
相手がシャワーを浴びるなら一緒に浴びる、相手が飲み物を口にする時には自分も同時に飲む
これがミラーリング
ミラーリングされた相手は、自分に好感を持っていると無意識に認識するの」
エシラ
「そうなの?」
ジェリー
「出た!アイリーンの知ったかぶり」
アイリーン
「ホントだって! 子供の頃、スクール・カウンセラーから教えてもらったの
だからこうやってズィール隊は仲良くなれたんでしょうが」
ゾーイ
「それ言わなきゃいいのに」
アイリーン
「アハハ でもエシラくらいよ、こんなに短期間で効果があるのは」
エシラ
「何それ? 私が単純って事?」
一同笑う