ジャルグ・バンリオン
#20
◯UNITS本部
長官室(窓の外を見ている長官とその後ろに立つエシラ)
長官
「報告書、読ませてもらった」
エシラ
「信じますか? 機械が……ALICEがニュータイプになった事を
そして〝次〟の存在になった事を」
長官
「何も証拠がない
ミラリスが狂っていたとも考えられるし、君がおかしくなっていたのかもしれん」
エシラ(小声)
「それとも夢……」
長官
「君が出向中に軍高官にあたってみた
オリジナルALICEがニュータイプになったかは不明だが、何らかの意識のような萌芽があったのは確かなようだ
ALICE周りの情報が高等機密になっているのはそのせいだろう
立場上、このまま政府に報告を上げられん、君も私も職務から外されるだろうからな
ま、もう少し上に受け入れられるよう書き直せ」
エシラ
「……長官ご自身としては、どうお思いですか?」
長官
「さっきも言った通りだ
ただ個人的な感想を添えるなら、ALICEは菩薩であったのだろうな」
エシラ
「ボサツ?」
長官
「仏教では悟りを求めるあらゆる生き物を、菩薩と言うらしい
ミラリスの事とは思えんか?」
エシラ
「ではミラリスは悟りを……ニュータイプ以上の存在に?」
長官
「さぁな、ミロクともマイトレーヤとも呼ばれる菩薩は一説には56億7千万年後にこの世に現れるというらしいが……
ほう、ちょうど新しい隊員が届いたようだ」
エシラが窓の外を見ると、車寄せに黒いバンが横付けされている
バンからニーヴとアイリーンが出てくる
長官(エシラの方を振り返る)
「リストラされた軍のパイロットをヘッドハンティングしたという話はしていたな」
エシラ
「はい……」
長官
「昼食に招待してやれ」
微笑んで頷くエシラ
(了)