AIの発達によりグラビア業界、イメージビデオ業界は窮地に立たされていた。顔が良くてスタイルの良いAI美女が、いくらでも生成されるのだ。生身の人間は必要とされなくなっていた。
そんな時、女優たちを救ったのが「超リアル乳首シール」であった。これまでは乳首を出すことをためらっていた女優たちの乳首にこのシールを貼ることによって、「乳首を出してないけど乳首を出している」という見た目になった。アイドルも未成年もこのシールを使用して、「乳首丸出しだけど乳首見えてないイメージビデオ」は大流行し、AIに仕事を奪われていた女優たちにも収入が戻ってきた。
しかし栄華は長くは続かなかった。未成年の乳首シールもすぐに規制された。
業界は新たな一歩を踏み出した。
装着型の「超リアル女性器」「超リアル男性器」の登場である。これを女性器、男性器に装着することで、「まるでセックスしているみたいだけれど、本当は超リアルな作り物同士が接触しているに過ぎない」という状態を作り出すことができた。それぞれ愛液と精液を出すこともできた。
この画期的な発明により、まるでセックスをしているような映像をモザイクなしで撮影できるようになった。アイドルも未成年も、乳首シールとリアル性器の装着により、「全裸ではない全裸状態」の映像を許可するのにためらいがなくなった。セックスしているわけではないから、出演のハードルも低くなり、世界中の男女が気軽にイメージビデオに出演するようになった。
その後リアル指向は突き進み、汎用的な乳首シール、性器ではなく、本人と寸分違わぬ乳首シール、装着型性器を作るのが主流となる。
朝の連ドラで大っぴらにヒロインが見かけ上は全裸状態で街中を走り回る。そんな映像が日常的になった世界。リアル乳首シール貼り職人のワイは一言つぶやいた。
「ソフトなイメージビデオが好きやった……」
世界がこのようになったのは、進化したAIが人類から生殖能力を喪失させるための戦略だった。そのことに気づいたワイだったが、いち早く気づいたAI側に世界最高のAI美女VRオナホを与えられ、あっさり負けてしまう。
ワイは倒れたが、ワイの放った最後の精子は、なんかどうにかこうにかぐわーっとなって、世界を救う。しかしAIに支配されかけたことをむしろ喜んでいた人類により、再び世界はまがい物のセックスに覆われてしまう。完。