探偵業に銃は必要ない。俺は股間に44センチのちんちんを持っているから。探偵業に弾は必要ない。俺の射精は人を貫く。
依頼者を狙うのは初めてではない。最初から探偵を利用して悪事をしようとしていたわけだ。悪徳刑事までが絡んでやがった。ギャングのアジトと教えられた廃ビルを、股間の大砲と射精で全滅させた際に、最後の一人が吐きやがった。「お前も利用されてたんだよ」と。
「ちんちんで人を射殺するような探偵を、警察が許すと思っているのか?」ともそいつは言った。
「俺だって好きでちんちんを武器にしているんじゃない。俺の射精のスピードを、他に活かすことができなかったんだ」
そいつは最後の抵抗で拳銃を抜いたが、俺がちんちんを抜く方が一瞬速かった。いや、ちんちんで抜く方が、か。
アジトの裏口から逃げていく、黒幕の刑事たちと依頼人の乗る車を俺は追いかけた。走って、走って、走って、追いかけ、追いつき、追い詰めた。生身の人の足で車に追いつくことなどできるものか、と人は思うかもしれない。だが俺のちんちんは三本目の足にもなった。時には棒高跳びの棒のようにも。
やけくそになった刑事たちは、俺に目掛けて車を突っ込ませてきたが、すぐさま射精してタイヤを破裂させると、車は横転した。車内から逃げ出した刑事たちを俺の44センチマグナムちんちんで次々と仕留めていく。最後に出てきたのは、ギャング壊滅を依頼してきた依頼人の若い男だった。
「あいつらは悪事なんかしちゃいなかった。ただ廃墟ビルに集まって全裸でトレーニングしていただけだ。殺す必要なんてなかった」
俺のちんちんに無駄な殺戮をさせたその依頼人を俺は許せなかった。
「大勢の男がちんちんをぶらぶらさせている、それだけで許せない人もいるってことを覚えておきなさい」
依頼人はそう言うと次々と服を脱ぎ捨て全裸になった。
「お前、女だったのか……?」
「覚悟は出来てる。でも一つお願いがあるの。最後に私を抱いて」
「駄目だ。前金で頂いた依頼料は全額返還する。今回の仕事はなしってことで」
「何よ、私が女だからって情けをかける気?」
「違う、勃たねえんだ、女には」
俺の股間の44センチ砲は4ミリメートルにまで縮こまっていた。とても射精に導けそうにはなかった。
「あばよ。自分を大事にしな」
そう言って帰ろうとした俺に、依頼人がまんまんから取り出した銃を向けてきた。とても大型のマシンガンだった。巨大な性器の持ち主がここにもいたわけだ。
だが俺は彼女に背中を向けて歩き出した。
「馬鹿にするんじゃねえ!」と叫ぶ彼女が銃を乱射して、時折俺の肩や足をかすめた。よろける俺のちんちんは、いつまでも静かなままで。血だまりによく似た色の夕焼けが俺を照らしていた。
※松田優作主演「最も危険な遊戯」(1971)を観ていたら、悪徳刑事と人質の乗る車を、松田優作が生身の身体で走って追いかけ、追いつき、追い詰めていました。そうはならんだろう、と思いながらも、当時の松田優作ならばありえたかも、とも思いました。自分なりの追いかけ方を考えた際にできたのが今回の話です。