Neetel Inside ニートノベル
表紙

デマゴーグ
予言

見開き   最大化       ×コントローラを閉じる

 最初に音が響いてきたのは校舎の外からだった。二番目の音は上から。
 外のことはどうにもならないので、上から調べていくことになった。宮川はエレベーターで5階に上がり、下に向かって調べていく。反対に藤原は1階から上に向かって調べていった。
 3階中庭で藤原はずた袋の位置がずれているのを発見する。下側の缶詰が潰れて、底が破れたずた袋の周りに水たまりを作っていた。足元にはへこんだ缶詰が散らばっている。
 上から来た宮川も中庭で合流して、藤原に状況を告げた。
「5階、4階は特に問題なかった。宍戸のヤツも見ていない。そっちはどうだ」
「僕のほうにも宍戸はいませんでした。1階と2階は異常なし。音の発生源はたぶんここです」
 藤原は底の抜けたずた袋を指差した。
「缶詰が潰れているな。これ、中身大丈夫なのか?」
 宮川が聞く。
「たぶんダメでしょうね」
 藤原と宮川はいったん警備員控室に戻り、留守番していた杉村に話した。
「どうしたらいいか、もうわからん」
 宮川はやけっぱちに言い放った。
「まず学長に連絡して、指示を仰ぐのが良いと思う」
 杉村はそう提案する。
「そうだな。馬場学長ならなんとかしてくれるだろう」
 宮川は携帯で馬場に電話した。
「学長、今お時間よろしいですか?」
 帰ってきたのは馬場の声ではなく、陽気な男の声だった。
「こちらは愛宕警察署の内藤だが、そちらはどなたさん?」
 宮川は動揺しすぎて、110番通報でもしたのかと考えた。
「昌平大の警備隊長の宮川剛です。すみません。間違い電話です」
「何も間違っちゃいないよ。この携帯の持ち主は馬場さんだからね。馬場さんは今、桐壺総合病院に緊急搬送されている」
 宮川は手帳に1:20桐壺総合病院と走り書きして、半信半疑に尋ねる。
「そんな。大学のゲートが封鎖されて外に出れるはずないんですよ。学長だって、まだ大学の中のはずでしょう」
「そちらの事情は知っている。だが実際、馬場さんは大学前の北側に倒れていた」
 北側といえば、唯一開けた5階の窓のちょうど真下辺りだ。先ほど、外から聞こえた鈍い音はまさか。
 途端に宮川の顔色が悪くなった。
「倒れた原因はなんですか? 馬場学長は無事なのですか?」
「全身に外傷があり、特に左足が酷い。折れた腓骨がふくらはぎから飛び出している。それから首と腰に強い衝撃がかかった跡がある。飛び降り自殺ではなく、転落でしょうな。飛び降りなら頭から落ちるから、足に外傷は少なくなるはずだから。学長は現在、昏睡状態で予断を許さない状況だ」
 内藤刑事が返答したすぐ後、携帯から救急車のサイレンの音が耳に入ってくる。
 藤原と宮川、杉村はしばらく呆然としていた。
 学長不在な以上、これから大学内の問題に対処するため中心となる人物を決めなくてはならない。
 宮川は力なく教員名簿をパラパラとめくった。上野教授とヴィクター助教授の連絡先を調べ、電話をかけ事情を話す。深夜にもかかわらず、二人は電話に出て警備員控室にかけつけてくれた。
 話し合いの結果、学長の代理は上野教授に決まる。世界システムの開発者である上野教授のほうがうまく問題を解決できるだろう。ヴィクターは助教授であるし他キャンパスの教員でもある。上野教授が学長を代理することは妥当だった。
 しかし、藤原は上野教授の第一印象の悪さを拭い去れない。宍戸も上野教授には批判的だった。かといって問題児宍戸の話を信用してやる義理はない。心の片隅に懸念を残したまま、藤原は自身を納得させた。
「宮川隊長。あとはやっておきますんで仮眠を取ってください」
 宮川はもう限界に見えた。二日間働きづめでろくに寝れていないので、当然といっていい。藤原の言葉に甘んじて仮眠をとることにした。
「少し眠るが、何かあったら遠慮なく叩き起こしてくれ」
 見送る二人は何も起きないことを祈った。宮川のためにも、自分たちのためにも。
 さて上野学長代理の新体制になっても、仕事内容は変わらない。杉村は校舎内の見回りに行き、藤原は残ってモニターを監視した。
 モニターでエレベーターに乗る杉村を確認すると、藤原は戻ってきた携帯をさっそく使った。
 ワンセグでテレビ番組を聞きながら、モニターを見る。宮川が寝ていて、杉村が見回りに行ってなければこんな遊びはできなかっただろう。
 2時を回り、深夜番組も終わり始める。ニュースか通販番組だらけになって、惰性でニュースを聞き流していた。
「昌平大学に学生教員合わせて12名が閉じ込められた事故の続報です。大学校舎前で昌平大学の馬場学長が倒れているのが発見されました。馬場学長は全身を打って重体、警察は事件と事故両面で捜査する方針を打ち出しました」
 さっき起こったことがニュースとして読み上げられる。むりやり現実に引き戻された藤原は、ワンセグを消して昌平大学のグループチャットを眺めた。


のわき{ニュース見たヤツおる?)
松風{学長重体のニュース? 見たけど、さすがに5階の高さから落ちたら助からないよ。なんで自殺したんだろうね)
須磨{お前が殺したんだろ、サイコパス野郎。宍戸は学長と言い争っていた。宍戸にしか動機がないからな)
松風{なんで前から僕のこと宍戸って決めつけてんの? 必死すぎて君のほうが怪しいんだけど。殺人か自殺かなんて犯人しか知りえない情報でしょ)
須磨{仮に自殺だとしても、お前が学長を精神的に追い詰めたからだろうが。サーイコパース! サイコパスだよ、この人)
Y{殺伐としたインターネッツに俺登場! 今思ったんだけどさ、f5Bxa2とかいう怪文書って今回の事件を予言してたんじゃない?)
のわき{ΩΩΩΣなんだってええええええええ!Z)
Y{f5が5階って意味だろ。Bxa2はアナグラムになってて、xとaを入れ替えるとBax2。Baかける2で馬場になる)
のわき{アナグラムって元の文字を並べ替える暗号のことだろ。xとaを入れ替えるだけの暗号に意味はあるのか? そもそも5階馬場だけの情報で、肝心の自殺とか他殺には言及してないじゃん)

       

表紙

新野辺のべる 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha