恋愛小説集「銀魂vs小島信夫(最終回)」
「ギャップ萌えvs文字数」
「パパはモテてたことある?」
彼氏と遊んできた娘が私に聞いてくるのだ。
「ココが軽い頃は持てたよ。今抱っこしようとしたら腰を痛める」
「女性にモテてたかって聞いてんだけど。学校行ってた頃」
「パパの子どもの頃はまだ戦争してたから、学校は全部壊れてたんだ」
「え、パパが子どもの頃って戦争してたの?」と健三郎が本気で驚いてしまう。
「パパは何年生まれだっけ」
「1980年です」
「その頃日本は戦争していません!」
社会か、社会で習ったのか。違う、平和学習というやつか。五月に修学旅行で広島に行ってるからか。大阪からの修学旅行の定番は三十年前も今も広島らしい。
というわけで恋愛小説を始める。
*
この「*」の記号は「ここから話が切り替わりますよ、という合図だ。「漂着者vsアホウドリ」の中では、作者の語りが始まる部分をこれで囲ったりしている。なんだ「漂着者vsアホウドリ」って題名は。なんで恋愛小説のタイトルなのに「ゴジラvsビオランテ」みたいなことになっているんだ。前回の「美形vsゆらゆら帝国」においても、娘との会話の前振り部分から恋愛小説に移行する場面で「*」を使った。しかし一向に恋愛小説に移行していなかった。なんだ「美形vsゆらゆら帝国」という題名は。なんで恋愛小説のタイトルなのに「エイリアンvsプレデター」みたいになっているんだ。その反省を生かして今回はスッと恋愛小説に入っていこうと思ったのだが、その前に書いておきたいことができたので、再びこうして脱線してしまっている。
恋愛小説を書こうといいながら、どうやら私は恋愛小説を書いていないようだ。薄々感づいてはいたが、とうとう読者にも気付かれてしまい、コメント欄でも指摘されている。考えすぎて袋小路に迷い込むより、ここは敢えて典型に飛び込んでみようかと思う。恋愛小説の典型の一つに「ギャップ萌え」というものがある。不良少年が捨て猫を拾ったり、不良少年がおばあさんの荷物を持ってあげたり、不良少年が劇場版ではいいやつになったりするあれだ。イメージとの違いにキュンキュンするってやつだ。不良少年が多いな。そうそう不良少年といえばBLANKEY JET CITYがもうすぐサブスク解禁するらしい……とこういう風に脱線するから恋愛小説が始まらないのだ。本題に戻そう。
「ギャップ萌え」の具体例をあげてみる。
ジャンプ+連載中の軽音部漫画「ふつうの軽音部」でZAZEN BOYS「はあとぶれいく」の話が出て以来、向井秀徳アコースティック&エレクトリックバージョンの「はあとぶれいく」が気に入り、繰り返し聴いている。
https://www.youtube.com/watch?v=CNAsQvBc7mM
先日は洗い物の最中に歌詞を見ながらリピート再生して歌っていたら、ゲームをしている健三郎が口ずさんでいた。気がする。
この動画に出ている向井秀徳はどこか80年代のロッカーのような雰囲気で、正確なリズムでギターを刻み、歌いあげている様子が好青年に見える。娘からの煽りを私はこの歌を歌いながら乗り切ったこともある。乗り切れていたかは別問題として。泣かないためにも歌はある。
次に同じ曲のZAZEN BOYSライブバージョンの動画を観ていただこう。
https://www.youtube.com/watch?v=1q4gM1BaGEE
ボーカルは当然向井秀徳。先ほどの動画におけるサングラス兄さんと同一人物である。渋い雰囲気はどこへやら。3:35あたりからは、シャツの中にマイクを入れて「うわあ、服の中で何か動いてるよう」といったパフォーマンスを始め、ベーシストの方から不審者を見る目つきで見られている。
お分かりであろう。これが「ギャップ萌え」というやつである。渋すぎて近寄りがたい雰囲気だった人が、一気に親しみやすくなっている。ステージ上でなかったら通報されても仕方のない行動を取っている。そこに人々はキュンとするのだ。
では向井秀徳氏の行動を参考にして、「ギャップ萌え」全開の恋愛小説を書くことにしよう。しかし残念ながら一回の更新あたりの文字数の上限にいつの間にか達してしまっていた。今回は泣く泣く諦めることにする。
(了)
※文字数制限なんてものはありません。
※お詫びの捨て猫を拾う不良少年の生成画像です。