おかしな言動をする頭のおかしな誰かさんは、おかしな呼び方で私を呼び、そこで初めて笑顔を見せた。
笑顔……。笑顔のはずだ。
見るだけで凍えるような、底意地の悪い、悪意たっぷりの笑顔を、ただの“笑顔”だと言って良いのなら。
…………。
「ま、それでも状況を説明しねぇといけねぇわけよ。ほら、俺って親切じゃん? 神レベルの親切さがもっぱらの評判のナイスゴットじゃん? そういう親切さが神がかってっから、愚民共は一心に、この一神へと信仰集めちゃう訳じゃん?」
その誰かさんは上から目線なうえに、さらに恩着せがましくそう言ってきて、やっぱりこの人頭がおかしいな、と確信した。
ただ、頭がおかしいのは私も同じなのかもしれない。私の今の状態は、その疑いをもっても十分に納得できるくらい、おかしな状況だ。
「えっとな、まずは自己紹介。俺、神な。神。神はまぁジョブ的な呼び方でもあるわけ。個人名は愚民に口にされると価値下がる系だから本名伏せて、コイツの……、あぁ、今お前に見えてる有名男性俳優? の名前を名乗っとくわ」
などと言っておきながら、その誰かさんは続いて「誰だっけ、コイツ……」とか首をひねる。私が言うのも何だけど、どこが有名男性俳優だ、という感じ。
「あ、思い出した。承服亭一郎だ。うん、そんな感じだったわ。たぶん。神たる俺はそうすることにするわ。ん、じゃ、気軽にショウちゃんとか呼んでくれて良いぜ?」
誰かさんは明らかに見た目と違う、おかしな名前を名乗った。
その落語家くずれな名前を通すつもりらしく、話を進める。
……いいのか、神が承服亭で。いや、本人がいいなら私から言うこと何も無いや。
「えぇっと、まずは、と。……あ、お前死んだわけ。それは分かるよな? 学校での成績も不良で、リアルで馬と鹿のキメラみたいな頭のお前でも、それくらいは解る程度の頭脳はあるよな?」
「はぁ……。死んだ、んですか」
あれ、私声が出る。身体が無いはずなのに……。
なんて思って口に手を当てる。当てて、手があること、口があることに気がついた。
さっきまで間違いなく身体が無かった私。
なのにいつの間にか、気がつく間もなく、また身体を取り戻していた。
……んん?
自分でも言ってる意味が分からん。
ただ、肉体があるのは間違いない。なんというか身体の手応えというか、肉体がある実感があるし、いつも感じてる、背中に三つ編みの重みがある。そういえば眼鏡のフレームも視界に入ってる。
自分で自分を直接見れない以上、目では確認できないけど、私は身体を、それも私の身体を間違いなく取り戻している。
私が驚き、あちこちを動かしたり、学校指定制服の深緑のブレザーを着ている身体を触ったりしていると、自称神の承服亭さんはこともなげに言う。
「ま、今の状況が分かりゃ魂のままってのもアレだしな。……ってか、透明な意識体に話しかけてる俺が空しいわ。独り言にもほどがあんだろって気もするし」
彼にとっては、私の身体があるなしは特にこだわりは無いらしく、本当にどうでも良さそうにそんなことを言っている。
本当に神なのか、と私は少しだけ納得した。八割以上は未だにアレな人と思ってるし、下手すると悪魔的な何かだとも疑ってるけど、少なくとも、人知を越えたナニカを持っている誰かさんらしいことはさすがに分かった。
アレっぽい悪魔風味の自称神は、バーガーに口を付けて咀嚼する。私が落ち着くのを待ってくれてる、という感じではなく、ただ食べたいから食べてるのが丸わかりな、食優先の姿勢を披露してきた。
そのまま五分くらい私は待たされ、誰かさんはそれにようやく気がついて「朝まだだったんだよ。悪ぃか」と逆ギレ気味に言ってきた。こちらは何も言ってませんが。
しかし、朝? 今は朝なのか?
店の窓を見てみても正確な時間帯は分からない。窓の外に光が溢れているのは分かるけど、ブラインドが閉められてて外の風景はよく見えない。ブラインド越しの光は非常に強く、むしろ朝と言うよりも昼の印象だ。にしても光が強すぎる気がするけど……。
そもそもここはどこなんだ、と今更思う。
バーガーチェーンMの店なのは分かるけど、それ以外はサッパリだ。
「説明説明、チュートリアルの始まりでござい、ってか? ま、そんなに難しい話でも長ぇ話でもねぇ。簡単簡潔、適当至極に説明してやりますよっと。背を伸ばし、姿勢を整え、耳を研ぎ澄ませて、拝聴し傾聴しろ、愚民」
死んでるらしいことから考えて私の命が掛かってるはずの話なんだろう。
だってのに、笑福亭さんは実に雑に言いやがる。とはいえ、いちいち文句を言っても仕方ないのでまずは聞くことにした。
頭のおかしい理屈はあんまり聞く気がしない、というのが本音ではあるけど……。
「えぇ、お前は死にました。さっきも言ったとおり、享年十七歳。ま、そこそこ若いのか? 知らんけど。まぁ、お前というガキが一匹死滅しました。これはリアル話な。まずはそこを認識しろ。前提だからな……」
「はぁ……」
「チッ……。抜けた返事してんなよ。……まぁいいや。で、だ。えっと、このままいくと、っていうか逝くとお前、まず間違いなく地獄行きなんだわ。オーライ?」
とてもじゃないけどオーライとは言えないことを言われて、私はでも反射的に「オーライ」と言ってしまう。釣られたわけだけど、オーライじゃねぇわ。
いや、なんで? 生まれてこの方、地獄に行くような悪事は働いてないよ?
っていうか、今更少し思い出したけど、私、確か人助けみたいなあれやこれやで死んだ? んでしょ?
それでなんで地獄なのさ。
天国行き間違いなし、ってほどの善人とは名乗れないけど、でも悪人では無いつもりだ。少なくとも。
承服亭さんも、私の言葉のおかしさに気がついたのか「オーライじゃねぇわ」とツッコんできた。……あんたが言い出したんですがねぇ。
「なんで地獄行きなんか~、っつって騒ぐ場面だろ、常識的に考えて。っていうか愚民的に考えてやったらさ。おら、みっともなく見苦しくも取り乱して騒げや。それが面白くて神とかやってんだよ、こちとらよ」
とんでもなく性悪なことを自称神は平然と言い、やっぱりコイツは悪魔だな、と私は理解する。
でも、言ってる事の前半は確かにそうだ、その通り。
「ど、どうして地獄行きなんか~……」
試しに口にしてみて、ちょっと恥ずかしい。いや、そのまま言う必要は無い、と言ってから気がつく。
承服亭さんは、私が望んだ通りに言ったにもかかわらず、全然頓着しない様子で、というか無視して話を進めた。って、無視すんなや。
「とはいえとはいえ。つか、言っとくけど、標準的でパンピーな日本人が思ってるほど天国へのハードルは低くねぇ。善良な心を持ち、日々善行を詰んで、清らかであれば天国に行ける、ってわけじゃねぇんだよ。舐めんな」
「舐めたつもりは無いですが……」
「宗教にもよるけどよ~、まぁ、まず普通の生活送ってたら完全アウトだな。百パー地獄行き。何故かっつーと、肉食うじゃん? 性欲抑えられねぇじゃん? 怠惰に過ごす日もあるじゃん? 嫉妬にかられる瞬間もあるし、怒りでとち狂う時もある。じゃなくても、蚊とか蟻? あれ一匹でも殺したらゲームオーバー。どんないきものも、きちょうでだいじ、かけがえのないいのちですから~、っつって」
自称神は、そう言って、ククッ、と鳩が笑うような冷笑を付け足した。どうにも馬鹿にされてる気がする。気がする、っていうか馬鹿にしてきてる。腹が立つけど、今はソレは置いておく。
何しろ地獄行きが確定、なんて言われたわけだ。
その言葉自体の信憑性が著しく低いけど、それでも今の状況が分からないから拭えない不安がある。さすがに閻魔大王さまに舌抜かれるよ~、なんて脅しでビビるような歳じゃないけど。訳の分からないものに対する不安が私にもある。
「そうであるように定めたのは俺じゃねぇけどな……。ま、それは置いといて。状況説明」
不安な私を無視するように、承服亭さんは話を進める。ていうか、話、脇に逸れすぎなんですが。未だに私、Mの店にいる理由も聞いてないんですけど。
「お前は地獄行き。つっても、それはまだ確定じゃねぇ。まだ助けてやれる余地がある」
「助けてくれるんですか? 普通に暮らしてたら完全アウトだって……」
「あぁ? チャチャ入れんなよ? 宗教にもよるっつったろ? ぶっちゃけ人それぞれ、そんなに明確な条件が……まぁ、無くもないんだが。そこ説明し出すとキリがねぇし、そこまで親切する義理もねぇ。今はお前はまだ地獄行きが決まってねぇ中途半端な状態である、と思え。な? 分かるか? 愚民」
「……はぁ」
「んな腑抜けな返事するなよな~。頭入ってるか? 豚じゃねぇなら思考し理解しろ。……ま、いいや。んで、はいはいは~い! 本日、死亡された瀬名美言という愚かなる民に、全能なる神からの耳寄りな情報がありま~す!」
言葉の途中でいきなりテンションを上げて承服亭さんは言い、私は少しギョッとする。もちろん、承服亭さんはそんなことにも取り合わない。
「なんと! 先着一名様、っていうか貴様にだけ大大大だ~いチャンス! なんと、今だけ、貴様にだけ、偉大な神からのチャンスをプレゼント~! 地獄行きを回避させたるっつぅ、とんでもない恩情をくれてやろうという粋な計らいでござぁい! まぁさぁにぃ、地獄に仏とはこのことですねぇ~!」
チャンス? なんだろうか。というか、さっきからの言動のせいで不穏にしか思えない。
私は自然と身構える。不安もまだあるし、今更だけど、なんだかちょっと目の前の承服亭さん自身が怖くなってきた。
そんな私に承服亭さんは機嫌良さそうに言葉を続ける。
「その恩情、地獄行き回避という豪華景品をGETするために、愚民には今からある課題、ちょっとしたゲームをクリアしてもらいま~す! あ、といってもぉ、とぉっても簡単でぇ~、馬鹿でも出来る、いや、出来ない馬鹿がいないくらいのぉ、ちょ~かぁんたんな課題ですから、安心してくださいねぇ~。……ッククク」
課題……。ソレをすれば地獄行き回避、って。
本当か?
いや、そもそもこの状況の説明が何もされてないし、手も身体もある今、さっきまでの肉体が無かった事の方が信じられなくなってきてる。我ながら現金な気もするけど、身体が無いなんて、まるで幻か夢のような体験だった。だから、現実感が急速に失われて、それを根拠にしてたこの目の前の承服亭さんへの不信に繋がる。
本当は事故なんて起きてなくて、私は浚われただけなんじゃないか、なんて疑いすら持つ。
あ、今思い出したけど、私たしか、若者に追われてたんだよね。この人もただ有名男性俳優に顔が似てるだけの、あの若者達の仲間なんじゃないの?
「課題って言うのはぁ~、まずは下界に――」
上機嫌に説明を続けてた承服亭さんは、それを止め、いきなり不機嫌そうに眉を寄せた。
「あん? おい愚民。今お前、俺を疑ったな? 神たる俺に不審を抱いたな? 不審、不信か……。はぁん、こりゃ間違いなく背徳で言葉通りに背信だわ」
「え、いや……。べ、別に」
私はどうしてかわたわたと弁解してしまう。いや、この状況でただ一方的に信用しろ、というほうが難しいでしょ。そう思う。
そう思っているのに、どうしてかギクリとした。致命的に不味いことをしてしまったような決まりの悪さが心に染み出てくる。自分でも分からない感覚に、内心戸惑う。
承服亭さんは、しばらく私を不機嫌そうに見てきた。
でも、それもすぐに終わり、彼はパッと顔を明るい表情を戻して、ニコニコとした。
「いやいや、悪ぃ悪ぃ。俺ってば、ちょぉ~っと、感じ悪かったよなぁ? いやいやいや、コレは俺が悪いわ。アハ、神たる俺を許してもいいぜ? 愚民。許すことを赦してやるよ、神たる俺は」
ニコニコと無邪気な笑顔で承服亭さんは言い、その笑顔に私は今更ながら狂気を感じる。言葉もそうだけど、態度が怖い。いまさら、どうして私はのんびりとこの人の話をただ黙って聞いていたのかが分からない。
まずはこの場を離れた方がいい。まずはこの危ない人と距離をとって、それから……。どうするかは分からないけど。でも、今、この人と居ることは何より不味い。そんな気がした。
私が席を離れる方便を取り作った笑顔の下で考えていると、その危ない承服亭さんはポンと手を打った。
「あ、コレ言うの忘れてた。あぁあぁ、なるほどなぁ、コレが無いからアレなんだよな。うんうん、それは忘れちゃならねぇよ。神ってばうっかりしてた。全く、全知全能でも、こういううっかりはあるんだよな。失敗失敗」
その気楽な言葉と態度がどこか恐ろしい。勝手に話を進めて、一人で納得してるのが、言葉が通じないんじゃないか、という不安を煽る。いよいよもって、私は怖くなった。
今すぐ席から、もう言い訳とか理由とか無しでも――
「あのさ、ちょっと耳貸してくれる? これ、大声じゃ言えねぇことなんだわ。こう内緒バナシ? っていうのかな。それするからさ、こっちに耳を寄せてくれるかな?」
「はい、分かりました」
我ながらいい返事をして、どうしてそんなに素直に返事をしたのか、自分でも分からない。ただ、その違和に気がついたのは、承服亭を名乗る、神を語る誰かに耳を寄せた後。
ハッと気がついたときには、私はわざわざ横を向いて、自分の右耳をその自称神の前に差し出していた。
「いい態度だ、愚民」
――ジョギンッ。
自称神の言葉と共に、そんな不穏な音が聞こえて、でも――
「ヅッ! ぐぅっ……がッ!」
直ぐにそれどころじゃ無くなる。っいうか……ッ!
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いッ!
……痛ぃッ!
寄せていた耳辺りがとんでもなく痛くなり、私は思わず右耳付近を右手で押さえ、身体を丸め蹲る。
手で押さえて気がつく。そこはぬるぬると生ぬるい液体が溢れてて、右手はたちまちそのぬめりに捕らわれる。
気持ちが悪い。それ以上に痛い。……ッ痛ぃぃいッ!
そして、その痛みの原因ももう分かる。
押さえている右手は、何も押さえられていない。
右耳があったはずの場所には、今はそれがない。
切り落とされた。
右耳があった場所から液体が溢れてる。蹲ったまま、全身が凍えるような鋭い痛みを誤魔化すために目を開いてみると、白いテーブルの上に、赤い液体が惨憺たる模様を描いているのが分かる。
もちろん、私の血だ。右耳があった場所から流れた、私の血が、それをしてる。
「それな、その痛み。えっと、そうだな、それの十三倍くらいかな。地獄での痛みって。あ、もちろん安心していいぜ? その十三倍、が最低値だ。それ以上は、まぁご想像にお任せするわ。最低でも今お前が感じてる、その痛みの十三倍が、常にお前につきまとうことになるわけだわ。四六時中、ずっと。永劫な」
痛くてそれどころじゃ無いのに、承服亭さんの声がちゃんと聞こえる。ただ、聞こえ方がおかしい。いや、右耳からの音なんて、効率よく聴けるわけがない。
私は痛すぎて、手が震える。いや、全身が戦くように震えて、動けない。
それでも承服亭さんに視線を送ると、彼はいつの間にかその手に、大ぶりの裁ちバサミを持っていて、当然、その裁ちバサミは汚らしく赤黒い色に染まっている。
私が痛みに耐えかねてまた蹲る。ただただ痛いのだ。痛くてたまらな……。
――?
痛くてたまらないはず、だった、のに……。
「ま、あんまり苛めても可哀想だし? 言ったじゃぁんよ? 俺って神クラスの親切が評判の唯一神ってさ。俺の半分、優しさでできてるからな。もう半分はとても人には言えないナニカで出来てるって噂なのよ。たぶんだけど、俺はそのナニカ、慈愛とか慈悲だと思うわけ……って、アレ、かぶっちゃってなぁい? どっちも優しさと被り気味ィ!」
そう言って、承服亭さんはニタニタと笑う。
私はそれをただ戸惑って見て聞くしか出来ない。
痛みはもうまるでない。当たり前だ。痛くなる原因が無くなっている。
あれだけ汚れてた机の上も、ぬるぬると気持ち悪かった指からも、赤い血は見事なまでに消え失せて、痕跡一つ無い。
そして、痛い原因も、私の頭から消えてしまっている。私は確かめるように右側頭部をまさぐり、ぐにぐにと形を変える右耳の存在を感じてひたすらに安堵した。
安堵したけど、でも完全な安心は出来ない。
当然、承服亭さんが目の前に居るからだ。
もちろろん、とてもじゃないけど、彼の半分も優しさがあるとは思えない。今も、そんな事を言いながらも裁ちバサミをこれ見よがしにくるくる回して遊んでいる。ただ、その様子を見るだけで私は全身が強ばるように感じる。
「地獄の説明はそれで終わり。実感した方が必死になれるだろぉ? こう、なんつぅの? 命を賭けて全力出して欲しいわけ。必死に、な? 分かるかぁ? ククククッ……」
笑いながらそう言う承服亭さんに対して、私は内心、くじけた。
悪魔かもしれない。仰るとおり神だとしてもいい。ただ、目の前の彼が超常的な存在だということを理解するしか無い。
もう疑うことで痛い目を見たくない。そうくじけて、怯えてしまっている。
彼がなんだとしても、そんな存在に完全な理解は及ばない。相互理解は絶対に不可能だ。相手はこっちのことを本当になんとも思っていない。
人とも、いや、生物とも、いやいや。
たぶん私のことをおもちゃとすらも思っていない。それがわかる。
彼から漂うどうでもよさで理解するしかない。
まるで、その辺の雑草を暇つぶしに千切るような、ただひたすらなどうでもよさが彼から最初から今に至るまで漂っていて、私は今更ながらそれに気がついた。
だというのに。
相手はこっちをなんとも思っていないのは明らかなのに、こちらはその相手の言葉の真意も知れないまま、ただ聞き、姿勢を正すしかなくなった。
私はこの存在の声を無視することを、逃げ出すことを封じられたのだ。
――ジョギンッ。ジョギッ。
承服亭さんは手に持った裁ちバサミを無造作に開いたり閉じたりして、そのたびに私は身体がすくむ。
一通り、ハサミか、あるいは私をもてあそぶと、それにも飽きたのか、承服亭さんは手に持っていたその大ぶりの裁ちバサミを後ろ手にポイと投げ捨てた。
捨てて、もう忘れたように投げた先を見もしない。
「さ、チュートリアル、始めるぞぉ、っと」