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うはw急に新しい家族が出来たww
【第】うはw美女と同居ww待てそれは孔明の【2話】

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【第】うはw美女と同居ww待てそれは孔明の【2話】


 深夜2時となる頃。
 まだ住み慣れない自室。真っ暗な中、俺の愛用のノートパソコンの光だけが灯っていた。
 タカタカとキーボードを叩く音が響く。
 俺は案の定、VIPにスレ立てしていた。

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うはww急に新しい家族出来たwww
1 :1:2007/11/23(金) 01:50:50.51 ID:Hj0oi+P12
どうしようマジde
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 うは、じゃねえよ、俺。何やってるんだ?
 つーかもうすぐ模試があるっていうのに俺マジなにやってんだ。それに第一志望の入試ももう近い。一応やると決めていた一日の英単語のノルマもやっていない。
 溜息をつきながらリロードしてみると、いくらかレスがついていた。「は?子供でも出来たのか?避妊しろ」「>>1氏ね」「糞スレ乙」「なに?親の再婚?」など。
 何気にこのスレタイ分かりにくかったなと思いつつ、とりあえず詳細を書いて説明する。

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6 :1:2007/11/23(金) 01:58:09.66 ID:Hjjoi+P12
うん、俺兄貴と暮らしてんだけど、その兄貴が結婚するらしいんだ
で、俺も一緒に暮らす事になった
俺受験生なのにさ、こういうデリケートな時にひどいと思わないか
でも嫁さん美人wwwwwwwwwww
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/23(金) 08:53:19.96 ID:39IqXlpIO
>>6
別によくね?嫁寝取ってうはwwwすればおk
スレ的にも
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/23(金) 02:00:19.96 ID:2dgSaD50
>>6
ウラヤマシス
これで同年代のおにゃのことかと同居だったらエロゲ展開=釣りなのになwwww

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 すぐにいくらかレスがつく。
 だが…正直>>10にはどきっとした。
 マジで一つ上の女の子と同居、することになったからだ。ただしエロゲ展開は望めない。いや俺エロゲに手だしたことねーからよくわからないのだがな。

 いや、ほんとに。望めない。

* 

 兄貴に挨拶してこいと言われて俺から出向いた、鳴子さんの娘さんの部屋は階段をのぼるとすぐ目の前にあった。「ことみ」と木彫りで彫られたよくあるプレートがドアにかかっているので、多分ここで間違いないだろう。兄貴に娘さんの名前を聞いたわけでもないのだが、なにか、犬の部屋という事もあるまい。
 ことみさんていうのか。一応一つ年上なんだよな…。
 俺はドアの前でノックをする体勢をとったが、なかなか踏ん切りがつかず今だ思考がぐるぐるしていた。

 …つーか鳴子さん…あんなに見た目若いのに俺より上の娘さんがいるとか…どうなってんだよ…。
 その上俺、実は女の人苦手なんだよ。いや、ウホってことじゃなく。母親ずっといなかったから苦手っていうかあんま慣れてないというか。誰だって厨房なんて女慣れしてないっつーの。お年頃の男の子と女の子同居させるとか何考えてんだ…。

 そこまで考えて、正直イライラしてきた。くっそ兄貴死ね。俺一人で前のアパート戻りたい。
 無性に腹が立った勢いで、強めにドアをノックした。
「あのう!」
 ごんごん、と鈍い音が廊下に響き、ちょっと強く叩き過ぎたかと思いつつ相手の反応を待つが、いつまでたっても物音すらしなかった。
「なんだ?いないのか?」
 何度かノックを続けるがまたもや応答はない。寝ているのだろうか。
 鍵がかかっているもしれないが…、と思いつつ一応ノブを回してみるとくるりと自然にノブがまわり、どうやら開くような感触だった。
「入りますよ、いいですか?」
 ここでエロゲだったら着替え途中な訳だがと思いながらドアを開ける。
 すると――――

 まず、『アリクイ引越しセンター』とかかれたダンボールの山が目に入った。
 その山の向こうにベッドがあり、そこには。

 ベッドに足がかろうじて引っかかっているものの、床で下着だけという恰好で爆睡する美少女の姿があった。

     


     

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49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/23(金) 02:47:50.51 ID:Koj4mmq0
k美ちゃんの下着何色ダター?

51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/23(金) 02:48:50.51 ID:2dgSaDG0
美少女?

55 :1:2007/11/23(金) 02:50:50.51 ID:Hj0oi+P12
>>49
何か紺の白ドット柄だった
>>51
美少女
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 美少女。だよな。多分。

 そんな判定も出来かねるほどの恰好だった。
 下着は上下セットなのか紺に白いドット模様の可愛らしいもの。ブラジャーはスポーツブラ似た感じで、パンツの方も、男のボクサーパンツのような短いスパッツに近いものであまり色気がなかった。って何を詳しく説明しているのか。へそを出したまま、大の字の恰好で、足はベッドにひっかかっている。そして口をあけて寝ていた。
 そんな恰好だったので一瞬引いたが、やはり容姿は…。
 目を閉じて眠っている状態ですら、遠目にも綺麗だと分かった。肌が透き通るような白さで、睫毛も長い。髪は母親である鳴子さんに似て綺麗な黒髪だ。肩くらいの長さに伸びた髪型は、正直俺好み。

 いつまでもじっと見ているのも憚れたので、床に散乱している雑誌の方に目をやった。いやしかし…。いつ越してきたのかはわからないが、片付いていないにも程があるな。
「ん?」
 そして、俺は気付いてはいけないものに気付いてしまった。

 散らばっている本を良く見てみると、『アニメイジュ』を初め、オタク臭のするものばかりだったのだ。エロゲが原作の漫画『IROHA』までもが落ちていた。ちょ、それ糞つまんねーぞ!アニメは良作だったが…。

 とかいってる場合ではない。

 今起きられたら俺変態じゃねーか。早くここは引いた方がいいだろ。
 そう思い引き返そうとしたとき、皆さんもフラグにお気づきかと思うが俺はダンボールの山の一つにけつまづいた。
「うっ!」
 俺の何ともいえない痛みに耐える小指など無視して、だだだだとダンボールが雪崩を起こした。
 まずい起きる!!
 俺は嫌な汗が毛穴からぶわっと出るのを感じながら「ん…」などという寝起き特有の声をきいた――といいたいところだが、どっこい彼女はそんな可愛らしい声を出さなかった。
 「ぱちっ」という漫画的擬音語でも聞こえそうな勢いで急に目を開け、なんというかこう…ぼうっとした、どろっとした漆黒の目をこちらに向けて、無表情で静止したまま俺を見つめていた。
「………」
 少したつと、やはり無表情でむくりと起き。
 俺をどちら様?という目でじいっと見つめた。ただし無言。そしてやっぱり美少女。
「あ…あの…」
 とか何とかもごもごと言いながら俺が必死に弁解しようとあたふたしていると、美少女がやはり無表情で、「ねえ」と声をかけてきた。
「ハぃ?」
 俺が裏返った声で反応する。
「やるべきだと思う?」
「え?」
「キャー見ないでえっちーって…」
「…?」
「なんかその辺のもの投げたりして君を追い出すの。やっていい?」
「ハア?!」
「いや…憧れで」
 えええ。何言ってんのォこの人おおおお。
 意味が分からない。

「あ…あの…鳴子さんが呼んでいて…僕はノックしたんですけど、その…応答がなかったので――」
 俺自身も一体何を言ってるのか分からない。動揺しているらしい。とりあえず眼鏡をくいと抑えて落ちつこうと必死になった。だがそんな俺を気にすることもないらしく、
「ああウン着替えようと思ったんだけど寝ちゃって…ゴメンね」
 というと彼女は俺の前でもぞもぞと着替え始めた。
 ちょ…おま…目の前で着替えるんですか!
 こいつはヤバイ。関わってはいかん!逃げよう!
 俺はそう直感すると同時にくるりと回れ右した。
「じゃ、先に下で待ってますんで」
「ムギくん」
 ビクリとしつつ立ち止る。逃げるのは失敗のようだ。

「君、塩川麦くんだよね…?私は村上琴美(むらかみことみ)…。お姉ちゃんって、呼んでもいいよ」

 無表情の美少女、もとい琴美さんは俺にスッ…と手を差し出し握手を求めた。
 汚い部屋。無表情。散乱するオタ臭のする本。

 ――変人。

 俺は彼女が美少女にも関わらず心底何もかもイヤになっていた。そして思った。寮のある高校に受験すべきだった、と。

 初めに感じた嫌な予感の原因は、どうやらこの人にあるような気がした。

     


 再び俺が紅茶を全員分入れ終えると、兄が足を組んだ恰好でうやうやしく言った。

「さて。琴美ちゃんも来て全員揃った事だ、紹介といこうか。ほれ、麦、お前の為に言ってんだぜ。俺達3人はとっくに顔合わせ済んでんだよ。お前だけだから、オラ」
 何がお前だけだから、だ。何様なんだ。お兄様か。
「…塩川麦…弟です」
 頭の中で悪態をつくが、やはり逆らえずに素直に答える。
 それより…2人とも知ってるだろ俺の名前。さっき呼んでたし。
 何か意味あるのかこれ?
「頭の悪いサルでクズみてーな奴だけど鳴子、琴美ちゃん。二人とも頼むよ。あ、麦は家事全般やるから全部押し付けろ」
「はあああああああ?」
 何言ってるだこやつ?
 押し付けろとか聴こえたが…。空耳か?
 俺は破顔して思い切り分かりやすく不満をもらすが、鳴子さんは変わらぬ笑顔で手と手をあわせ嬉しそうに言った。
「まあ、助かるわ!私お料理とか苦手なのよね。稲くん稲くん、麦くんのご飯っておいしい?」
「まあまあか、クズにしては」
 兄貴が道端のゴミとばかりに俺を一瞥する。お前は俺に一瞥するのが習慣だとか思っているんだろうか。その認識は間違っているぞ。
「クズクズいうな!で…、ってかマジで作るの?4人分も」
 毎日…作るというのか?
 兄貴、忘れてるんじゃないだろうな、俺これでも受験生だぞ。
「麦くん麦くん。私オムライスが好きなの、よろしくね」
「はあ…、そですか」
 とりあえず曖昧に答えておくが、俺は承諾してないですよ!
 そんな可愛くおねだりしても俺は…俺は…。
 最強の笑顔に俺がたじろいでいると、兄がにやついて鳴子さんに話かけた。
「鳴子は趣味が子供っぽいよな」
「稲くんはお酒ばっかり飲んでつまんないよ」
 雑談をし始める二人。
 初めは良く分からない組み合わせだと思ったが、その様子を見ていると、なんだ、中々いいカップルかもしれないな、と思った。雰囲気がいい感じだ。しかし兄貴にこんなおっとりした人がねえ。世の中は不思議なものだ。
 俺が妙な感心をしていると、鳴子さんがアッと小さく叫んだ。ぼんやり静止したまま動かない琴美さんに急に気付いたらしい。またぱあっと華やかな笑顔で俺に話を振った。
「そうそう!この子は私の娘なの。可愛いでしょう?」
「…ええ?…まあ」
 どう返していいか分からずもごもごと俺が曖昧に言うと、隣の琴美さんがぼそり、
「これは…フラグ…」などと発言した。

 こ…こいつ…。

 やばい。もしかしてVIPEERなんてこともありえるぞ。このオタクぶりは。じわりと俺の背中に汗が滲む。いやだぞそんなの。そんな美少女いや。

「麦くんの一つ上の16歳なの。お姉さんね。仲良くしてあげて?」
「は…あ、はい」
「テメー。なんだそのはっきりしない口のきき方は」
「え…ああ…。…分かりました」
 急すぎるんだよ。何もかも。訳が分からない。
 そんなことは彼女達の前では言えないので黙っておくが、ちょっと許容範囲越えるかも知らない。
 俺が不満たらたらなのが兄貴にも分かったんだろう。溜息をついて言った。
「鳴子はマジで壊滅的に家事出来ないんだよ。亡くなった夫の――奏(かなで)さんがやってたから」
「そ、…そうだったんですか…」
 亡くなっていたのか…。
 うちの両親のように離婚か何かかと思っていた。そうか、ということは…琴美さんは親父さんがいないんだな。そう思うと、別れて離れ離れになってはいるが、健在で元気であるうちの両親が尊く思えた。
「ま、鳴子の仕事がこもりきりの漫画家っていうせいでもあるんだけどな」
「えええっ…?!」
 漫画家っすか!!
 俺の中のオタク魂が暴れ出す。どんな漫画描くんだろう??
 訊こうか迷ってもじもじしていた所、兄がそんな俺を悠然とシカトして飲んでいた紅茶をガチリとテーブルに置いた。

「いいか。これからはこの四人で家族だ。俺と鳴子はまだ正式に夫婦じゃないし、俺と琴美ちゃんは親子になる予定だが血はつながってないし、歳も10しか違わない。だが家族だ」

 色々あると思うが、適当に力あわせて、楽しくやろうぜ。

 そういい終わるやいなや、汗臭いんで風呂に入ってくる、などと言って兄はリビングから出て行ってしまった。

 ――兄貴らしい横暴な言葉だが、俺は何だかじいんとしてしまった。

 5年前の10歳の、泣いてばかりの頃の俺が頭によぎる。親父と母さんの仲に子供の俺には分からないいざこざがあったらしく、ついに母さんが出て行ってしまった時は「置いてかれた」などと思ったものだ。それからは親父も金を稼ぎに地方へ出て、兄貴も仕事で家にいる事も少なくて…あの頃から、俺は今まで一人で家にいる事が多かった。
 正直、寂しかった。寂しくてはじめは泣いてばかりいたくらいだ。勿論、一人で泣いていても状況が変わらなかったのでいつの間にやらやめていた。
 飽きたか慣れたと思っていたが、やはり寂しいのはずっと変わらず。
 もしかしたら今もかも、しれないな。

 過度の期待は裏切られる―。
 母さんが出て行くわけなんかない、と思ってたように。俺には優しくしてくれた両親、壊れるような関係じゃなかったはずなのに。そう思っていたのは俺だけだった。

 家族と言う言葉にほだされて、過度に期待はしてはいけない。

 けれど。今度は…家族が増えたのだ。減ったのではなく。

 もしかしたら、煩わしいことも増えるのかもしれないけれど。

 自然に少しだけ笑顔になり、二人の美女に「よろしくお願いします」と心の中で思う。

 とりあえず、やれるだけの事はやろう。家事も何もかも。


 そう俺が健気に心に誓っていると、隣から視線を感じた。
 無表情変人少女だ。
「な、何か?」
 何やらじっと俺を見つめている。
 俺に惚れた…?などと勘違いしてみるが。多分違うだろう。


「私の好物は…辛いものです」


 ――そうですか。

       

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