Neetel Inside 文芸新都
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うはw急に新しい家族が出来たww
【第】うはw俺おさんどんっすかww【3話】

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【第】うはw俺おさんどんっすかww【3話】


 ある~はれ~た・ひ~のこと~~♪

 枕もとに置いてあった、俺の携帯が騒がしく暴れ出す。
 別にハルヒが好きという訳ではないのだが、目覚ましのサウンドは晴れハレ愉快に常時設定されている。友人に無料で貰った、俺の携帯の中で唯一の着うただから一応使ってやっている。
 うーとうなりつつ、手探りに停止ボタンを押すと、煩い音が静まった。
 画面には、

 6:40 もえる

 などと、現在時刻と、メモが記されていた。
「あー、今日、燃えるゴミの日か」
 そう呟きながら、画面を見つめたまま静止し昨日の事を思い出す。
 そういや、あの住み慣れたアパートじゃないんだった…。
 俺は寝ぼけ眼でぼんやり見渡す。
 ベッドくらいしかこれといって何もない、がらんとした見慣れない部屋。当たり前だ、昨日俺は着の身着のままここへ連れてこられたのだから。
 荷物は今日送られてくるらしい。見られちゃまずい妙なエロ本などなかっただろうな。思い巡らすが、先月大掃除をした時に少し溜まっていたのを捨てたので大丈夫なはずだと胸をなでおろす。こういう時、俺がマメな性格でよかったなと思う。
 フと昨日できたばかりの、新しい家族のことを考える。
 兄の嫁と子だ。俺とは大した繋がりではない。
 けれど――。
 そこまで考えたがいったん止めて、よいしょと布団をめくる。部屋はひやりとしていて、もうぬくい布団から出がたい季節になりつつあるらしかった。
(兎に角、やる事はやるって決めたんだ、やってやるぜ)
 俺は寝巻きのまま部屋から出た。今日は学校なのだ。


 リビングへ行くと、案の定誰も起きてはいなかった。
 皆何時に家出るんだ?
 俺は7:30に、兄は8:00なのだが。
 ああ、鳴子さんは漫画家さんだから家にいるのかな。不規則そうだな…いつ起きるんだろう?
 あとは琴美さんだが…。高校って何処に行ってるんだろう。昨日訊いておけばよかった。
 そんな事を思いながら、俺は無意識に台所に向かっていた。
「あ…そうだ朝飯作んないとな」
 昨日はファミレスに4人で食べに行ったから作らなかったのだ。さて、冷蔵庫に何があるだろう…。
 意外に立派な冷蔵庫を開けるとそこには…。

 何も入っていなかった。

「………」
 こ、これは。
 俺の部屋並に何もない冷蔵庫を、中腰でじっと隈なくみつめるがやはり何も入っていない。
 引っ越してきてばかりなのだから当たり前…なのか。そういえば鳴子さんは料理を全くしない人なのだ。買い物など済んでいるわけはなかった。漫画が忙しいのかもしれない。インスタントやレトルトのものならあるかもしれないが…。
 台所の戸棚など、色々探すが、パンなどの炭水化物すらなかった。
「怒っても仕方ないか…コンビニ行ってこよう」
 タクシーで来た時、近くにコンビニがあったのを見た。と思う。ついでにゴミも捨ててこよう。
 寝巻きのスウェットのままでは憚れるので、兄貴が唯一持ってきた俺の学ランに着替えた。

*

 コンビニで買った食パンと、ツナとマヨネーズでホットサンドを作った。
 サラダも多少買ってきたものだが出す。
 兄貴はコーヒーをブラックで。鳴子さんと琴美さんは何を飲むだろう。
「冷めちまうから、皆には悪いけど起こすか」

 手初めは兄貴。いつも俺が7時に起こす。
 26にもなって俺に起こされないと起きてこない。ちなみに起こさないとフルボッコにされるわけだが。
 いつものようにノックもせずドアを開けようとノブに触れるが、思いとどまる。
 あれ、もしかしたら一緒の部屋か?鳴子さんと。
 うはwwそれから先は考えてはならない。
「オイ兄貴、起きろよ!7時だ!」
 どんどんと乱暴に叩いてやる。すると物音がしたと思ったらすぐに、
「うっるせえな!もう起きてんよ!!」
 と叫び、バンッッ、と盛大にドアを蹴破らんとばかりに開けやがったものだから、俺の顔面にドアがクリーンヒットした。
「ぶっほあ!!!」
 普通ドアって部屋側に開くだろ…。っていうか兄貴氏ね。
 よろりと悲劇のヒロイン張りに弱弱しく廊下に倒れそうになる。ちなみに俺の鼻の粘膜は異常に弱い。
 つまり、朝っぱらから鼻血が出たのだ。
「おめえ毎回毎回…飽きずに鼻血出してるよなあ…俺がちょっと殴ったりすると出しやがって。いっつもそれで俺が親に怒られんだ。おおげさなんだよ、まるで俺がフルボッコにしたみてえじゃねえか」
「フルボッコにしてたっつーの…兄貴のせいで鼻の粘膜が弱くなったんじゃねーか」
「はあ?俺のせいにすんなや」
 俺の首根っこ掴んで威嚇してきた。朝は無駄に機嫌が悪い。低血圧で、切れやすくなるのだ。女みてーな奴だ。だからそんなイケメンづらをたもってられんですかね、美容の秘訣は良く寝ることっすか?
 そこまで言ったら俺は本気でフルボッコなので黙っておく。朝から疲れることはしたくない。
「悪かった。ところで鳴子さんは?飯食べるかな」
「…隣の部屋。まだ起きてるだろ、漫画描いてるんじゃないか」
「え」
 こんな時間まで?
 すると、聞こえていたらしく、隣の部屋から「はーい、お腹減りましたァ」と可愛らしい声が聞こえた。

     

 さて、次は琴美さんだが…。
 昨日とは違い、俺は躊躇いもなくドアをノックした。そして声をかける。
「もしもしもおーし?」
 なんという閣下。制服さんの悪い癖ですよ。
 ふざけた事を考えながら俺が自重せずにノックを続けると、中で物音がした。
 そしてがちゃりとドアが開く。
「あ」
 あいかわらずの無表情だったが、今日の彼女は制服だった。
 灰色のセーラーに赤いチェックのリボン、プリーツスカート。K女学院の制服だ。その証拠に、胸ポケットにKという小さな刺繍があった。
 正直言って…可愛い。
 俺がぼうっと見惚れていると、漆黒の瞳がこちらをじっと見詰めていた。
 吸い込まれそうだったが、なんとか正気に戻る。
「あ…すみませ、その…ご、ごはんです」
「……」

 彼女はこくりと頷いた。

*

「あれ、もう食べないんですか?」
 琴美さんのツナマヨホットサンドは、一口齧り付いただけで、皿に戻されていた。
「…うん、あの、食欲ないの」
「そうだったんですか」
 もしかして、朝は食べない派?
 でもいくら女の子だからって何も食べないのは良くない。今度からは何かスープでもつくろうか。
「じゃ、俺もう行きますけど」
 俺がエプロンをはずしそう言うと、鳴子さんも立ち上がると乱れた髪を直しながら笑いかけた。

「麦くんが一番早いのね。いってらっしゃい。気をつけてね」

 こうやって送り出されるのは久しぶりで、なんだか喉に熱いものがこみあげてくるようだった。
 兄は相変わらず何も言わないが、俺の作ったホットサンドとブラックコーヒーを素直に食している。
 琴美さんは…何かを言いた気な目を向けてじっとこちらを見ている。いってらっしゃいって言ってくれたら完璧なのにな。はは、俺もなんか変だよな。こんなことを思うなんて。

 家族って、こんなだったんだな。 

「いってきます」

 小声でそう言うと、俺はスニーカーを足に引っ掛け、玄関を急ぐようにして飛び出す。なんだかむずむずして収まらなくて、俺は立ち漕ぎで自転車を走らせた。


 道はイマイチよく分からなかったが、前のアパートからそう遠くはなく、それに同じ市内なので。何となくある土地感だけを頼りに、学校を目指した。多分30分くらいで着くはずだろう。明らかに前よりは時間がかかるが、仕方ない。
 俺がゴチャゴチャ考えつつ慣れない道を走っていると、後ろから声をかけられた。

「おい!ムギ!」
「?あ?」
 振り向くと、友人がチャリで追いかけてきていた。耶麻智尋(やまちひろ)。活発派で人に好かれるタイプで、俺より確実に主人公に向いてるキャラだ。音楽が好きで色々楽器をやったりシンセをいじったりしている。今もウォークマンを付け、毛糸の帽子、マフラーという出で立ち。ちなみにハルヒの着うたをくれたのはこいつだ。
「ヤマ、はよ」
「ムギおまえ何でこんな道にいるんだよ?反対側じゃね?」
「ああ。お前はこっちだったっけな。まー、話せば長い事ながら」
「なに、何かあったの」
「…急に引っ越してさ」
「みじけーじゃん」
「それがさあ」
 ヤマが俺の隣に並ぶ。
 …何から話そうか。
 あ、もしかして学校行ったら一人一人に言わなくちゃいけねえのかな。

 うんざりして溜息を吐くと、もう冬も近いのか、白っぽい息がふわと浮かび俺の眼鏡を曇らせた。

     


「は…?稲生さんが結婚!?」

 そう言って前のめりになり目を見開いて驚いたのは、ヤマではない。中学生だというのに短めの髪にくるくるとしたパーマをかけ、キリリと凛とした目を持つ彼女は、俺の友人の一人。
 入江橙子(いりえとうこ)という。胸がでかくてナイスバディー。少々タラコ唇。
 正直一番こいつには言い辛いことだったわけだが――

「そーそー!ムギの兄貴。トーコ知ってんのかよ?」
 登校中俺が説明した事を、教室に入るなりがヤマが橙子に言ってしまったのだ。一番気を使って報告しないといけない相手に。
 俺は外人がやるように首を振りつつ手のひらで目を隠しながらハアと溜息をつきたくなる。
 ちらりと横目で橙子をみると、案の定鬼の様な形相でぶるぶると小刻みに肩を震わせていた。
 橙子は俺の兄貴が何故か盲目的に好きなのだ。
 去年俺の家に遊びに来た時に会っただけなのだが、一目惚れらしかった。
 それ以来写真が欲しいだの、好きなものはなんだだの、髪の毛が欲しいだのとまで言ってくるミーハー女に成り下がっている。
 髪の毛など何に使う気なのか。黒魔術か何かか?

「キイイイ!!なんということ!私の王子様があああッ」
 ヒステリーよろしくそう叫び、橙子は自分のパーマを掻き毟った。かと思うと俺の肩を勢い良く掴んで問い詰める。
 恐ろしすぎて一瞬だけ押し付けられたでかい胸の感触などわかりはしない。

「麦!!どんな女なのよ!その相手!」
「え…いい人だよ優しくて可愛い感じ?漫画家さんらしい」
「いやあああッ…漫画家なんて情緒不安定で経済不安定で駄目な人間がなるものって西原○恵子が言ってたわ!松本零○なんかパンツも洗わないって言ってたし――」
 またよく分からないイメージソースを取り出してきたな。それにしても漫画に詳しい。こいつ女のクセにいやにコアなオタクなんだよな…。

「しかもなー、俺らのいっこ上の美少女の娘さんがいるらしいぜー?どうするよ?」
 ヘッドホンを肩に乗せながら、にこりと人好きのする笑顔を向け、くったくなく言う。
 ヤマ、お前ってやつは…。
 でっかい声で言わなくてもいいことを。
 案の定、橙子は「子持ちですってエエエ?!」と叫び、周りには「芸能人で言うと誰似」だの「襲うんじゃねーぞ」だの「オナニーには気を使う羽目になる」だの。なんだ最後の切実な意見は。教室はやんやと騒がしくなり、俺は早くもうんざりしはじめた。

 だが、その騒動を静めるように現れたのは俺が一番信頼し尊敬してやまない、何て言えねーけれども――そんな友人。
 冬のボーズほど寒々しいものはない。本人も寒いからなのか感触を楽しんでるのか癖なのか知らないが、自分のボーズ頭を撫でながら気だるげにこちらへ来た。
「信男、はよー」
「おう、ソルト。騒がしいな」
 そう言いながらも彼は三白眼をそちらに向けることはせず、自分の席へ一直線に向かった。
 ああ、信男は俺のことをソルトと呼ぶ。麦などと呼ぶのは本人曰くださいらしく、俺の苗字である塩川の塩でソルトらしい。
 フルネームは戸賀信男(トガノブオ)。ボーズで背が高く目つきが悪く人相は恐ろしいものである。
 俺は信男についていくようにして質問攻めから逃れる。信男を怖がってる奴ばかりで、誰にでも話し掛けるヤマですら怖がって近づかない。しかし、付き合ってみると怖くはなく、かなりおもしろいのだ。独特の妙な空気をもった不思議な男。まあ、細かく言うと不思議ってレベルじゃねえんだが。

「助かった、サンキュー信男」
「あ?何言ってる」
「いやいやハハ…」

「そんなに可愛いのかその子」

 三白眼を俺に向け、信男はそう言った。

 …ほらな、こいつ、変だろ?
 無関心な様子をしていて、ちゃっかり聞いていたらしい。濃すぎる俺の周囲のキャラクターに、俺はもう少し慣れなければならないな…そう思った。
 俺の唯一の特徴である眼鏡を押し上げながら。

     


 授業終了のチャイムがなり、教室内の空気が騒がしくなりはじめる。
 するとヤマが勢い良く立ちあがった。
「うー!お腹すいたー!やっと昼飯だぜ。おい、はやく購買行こうぜ」
「おー。でも信男もいいか?今日」
 俺がそういうと、ちょうど信男が、ぬっと背後に現れた。
「……!?」
 さっきまで伸びをしていたヤマの呑気な顔が歪む。男にしては可愛らしい顔がだいなしである。
 だらだらと汗をかき、ヤマは動かない。その怯えている姿を、興味があるのかないのか分からない顔で信男がじっと見ていた。そして視線にやられてさらに動かなくなる。
「信男、そのへんにしてやれ…」
「……」
 見かねて俺が止めると、一瞬だけ信男の口端がにやりとしたのが見えた。
 こいつ、確信犯かよ。
 どうやら信男はヤマが嫌いではないらしい。どうでもいいけどお前、それじゃヤマに怯えられっぱなしになるぜ…。

 いやがるヤマと俺と信男の三人で購買へ向かい、無事弁当やらパンを買い終えた。
 そしていつもヤマと俺が昼を食っている、屋上へ向かった。

 サビついたドアを開ける。寒くなってきた季節、屋上には人気は少ない。
 しかしそこには、仁王立ちという恰好で巨乳女が待っていた。
「お前は呼んでないんですが」
「うるっさいわ!こっちは聞きたいことが山ほどあるのよ!!」
 片手に手作り弁当を振り回し、無駄にでかい胸を揺らし、俺に訴えてくる。悪いが、そんなに揺らしても俺は巨乳は好みじゃねーんだよ。
「もう言う事なんかねーよ」
「ホラ、弱点とかあるでしょう?!その鳴子さんとやら!」
「弱点知ってどうすんだよ…倒すのか?つーか昨日あったばかりなんだから俺が知るわけねーじゃん」
「役に立たないわね…。そうだ、私今度麦の家行くから!!その女、絶対拝んでやる」
 勘弁してくれよ!
 俺がウンザリしていると、ヤマが俺の後ろからニョキッと出てきた。
「何でトーコまでいんだよ!巨乳馬鹿女!!帰れ!」
 ヤマも信男のせいで気が立ってるらしく豚だのシネだのやり始めるが、橙子に「チビロはひっこんでろッ」と言われ、また顔を真っ赤にして罵詈雑言吐き散らし始めた。ヤマチヒロはチビだった。
 そんなことはお構いなしに、さっさと腰を落ち着かせながら、信男は何とはなしに言う。
「で…、娘の琴美って?」
 牛肉と豚肉しかのってないという購買で人気の牛豚弁当を早々に箸をつけている。タレがいい味なんだよな、これ。
 ボーズ頭を上から見下ろしてしゃべるのも何だ、ということで、俺も腰を降ろした。
「うん、イッコ年上で、凄く美人なんだけどさ、何か無表情で笑わない。けどさ、何か…オタクらしいんだよなーIROHAの漫画が部屋にあったぜ」
「うっわぁ…腐女子とかとは違ってかなり男性的なオタクだなそりゃ!トーコ並じゃん」
 ヤマ達も口論を止めて近くに腰を下ろし会話に加わった。
「はああ?私はあんた達が読むようなエロ漫画は読まないわよ!私が読むのは手塚とか…深い漫画よ!」
「うっせー!エロゲは深いっつーの!エロゲの音楽なんか最近はなー!」
 相手をしていたらまた妙な話に脱線しまくるので、俺は軌道修正のため無視した。
「まあ、かなり変な人だよ」
 無駄にもめる二人は物凄い早い切り替えでふーんと俺に頷く。
 なんなんだろうなこの二人は…。意外と俺の話は聞くんだよ。俺のこと好きなのかね。
 そんなことを考え、俺があきれていると、ヤマが「でもさ」と言いだした。

「その琴美ちゃんって、ムギからするとどういう立場だ?おかしくね?」

 ヤマが首を傾げて言うのを観て俺は、ああそういえばと思った。
 琴美さんはお姉ちゃんって呼んでいいよ、などと言っていたが、親の再婚相手じゃなくて、兄の結婚相手、の、娘…。あれ?
 それって…

「姪だな」
 ぼそりと信男。

「で、ソルト。お前は叔父さん」


/(^o^)\


 こ の 歳 で 叔 父 さ ん 

 俺が一瞬唖然としていると、横にいたトーコが吹きだした。
「キャハハ!年下の叔父さんと年上の姪とか聞いた事なーい!」
 うけるんですけど~などと、頭の悪い女子まるだしで腹を抱えて大笑いをする。
 …俺は笑えなかった。昨日のうちに気付かなかった俺も俺だが。
 姉と弟という認識だったのだ。なのに叔父(15)と姪(16)って何か可笑しくないか?

「うわ…なんだこの違和感…気持ち悪いな」
「ま、気にすることでもないんじゃね?イトコと住んでると思えば」
「ああ。だよなあ」
 イトコ、親戚という感じだよな。全く血がつながってないという意味で。
 姪だなんて言うから変なんだよ。うん。
「でもさー!そのうち気にしなくちゃいけなくなったりして!」
 妙にテンションを上げて橙子が言う。意味が分からない。
「は?何で」
「だってさ、同年代の女の子と同居なのよ?!しかも可愛いときたら健康男子なら好きになっちゃうこともあるでしょ」
「うっひゃあマジでーー?!叔父と姪とかそれなんてエロゲ!ってそんなエロゲねーか」
「ちょ、ちょっと待て。それは絶対ねーよ!まあ俺も一瞬考えたような気もするが、あの人の変人っぷりをみたらそんな気ぜってー起きないぜ!しかも俺、家じゃおさんどんなんだぜ?!」

 家政婦みてえなもんだぜ俺は。

 またまた照れちゃってえ、などと言い、橙子もヤマも、嬉しそうに笑いを堪えている。おまえら仲いいのか悪いのかはっきりしろ。
 くすくすと笑う二人を見て、俺は、あ、と思った。今、「俺は家じゃおさんどん」と言ったのに、橙子は鳴子さんが家事できないってことは気付いていないようだ。
 おさんどんって意味分かんなかったのか?まあラッキーだったが。鳴子さんの弱点は家事が出来ない事だな、そういえば。あぶなかった。橙子がコレに気付けば何を言い出すか分からない。
「はあ」
 一人で安心し、疲れて溜息をつきながら、ふと信男をみた。
 騒ぐ俺たちを気にせず、もくもくと飯を食っている。
 相変わらずマイペースだ。その精神、俺に分けてくれないか。
 信男は、俺が見ているのに気付いたのか、ふいに俺を三白眼で見つめ、そして真顔で言った。


「この世には人が抵抗しても抵抗しきれない波というものが存在する」


 それこないだ俺が貸した漫画『泣かないで葵ちゃん』の師匠のセリフやんけ…。
 めんどくさくて突っ込む気にはなれなかったが、まあ、俺にはピッタリの言葉のような気がして、俺は苦笑した。

       

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Neetsha