Neetel Inside 文芸新都
表紙

オレとティンコ
我輩はオタクである

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我輩はオタクでござる。まだ友達は居ないでござる。生まれてこの方、出来た事がないでござる。
しかし、悲しいと思った事はありませぬ。人は一人で生きていける、そう教えてくださったのは、
数年前の我が父上と母上である。

「祐一!いい加減に働け!俺達に頼るな!一人で生きていくんだ!」
「祐ちゃん………あのね、私達、祐ちゃんが一人で頑張るのも、
 これからの祐ちゃんの為だと思うの………決して邪魔とかじゃないのよ」

グサリときたでござる。アイスソード並に何をするきさまらーでござる。
我輩は、このコンビニで暇なレジ係をする日々を、その時から始めました。
四畳一間の寂しい和室で暑さ寒さを凌ぎ、何とか数年間、生きれたでござる。
しかし我輩も、人の子なれば、そのような事を出来た事が嬉しく思うのであった。
これでやっと父母に迷惑をかけずに生きていける………そうだ、電話をしようぞ。
そう思ったら着信拒否だったでござる。世間は本当に冷たいでござる。

ところで、我輩の趣味は人間観察でござる。人を見て、その人がどの様に生きていくのか。
高尚で難解な趣味でござるが、我輩の様な知的な者には似合うそれでござる。
そして今日も、その趣味をレジ係の合間に行おうと思い、辺りを見るでござる。
何とも奇妙な輩が居るでござる。
全顔ヘルメット、ちまたでは「ふるふぇいすな」どと言うらしいでござる。
我輩とて、バイクに乗った事はあるでござる。無免許でござったなあ。
マフラーが凄い強くて、フレームがピッシピシの、赤い奴でござったあ。
それで音がブルルンブルルンと鳴れば、「やれ赤い疾風」と呼ばれたのもであった。
しかしネットでこの話をしても、誰も信じてくださらぬ。なぜ信じてくださらぬ!
嘘では無い!嘘では無いぞ!あの馬鹿者めが!我輩を厨房などと!厨房などと!

「おいてめえ!さっさと金出せってんだよ!ブっ殺すぞコラァ!」

目の前の、ふるふぇいす、とやらが何やら出刃包丁を持っているでござる。
どうやら、金を出さないと、我輩を殺すと言っているらしい。

………我輩を殺す?

ぴ、ぴぎゃああああ!

「ぴ、ぴぎゃあああ!」
「ひっ、き、きもちわるい!」

ぴぎゃ!ぴぎゃ!ぴぎゃああああん!あんあんあん!

「ぴぎゃ!ぴぎゃ!ぴぎゃああああん!あんあんあん!」
「よ、寄るな化け物!う、うぎゃあああああああ!」



紅色サイレンが鳴るでござる。
我輩はオタクでござる。気づけば犯人は逮捕されたでござる。
しかしなぜか店内に居た女子供は泣き疲れた顔をしており、
我輩をほぼ無視していた同僚も、畏怖の目でコチラを見てるでござる。
何が起こったか解らないでござるが………我輩はまだオタクであった。

       

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