Neetel Inside 文芸新都
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Dis/Fis/As/C

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●Dis

 僕の体は被害者の体。
 僕の腕は加害者の腕。

「潔?」
 名前を呼ばれたことに気がついてゆっくり目を開けると、白い天井を背景にぼんやりと見慣れた顔が浮かんだ。
「ねえ、どう?痛い?」
 小夜はにこにこしながら僕を見ていた。
「ううん、痛くないよ」
「じゃあだるい?」
「そうかも」
「あはっ、そっかあ」
 愉快に笑う小夜の顔に手を添えると、冷え切った心が少しずつ生気を取り戻してくるのが感じられた。
「なにしてたんだっけ」
「うん、一緒にこれ飲んだよ」
 小夜の白い手に握られた尋常ではない数の錠剤を見て、思い出す。
「風邪薬を一気に飲むと死ぬかどうかを試したんだよ」
「なんで君はそんなに平然としてるんだ」
「怖くてすぐ吐き出しちゃったんだ」
「僕だけ真に受けてほんとに全部飲んだのか」
「そうみたい」
「はあ」
 小夜はまたひとつひとつ錠剤を開け始めた。
「潔がいけないんだよ、本気にして飲むから」
「だって君が一緒に飲もうって言ったんじゃないか」
「僕のせいかな?」
「……そうじゃなくて」
 言葉を濁して視線を小夜からずらすと、プリーツスカートから白い太股が覗いているのが見えた。
「ねえ、潔のそういうとこ、好きだよ」
 そう一言、顔に小夜の長い髪の毛がかかったと思うと唇と唇が触れた。いつ口に含んだのか、唾液で少し粉っぽくなった風邪薬が一度に何粒も口移しされた。顎に触れる小夜の細い十本の指がなんだかすごく愛しかった。腕を小夜の体に回すと意識がぷっつりと切れた。

     

●Fis





























壊れた君をね、
僕が綺麗に食べつくしてあげる。
誰か止めてあげて、あの子のスーサイド。

     

●As

 苦しかった。
 全部嘘だった。
 言葉も、聞こえてるものも、見えてるものも、世界は全て嘘だった。

 知らなかった。生きていることがこんなに苦しいものだなんて。

 でも、××だけは私に嘘をつかなかった。
 ペンが潰れたときも、私の手首が潰れたときも、いつも変わらずにそこにいた。
 鮮やかな××だけは私を裏切らなかった。

 しかし同時に、私をいつも縛り付けた。この世界に私を縛り付けた。
 鮮やかすぎて苦しかった。
 鮮やかな××。同時に、汚い××。

 私を解放して。

     

●C



透明な七月

落としたまま

見えなくなって

紫の僕の指先で

すくいあげたものは

紛れも無い白

くちづけて

噛み切った

狂ってしまったきみの

小さな悲鳴を

握り潰した

藍色の八月

       

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茶子 [website] 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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