Neetel Inside 文芸新都
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神様ゲーム
第一話「神様ゲーム」

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第一話「神様ゲーム」-1-
 食パンを口に銜えながらテレビの電源を点け、まだ覚めない頭を起こそうと必死になって
ついていたニュースに頭をやる暗嚇 乃亞(あんかく のあ)。
 ニュースは朝の目覚めには気分が悪くなりそうなものだった。
『昨夜未明新都社市新都社高校で、2体目と思われる謎の死体が発見されました。』
 報道されていたのは乃亞の通う高校の新都社高校だった。
「ん!ここってうちの高校じゃん」
 気付いた乃亞は、驚いたと言うより、少し引き気味だった。自分の高校で死体など発見さ
れて興奮するものなど居ないはずである。
『被害者は新都社高校の1年4組「     」さんです。遺体には目がなく、調べによりま
すと脳と臓器も無かったそうです』
 ゾクッ
 当然そんなニュースを、しかも自分の高校の事で教えられては、気分が悪くなって当然で
ある。
 少し身震いをさせながらもテレビの電源を消し、すぐ近くにおいてあったスクールバッグ
を背負った。
「やだねー、全く悪趣味な奴がいたもんだ・・・」
 そう言いながら家を出、ドアの鍵を閉めた。
 ガチャ
 鍵を閉め、玄関から離れていったのを確認したのか、階段のあるドア越しに隠れていた謎
の男が姿を現す。
 その謎の男は、乃亞に気付かれないような怪しい行動をとっていた。
 姿は、顔以外の全身が隠れるほどのマントを着込むという奇抜なもので、髪は白髪で、右
半分の下が黒の片目が隠れるほどの長さという、兎に角謎だらけの男だった。
 そんな男に見られていることも知らずに乃亞は学校へと向かった。

     

ガラガラ
 今朝の気味の悪さを引きずりながらも、乃亞は1年2組の教室の前のドアを開けた。
 席が窓側の、教卓から見て手前から2列目のため、毎回入る時は前のドアなのだ。
 入った途端、国語のスピーチで教卓に立ったときのような緊張感が乃亞を襲った。生徒全
員が着席し、こちらを見ている。そして担任の教師も、今にも怒鳴りそうな表情でこちらを
見ていた。
 既に最初のホームルームが始まっていたのだ。
「え?・・・なんで筋肉馬鹿が?」
 時間を間違えて遅刻していることに気付いていないのか、担任の先生が居る事に疑問を持
ち、ついうっかりと生徒達が勝手に付けた先生のあだ名を言ってしまった。
 先生は体育の教師なのか体型はしっかりとしていて、熱血タイプのようだ。『筋肉馬鹿』
と言うあだ名をつけられても仕方がない。
 それに、季節は夏であるが、扇風機のおかげで涼しくなっている教室で一人だけシャツを
濡らすほどの汗をかいている。
 乃亞の腕の倍はありそうな太さの腕で、先生は乃亞の胸ぐらをつかみ、頭の上を拳で回す
ように摩擦をかけた。
「あぁっいででっ」
「今何時だと思ってる?」
 拳を頭の上で回しながら、まだ、優しい口調で先生は乃亞に質問した。
「っえと・・・俺の計算だとっまだ8時15分位のはずじゃっ!」
「お前は算数も出来んのかっこれは遅刻の分!これは人を変なあだ名で呼んだ分じゃ!!」
 そう言いながら、手の力が段々と強くなっていった。
 それを見ていた生徒達は、笑うと言うよりも、乃亞を心配しているように見えた。中には
自分の頭のてっぺんを押さえて痛そうにしているものもいた。
「ぐわぁ!ゆっ許してぇー!」
「反省したのならさっさと席に着かんかい!」
「はっはいっすみませんでした・・・・」
 先生に言われ乃亞は急ぐように席に向かった。
 ガラッ
 席に着き自分の頭を摩った。頭は、煙が出ている・・・・かのように酷いことになってい
る。
「ってぇ~」
 隣の女子からはからかわれるかのように笑われていた。
 そんな時後ろから小さな声で男子の声がかかった。
「おいっ頭から血ぃ出てねぇか?」
 からかう様に言った声の主は、希海の席のすぐ後ろに居た『佐藤 秋都(さとう あきと)
』だった。
「出てるわけねぇだろ!ちょっと髪薄くなったかも知れねぇけどなっ」
 そう笑いながら乃亞は言った。
 乃亞と秋都は中学校からの親友の仲である。
 秋都は人気者で友達は多い方だが、乃亞は友達が少なく、本音で話し合えるのは、秋都位
なのである。
 後ろを向いていた乃亞が体勢を変え、教卓の方へ向いた時、先生は普段には見せない真剣
な顔をしていた。
「・・・皆今朝のニュースを見ている奴は知っていると思うが・・・昨日この学校で生徒が
 一人亡くなっている」
 普通なら、ニュースを見ているものなら学校へ来てまずこのことを話すだろう、ニュース
を見ていなくとも、先生からそんな事を言われて驚かないものは居ないはずだ。しかし生徒
の誰一人として驚くそぶりも見せず、学校へ来て誰もこの事に対して触れようとはしなかっ
た。
 取り上げられていた、事件かも分からない『謎の死体』の被害者は、同じクラスの生徒か
ら酷い虐めを受けていた。この話をされて誰もが驚かなかったのは、被害者になっていた
生徒に関心が無かったからなのであろう。
「事故であれば犯人がうろついている場合がある・・・だからとりあえずお前等は帰れ」
「だってよ」
 秋都が乃亞に言った。
「んだよぉ・・・今日の水泳の授業楽しみにしてたのに・・・」
 少し顔を赤くしながらそんな事を言った。
「あれ?今日男子は体育館で器械じゃなかったっけ?・・・さてはお前っ女子の水着姿を覗
 こうしたな?」
 3時間目にあった体育は、男子は体育館で器械、女子は水泳のはずだった。
 男子なら誰もが興味のあることである。覗くものがいてもおかしくは無い。
「ばっばれたかっ」
 キーンコーンカーンコーン
 乃亞が言った途端、ホームルームの終わりのチャイムが廊下に鳴り響いた。
 それと同時に生徒達は帰りの準備をする事も無く、早々と帰っていった。

       

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