妄想ハニー
残党編-08【ダニー・ゴー】
正午に差し掛かる少し前、駅前のロータリーに集合。
というのが、約束だった。
俺の荷物はスティックにMDウォークマン、あとこないだ赤井楽器で買った4000円のペダル。
ギターだのベースだのに比べると、実にお手軽な装備だ。
チバとユゲは、チバの車で来るらしい。
下宿組の俺やトーヤと違い、奴らは家が遠いからその方が荷物運びが楽なのだ。
チバの服装は、今日はコ●サのナルシスト系のやつだった。
Yシャツに花柄の紋様を象った、買うのに色んな意味で勇気のいるやつだ。
ユゲの服は普通にユニクロのTシャツとジーンズか。
まぁ、ここでB系とかいう血迷った服装をしてこられるよりは無難なセレクトと言える。
そして、案の定トーヤは遅刻だった。
それを見越して、俺達は集合を一時間半前にしたのだ。
結果的に、それは正解だったと言える。
結局、約束の時間の30分後にセイモア・ダンカンのプレシジョン・ベースを抱えて現れたトーヤは、やけにゲッソリしていた。
まさかと思うが―――――
しかし、確信にも似た思いで、俺はそれを口にした。
「お前、まさか昨日の夜、自家発電したんじゃあ……?」
「あー、いや、我慢はしたで? いつも三回のとこを、昨日は二回に押さえたし」
「死ね、お前! ライブ前のオナニーは控えろってアレ程言っただろ!!」
「しゃあないやろ。 『怒りオヤジ3』で及川奈央のチチ見とったら、ムラムラしてまったんや。 俺、睡眠は我慢出来ても、オナニーは我慢できひんし」
予想通りとはいえ、さすが生粋のオナニスト。 クズ過ぎる。
そして、やっぱり服装はいつもの青のジャージだった。
多分、寝起きで着替えるのが面倒くさくてそのまま来たのだろう。
とりあえず、メンツは集まったので、俺達はコンビニでドリンクを買ってから目的地に向かう事にした。
ライヴハウスの前にはもう人だかりが出来ていた。
この間の閑散とした雰囲気とは熱気が違う。
時間的にまだたっぷり余裕があるので、観客ではなく、スタッフと出演者だろう。
それでも、三十人ぐらいはいる。
さすが、『マジック・マッシュルーム』の主催だ。
俺は、心臓が高鳴りだすのを感じていた。
『イスカンダル』の入り口の前には、もうブッキングが張り出されていた。
【Opening Act】ZAN党 17:00~
【2】 自爆マシーン 17:30~
【3】女郎花 18:00~
【4】アナボリック・ステロイド 18:30~
【Final Stage】マジック・マッシュルーム 19:30~
『ZAN党』も大概なネーミングだが、馬鹿なバンド名がウチだけじゃなくて安心した。
『自爆マシーン』とかどんな腐ったバンド名なんだ。
多分、ウチよりは上手いと思うが。
最初の3バンドが持ち時間30分、トリとトリ前だけが一時間という具合か。
出演者の中には、大学生や社会人っぽい顔もちらほら見える。
その中には、もちろん『アナボリック・ステロイド』のメンバーの顔もあった。
さすがに奴らは場慣れしてるようで、そうした大人達の中にいても臆さず堂々としていた。
少しして、アキラがこちらに気づいたようだった。
何かしら伝える為か、こちらに駆け寄ってくる。
「よぅ、早かったな。 緊張してる?」
「いや、全然」
俺は虚勢を張って言った。
舐められたら、負けだ。
「なら良かった。 リハーサルは逆リハだから、ZAN党のリハーサルが一番最後になるよ。 各パートのモニター(スピーカー)の返しを聴かなきゃいけないんで、適当に二、三曲やって欲しい」
「逆……リハ?」
要するに、本番の演奏順とは真逆の順序でリハーサルをするという事だ。
本番の流れと逆にリハーサルを行うことで、リハーサル終了時にはオープニング時のセッティングになっていて、時間のロスを軽減できるというメリットがある。
俺が聞き返したのは、その意味が分からなかったからでなく、確実に俺達より上手いであろう面子の後に演奏をする、という事であった。
ライヴが観客への顔見せなら、リハーサルは同じ演奏陣への顔見せだ。
いわば、ボクシングのオープニング・パンチと同じ意味合いを持つ。
初陣を切ればインパクトで勝負する事も出来ただろうが、レベルの違う演奏を見た後ではそれも出来ない。
サーロインステーキを食べた後にスジ肉の煮込みを食べるようなもんだ。
俺達の印象はかなり悪いものになる。
しかし、それを今更どうこう言っても始まらない。
「二、三曲か……。 どうするかな」
俺はチバ達の方を仰いだ。
「『カタストロフィー』は外そうぜ。 何もわざわざ連中に切り札を見せてやる事はない」
「俺もそう思う。 音の返しを聴く為だったら、適当に各パートのソロがある曲をやればいいんだ」
そういう訳で、リハの曲は、2年前からやり込んできた安定感のある二曲に決まった。
楽屋はかなり狭かった。
出演者だけでも二十人以上いるのに、控え室は高校の教室よりも少し手狭なぐらいのスペースしかない。
ここにさらに十何本かの弦楽器や太鼓やキーボードを置いたら、本当にゴミ置き場のような猥雑さになるだろう。
学園祭の時は、体育館がそのまま楽屋となっていたので不自由は感じなかったが、外の箱は勝手が違う。
こんな中にケースに入ったギターを置いたら、どれが自分のヤツか分からなくなりそうだ。
そんな中に、ひと際目立つけばけばしい装丁の集団が目立った。
原色系の派手な髪の色に、ペンキを服に塗りたくって安全ピンをバスバス刺しまくったゴシック・ファッション。
その佇まいは、昨夜会ったユラを彷彿させる。
そんな奴らが、五人もいた。
奴らが『自爆マシーン』とかいう腐ったバンド名な訳がないから、間違いない。
あの集団が『女郎花』だろう。
「なんて読むんや、このバンド名? ジョロウバナ?」
I.Q一桁のサルがさっそく頭の悪さを発揮してくれた。
「オミナエシ、だよ。 どんな花だったか忘れたけど、そんな読み方だったはず」
「もうちょい分かりやすいバンド名にしろよな。 チューリップとかペンペングサの方がよかったんじゃねぇ?」
「お……おい、聞こえるぞ」
チバの馬鹿でかい声は、当然のように向こうにも聞こえたらしく、ピエロみたいに化粧を塗りまくったもの凄い形相の五人組がこちらを睨みつけていた。
全員素顔が分からないこの光景は、ヤクザの凄味とかとは種類の違う、人外的な怖さがある。
多分それは、ゴシック・ファッションの裏側に潜んでいる、“狂気”というアンチ・テーゼのせいかもしれない。
「オイオイ、高校生。 声が大きいって。 ナルシストはバンドマンのサガだろ?」
そんな風に、婉曲表現という日本人の美徳を完全に無視したストレートな言い回しで、フリーター風の一人の男が話しかけてきた。
ぼさぼさの頭に、中年のオッサンがつけてるみたいなサスペンダーを掛けたチノパンツ。
その冴えない風体は、どことなく「探偵物語」の松田優作的な空気を醸し出している。
コイツもバンドマンなのだろうか。
「おいおい、警戒するなって。 俺も同じ出演者なんだからさ。 君達高校生って事は、『ステロイド』の繋がりなのかな? それとも、『マジック・マッシュルーム』のアイカさんの後輩?」
「あ、あの……アンタは?」
「あ、そっか。 俺は『自爆マシーン』の相沢雄一。 ユウイチでいいよ」
コイツがあの糞バンドのメンバーなのか。
この名前とコイツの風体から推測すると、コミックバンドとしか思えない。
「俺達は、『自爆マシーン』の前座の『ZAN党』です。 『ステロイド』に誘われて参加したんですけど」
「へぇ、『ステロイド』の紹介か。 なら期待できそうだなぁ。 なに、あいつら、高校生なのに、観客の盛り上げ方がその辺のバンドの比じゃないからなぁ。 俺達も喰われない様に頑張らないと」
そういってユウイチは人懐っこい笑みを浮かべた。
「これウチのバンドのCD。 良かったら聴いて見てよ」
ユウイチがバッグの中から出したCDには、福満しげゆきっぽい感じのポップなようでいて病んだ絵柄のジャケットがプリントされていた。
装丁は本格的だが、出版元のレコード会社のロゴなどが一切無いので、おそらく自主制作盤だ。
三曲入りのマキシシングルで、最初の曲名が、『やんちゃ貴族』………って、オイ。
何だこのクズい曲名は。 ラブホテルの名前だろうが。
カップリングの曲も、『ぶっ込み金次郎』とかいうスタイリッシュとは程遠い、どちらかと言えばクズ寄りな曲名だった。
異様な親近感を隠し切れない。
なんというか、このバンドはZAN党と同じタイプのバンドのような気がしてならなかった。
「へぇ、どんなジャンルの曲をやってんスか?」
「ただのJ-POPさ。 まぁ、キーボ二枚使って、ちょいと格好はつけちゃいるがね」
こんなクズい名前の曲に、キーボードを二枚も使ってるのか。
よく分からないこだわりだが、微妙にジャンルが異なる事はわかった。
弦楽器と打楽器だけの純正ロックンロールは、今、市場では下火だ。
彼らなりに大衆の好みに迎合しているのかもしれない。
「あら、ユウイチさん。 私の生徒にもCDの売り込みしてるの?」
と、隣から割って入ってくる声が一つ。
太股の付け根までカットされた大胆なジーンズに、ミリタリー柄のタンクトップ。
そのアメリカン・ファッションが包む肢体は、はちきれそうに豊満だった。
それが赤井のムスメ――――赤井カナメである事に気づくのに、またも俺は数秒を要した。
どうもこの女の変身ぶりは極端に過ぎる。
主催者の一人だけあって、ユウイチとは顔見知りのようだった。
「おお、カナメちゃん。 相変わらず、着エロ全開だね~。 普段とギャップあり過ぎだろ」
「眼鏡っ子が眼鏡取ると美人なのは世間の常識でしょ?」
「いや、アンタの場合、服とか何から全とっ替えだから。 完全に別人だから」
そう言って、ユウイチとカナメは笑い合った。
「へぇ~、じゃあ、そこのボーヤはカナメちゃんの弟子って訳だ。 期待の新鋭じゃないか。 お手柔らかに頼むぜ」
「いや、そんな事は……」
「そうね、油断してると足元を掬われかねないわよ。 知ってるでしょ? 経験と感性の容量は反比例するって」
「確かになぁ、なまじキャリアなんか積まない方が、センスに溢れた曲が出来るもんだ。 俺なんか、ははっ、一回音楽辞めて就職活動まで経験してるからなぁ。 今更メロコアなんかやってもサムいだけだから、格好つけるしかないって事よ」
「代わりに、人生の艱難辛苦を踏まえた歌詞が書けるようになったんじゃないですか?」
「馬っ鹿、お前、俺達の音源聴いてないだろう? 『やんちゃ貴族』なんてタイトルの曲の、どこに人生の艱難辛苦があると思う訳よ? 公共の電波に乗せれねぇっつーの」
「じゃあ何でそんなタイトルにしたんですか……?」
そんなんでユウイチは、カナメと二、三言葉を交わした後、どっかに行ってしまった。
「いや~、あの人、いい人なんだけど、どうにも喰えないっつーか」
「有名な人なんですか、ユウイチさんて?」
「一般人の間ではあんまり認知されてないけど、ここらのバンドマンの間じゃ有名よ。 一回、メジャーデビューまで果たしてる人だしね。 『ニトロ・グリセリン』ってバンド知ってる?」
「あ~、名前くらいは。 確か、メロコアのバンドですよね。 デビューアルバムでスマッシュ・ヒット飛ばして話題になった……」
「そう。 ユウイチさんは、そのバンドの作詞作曲を手がけるバンド・リーダーだったの。 当時は芸名を使ってたから、今と違う名前だけどね」
「へぇ、『ニトロ・グリセリン』って地元バンドだったんだ。 何かカンドーっすね。 最近あんまり見てないけど…」
「解散したのよ」
「え」
「ま、これはオフレコでね。 本人も、そこに触れるの、タブーみたいだから」
アンタが自ら言ったんだろうが。
とりあえず、赤井のムスメもその話はそこで打ち切るらしかった。
「リハーサルは落ち着いてやるといいわ。 そこでミスっても笑う人はいないし、文字通り本番の予行演習ぐらいのつもりでいればいいわよ」
リハーサルが始まる。
箱の規模で言えば、高校の体育館の半分ぐらいの大きさだろうか。
ライトアップやスモークもあり、なかなか本格的だ。
ステージの下手には、次の出演者やPAスタッフが控えている。
リハ一番手の『マジック・マッシュルーム』は3ピースなので、やけにステージが広く感じた。
レゲェダンサー風の衣装のベーシストに、ミリタリー・ファッションのギター。
そこにカナメのプレイメイツな衣装と、見た目無国籍風なバンドだ。
「リハーサル、お願いしまーす」
PAリーダーらしき人が手を挙げると同時に、赤井のムスメがカウントを始めた。
――――――――
空間が、歪曲する。
ベースって、打楽器だったっけ……?
不意に、そんな考えが頭を過ぎるような異様なベースソロが始まった。
凱旋の勝鬨のような、周囲を鼓舞するチョッパーの連打。
チョッパー奏法、海外ではスラッブ奏法と呼ばれる事が多い。
ベースの弦を引っ張り上げて打面に叩きつける事で、ドラムのようなアタック音を出す奏法だ。
ベースの初心者と中級者を隔てる、試金石のようなテクニックだ。
当然、トーヤのようなルート弾き野郎には到底不可能だ。
まさか、それを、ここまで強烈に連発できるなんて―――――
そこに、ワウ・ペダルを使った、どこか官能的なギターフレーズが入る。
音の、螺旋。 螺旋。
うねる様なチョーキングは、それ自体が生き物のようにこの空間を這い回り、オーディエンスの耳を侵食する。
文字通り、ギターが“啼いて”いる。
この瞬間、エレキギターが電気仕掛けの機械だなどと誰が信じられたか。
ネックに張られた六本の弦は、まるでそれ自体が与えられた感情の一つであるかのように嘶き、理知ある人間のみが持ち得る詩節の境地に至る。
何てバンドだ。
三つの楽器しか使っていないのに、この音の重厚さは何だ?
一章節の中に、ギターとベースとドラムを詰め込めるだけ詰め込んだような感じだ。
そしてそれは、個を主張してなおその危う過ぎる均衡を保って崩す事が無い。
三つ巴という言葉がこれほどしっくりくるバンドも無いだろう。
これがプロの実力か。
ファンク・ビート。
縦ノリの重厚なメロディーは、トリにふさわしいものだった。
リハの二曲は、あっという間に終わった。
聴いている間、完全に時間という概念が自分の中から抜け落ちていた。
それは酒精のもたらす陶酔の時間の様であり、ガンジャの煙の燻る空間のような濃密さを持っていた。
正に、忘我の境地というヤツだ。
音の旋律が、これ程までの多幸感を生むとは。
音楽というものの持つ魔力を、まざまざと見せ付けられたような気分だった。
次が、『アナボリック・ステロイド』だ。
実際、俺達は、オリジナルとしての『アナボリック・ステロイド』を聴くのは初めてだった。
一年前、学園祭で俺達が見た時は、リンプ・ビズキットのコピーバンドだったからだ。
アキラと知り合った後、俺はリンプというバンドのCDをレンタル・ショップで借りてきて聴いた。
DJサウンドやラップを取り込んだ、極悪なサウンドが印象的なミクスチャーバンドだった。
ヴォーカルのリュウジのイメージ、そのままだ。
アキラ、エノケン、ジャガーの三人がセッティングしている中、リュウジはずっとこっちを見てニヤニヤしていた。
正直、ウザい。
そんな感情とは裏腹に、俺は心臓が高鳴るのを感じていた。
ようやく、目にするのだ。 ステロイドの演奏を。
この一週間、ずっと夢想して追い続けてきた、アキラのドラム。
それが、バンドとして合わさる所を、ようやく見る事が出来る。
これで緊張するなという方が無理というものだ。
「まぁ、与党どものお手並み拝見と行こうか」
チバだけが、やけに大物面をしていた。
PAリーダーが手を挙げると、BGMとして流れていたSEが徐々に高潮してゆき、やがてぷっつりと途切れて静まり返った。
一瞬の沈黙。
しかしそれは、導火線に着火する前の爆弾のような、刹那の間隙に過ぎなかった。
―――――――瞬間。
滝のような音の奔流が、ノーカウントで溢れ出した。
リュウジの、凶悪なデス声ラップ。
ジャガーの、文字通り切り刻むようなカッティング。
エノケンの、削岩機のようなチョッパー。
アキラの、破砕槌のようなブラスト・ビート。
暴。 暴。 暴。 暴。
そのビートは、聴く者の獣的な本性を抉らずには居られない。
誰だって、この音楽を聴けば暴れだしたくなるだろう。
その全てが鮮烈で、その全てが『マジック・マッシュルーム』とは対照的だった。
『マジック・マッシュルーム』の音楽が“陽”なら、『アナボリック・ステロイド』は“陰”だ。
歌詞に耳を凝らせば分かる。
これは、破壊と暴力の音楽なのだ。
世界を業火で焼き尽くす音楽なのだ。
音が理性を握り潰す。
音が理性を粉砕する。
踏み滲る。蹂躙する。破砕する。制覇する。
まるでこれは悪魔崇拝の儀式だ。
音楽の名を借りた虐殺、ホロコースト。
違う、と俺は思った。
違う。 これは、アキラのドラムじゃない。
こんなものがアキラのドラムであるはずがない。
昨日、赤井のムスメの言った意味が、ようやく分かったような気がした。
俺があの日、赤井楽器で聴いた音、あれこそが本当のアキラの音なんだ。
あの音は、あの日から、俺の耳について離れなかった。
俺の心を掴んで離さなかった。
それは、きっと俺の心の奥底にある希望のようなものと、共鳴し合ったからなのだ。
アキラは知ってるはずだ。
弱者が常に何を思って生きているか。
でなければ、あんな優しい音が出せるはずがないのだ。
だが、これはなんだ?
これは本当に、アキラが叩いている音なのか?
こんな、人の痛みを理解しない傲慢な略奪者のような音楽が、アキラの物なのか?
こんな、技術以外に何も無い空虚な音楽が?
おそらく、技術的には『ステロイド』は『マジック・マッシュルーム』にも比肩するだろう。
それは、『ZAN党』などが数年かかっても辿り着けない数段高みにいるのに違いない。
だが、俺はそんな万人が聴いてノレるだろうその凄まじい演奏を聴いていても、何一つ感慨が湧いてこなかった。
何故、周りの奴らが演奏に合わせて体を揺すっているのか理解できなかった。
ステージの上では、本番でもないのにリュウジが自分の世界に入って暴れ回っている。
ああ、そうか。
アイツは今、ライブという名の暴動の扇動者なのか。
アキラの表情は、ライトの照り返しで見る事が出来ない。
アキラ。 お前はその光の中で、本当に笑っているのか?
本当に笑っているのか?