夢はよく見る。
今日もまた、夢を見た。
締め切った遮光カーテンのため何時でも昼夜の判別のできない部屋で
普段どおり目覚めた僕は、微睡み、抜けきらない倦怠感と戦っている。
眠りというプールから上がったばかりのようなこの身体は、予想外の寒さに震えだし
再び掛け布を被った。そして目を瞑った。
なぜ、あの子は――
「いい加減、そのカーテンやめたら?」
気付けば朋子が戸口に立っていた。
彼女の背後から強いまっさらの陽が差し込んでいた。まるで後光じゃないか。奴は仏か?死んだのか?
「朝陽が射さないと身体が起きないでしょ?」
上半身を起こすと、再び身体が震えた。
既に制服姿の彼女がカーテンを開ける。確かに朝だ。よく晴れている。
「や、でも、ほら、俺の部屋ってさ、外の明かりが眩しくて。夜眠れないんだよ」
「まぁ、それはわかるけどさ。今日も寝坊したじゃん?」
慌てて手に取った頭上の目覚ましは、設定していた時刻を大幅に過ぎ、スヌーズも切られている。
確かに毎晩、手の届かない場所に置いておく筈なのだが
無意識というか慣れというものは恐ろしいもので、離れたところにある目覚ましだろうと
いつの間にか眠りながらでも身体が反応するようになってしまっている。
「って、またこんな時間かよ。姉ちゃん起こしてくれればいいのに」
「だーめ。いい加減ひとりで起きられるようにならないと。
私が家出たらどうするつもりなのよ。とにかく、お姉ちゃん先に行くからね?」
身を翻し、軽いシャンプーの香りを残しながら朋子は出て行った。
僕はそのまま暫く呆けていた。