Neetel Inside 文芸新都
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過去の東京
戦の終盤

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相手の殺気は凄まじく、思わずしりもちをつくほどであった。
目が怖い。
しかし目を逸らせない。目を逸らしたその瞬間に襲ってくると予想できたからだ。
まるで、剣道の先生と戦っているような感覚におちた。
どこに打っても返される、払われる、先をとられる―――。
だから待つ。待ち続ける。
間合いを詰められては困るので先に間合いを詰める。
この動作によって、相手の気配が少し変わる。
剣道二段というお金を払えば、誰でも取れるような
高校生でも、それぐらいはわかっているつもりだ。
おそらく、相手はこの少年は剣の心得を知っていると思ったのだろう。
もう動かない。
ボクも相手も。
動いたほうがやられる。映画や本でしかありえないと思ったことが、今ここで行われている。

何分経っただろう。
おそらくそう時間は経っていない。
相対性理論だ。時間の経ち方は変わるんだ。

その瞬間。大男の集団が戦場を縦横無尽に駆け抜ける。
その男は大声で「勝った!!!勝った!」と叫びながら突撃をしている。
その後ろから、その大男に負けるとも劣らない、集団が後ろに続いている。
軍勢のつけていた旗の色は朽葉色だ。
勝った!勝った!の叫び声。旗の色は朽葉色。
間違いなく、北条綱成だ。
大男が縦横無尽に勝った!勝った!と叫びながら突撃してくるのである。
敵は「負けたのか・・・。こうしてはおれん。さっさと逃げなきゃ。」
といって、士気ががたがたにおちるのは目に見えている。
味方は士気が急上昇だ。
事実、味方はものすごい勢いで敵の軍勢を打ち破り、敵方はまるで蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

しかしこの男。
動かなかった。
逆に動揺しているのはボクだった。
それでも周りの味方が相手を次々と打ち破っていく様を見ていると、やはりやる気はあがる。
そして男はやる気がおち・・・ていなかった。
むしろ、これが最後の戦いといわんばかりの覇気が満ちている。
ここでボクにも余裕が少しできた。
男がボクの後輩とまったくといっていいほどの構えを取ったのだ。
その後輩。
僕と戦ったら10回に8回は負ける。
その後輩に勝つパターンはこうだ。
お互いに面を打てる間合いまで詰めて、後輩の竹刀を打ち払いその場で踏み込む。
後輩はボクより背が低いので面をよけるので、そこを片手突きで何回後輩から一本を取ったであろう。
試合でも成功したことがあるが、強豪校と戦ったときにこの作戦は綺麗なまっすぐな同級生とは思えない剣道で
簡単に打ち破られてしまったのでもうこの技は試合では使っていない。
ここに使うべきタイミングが戻ってきた。

作戦を実行する。
すっ、と右に一歩ずれ、その瞬間に相手の刀をボクの正面から打ち払う。
案の定、男は頭を守り、そこへ片手突きが喉もとに突き刺さった。

簡単に人は死ぬ。
あれほどの殺気を放ち、二人殺した男が今は、ボクの足元でピクピクしている。
首級をあげるべく首を切ろうとするが、首を切り、腰にぶら下げると、人の首は6~7kgあるので動きは鈍る。
追撃をかけるべき迅速な行動が求められる今はこの6~7kgは二つの意味で非常に重い。
しかし目印をつけないと誰が討ち取ったかわからないので何かいいものを探していると、いい案が浮かんだ。
男の着物の前をあけ、腹に血文字を書く。
【我、討ち取ったり】
「これでよし・・・と」
そしてボクは追撃軍に加わった。


       

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