Neetel Inside 文芸新都
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過去の東京
戦の終わり9

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―――怖くて。怖くて。目を開けられなかった。
全身に血が降り注ぐのがわかった。
鉄の臭い・・・。まだ目を開けられずにいる。

二人目の相手と対峙した僕は、無様にも後ろにあった死体に気付かずに転ぶ。
という愚鈍な行為をしてしまった。
全身に纏っている血液が人の血の量をわからせる。
きっと戦場のこの草原には、何十人、何百人の血液がしみこんでいるのだろう。
何百人のうちのボクは三人に関わった。
一人は、相手が突っ込んできてので、片手で刀を突き出し、刺殺した。
二人目は、槍を投げて足に命中したのでとどめをさそうとしたらこっちがやられる羽目になった男。
三人目はボクだ。本能的に頭の上に両手を交差し守ったが、関係なしに頭までパックリ・・・

血が固まったのか、目が開けられない。
足がガクガク震えていたので、必死に止めようとした。しかしとまらない。
深呼吸する。でもとまらない。
両手を膝の上において、無理矢理とめようとした。だけど、とまらない。

あれ?手・・・?
そういえばどこも痛くない。
目の部分の血を手で拭って、目を開き辺りを見回した。
上から液体が降ってくる。
・・・血・・・?

奇跡とはまさにこの瞬間。
本物の安堵感は、いまここにある。
味方が、今まさに俺を殺そうとした男を、突き殺している。
その槍からは、血液が滴っていた。
槍を出した男は、太陽が燦然と居る中で、最も輝く金色の鎧をしている男だった。
「坊主ギリギリだったな。」
声が出ない。なのでコクコクとうなずく。
そんなボクを尻目に、たったいま殺した男の首を切る。
金色の鎧の男はもう既に4人の・・・いや、4つの方が正しいだろう。
4つの首をぶら下げていて、今殺した男で5つ目の首級なのだろう。
首を切るための刀がもう血糊で切れない。
だからのこぎりのように、グリグリ、ギリギリと殺した男の首を切っている。
その作業にボクは見ていた。
というよりは、その方向を見ながら放心状態にあった。

ふと思いつく。
この男、このくらいの豪傑なら、北条家の中でも名のあるものに違いない。
北条家じゃなく、ボクと同じような考えの人間でも、間違いなく5つの首級は大きい。
多分、北条家召抱えとなるだろう。それが妥当だ。
「あの~。北条家の人ですか?」とボク。
「いんや。ただの浪人だ。」と男の首に苦闘しながら男は答える。
「もしよければ、お名前を。」
「ん・・・。実はな・・・まだ決めてないのだ。浪人したときから他の名前にしようと思っててな。」
「・・・。ボクもです!ちょっと本名だと厳しいかなって・・・」
「お前もか!では二人で名前を決めあわないか?多分俺はこの首で北条家に仕えられるだろう。
そしたらお前を、家臣にしてやんよ。」太っ腹な男だった。
「マジですか?もう戦も終わりますし、ちょっと考えますか。」


あーでもない。こーでもないと、二人の名前を決めあぐねているうちに、北条家が勝ち鬨を上げて、勝利に酔っていた。

       

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