Neetel Inside 文芸新都
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オーバードーズ
社会科見学

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 自分には何かが足りない。
そう思えばみんなそんなもんなのだが、それが全く、一つも分からない盲目の自分がいる。
 いや、盲目じゃない。
きっと眼を背けたり、アレルギーで眼にぶつぶつが出て見えなかったり。

 ただただ考えていくうちに自分だけの禅問答へと突入する自分。
今やっている行動の思考のいっぺんすら俺には見えてないんじゃないのでしょうか?
 否、
本質的な問題、俺は世界自体が、足場自体が見えてないんだと思う。

 ……だからこんな馬鹿な事をしているのだろう、
実に情けなく思う。
 神がいるのなら神に願うのならば、
『機会』がほしい
 生まれ変わらなくてもいい。
『 』がほしい。
 ああ、実に虚しい。
嫌がる女のまたに一物をはさんでいる、ストッキングを頭にかぶった間抜けな中年のおっさんを見ながら考えることだろうか………

     

「そろそろ引き上げないと」
 どこぞの誰ともわからない、街中で拉致って河川敷の薄暗い端の下で…。最初に気の強さを見せ、激しく抵抗したものの、中肉中背のストッキングマルかぶり加齢臭男、通称ペイバッカー(本当の名は無いとの一点張りでこの名前しか知らない)のしつこい魔の手にかかり地べたに白い液をこうむりながらうなだれている女を捨て、あらかじめ近くに止めておいた白いバンに乗り込んだ。
「それにしても冬はきついな、下半身ががちがちになって凍りそうや」
 扉が閉まる音がするやいなや、エンジンから白い煙を出しながら車は何処かへと動いてゆく。

「白ーい恋人も早く凍るんちゃうんか?」
 左手でズボンを引き上げ、もう一方で前を見ながらハンドルを握るペイバッカー、一息ついて俺に声をかけ始めた。
「いや、あれは空気に接触して凍るんじゃ?」
 左手で頭を抱えながら云々と考え始める中年の男。軽くうなずいて得意げに語りだした。
「よう考えたらあれは死体になって固まるんやったな」
「ああ、そんなことを学校で教えて貰ったことが」
「そんなん学校でやるんや」
「保健って知らない?」
「しってるけど」
 おっさんは気づかないのだろうか。
「これはなんだね?」
 ペイバッカーが未だにかぶっているストッキングの足の先をぎゅっと握り締めた。
「おろろろろ、わすれとったわい」
「痴呆?」
「若年性な」
「忘れる前にそろそろナンバーの覆いも取らないと」
「ああ、そうだったな。そろそろ良い頃合か」
 河川敷を抜け出し、ちょっとした繁華街にあるビル横に作られた駐車場に車を勝手に止めた。俺は助手席から飛び出て、ナンバーを隠していた白い板を取る。
「そろそろ行こうか!」
「ふんっ!」
スポンッッ!
「はひ?」
 本当に痴呆だ……

       

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