Neetel Inside 文芸新都
表紙

るんるん☆ボーカロイド
0曲目 VOCALOID

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 自分の存在意義なんて、考えたこともなかった。
 歌うためだけに『作られた』私は、生きてはいない。命そのものがないようなものだ。

 16年、私はこの世界にいる。生まれたときから、外見は変わらないけど。
 食べたり飲んだりだってできる。もちろん、体重は増えない。ちょっと安心かなぁ、なんて。
 機械仕掛けのこの世界に疲れた人の心を、歌の力で癒す――それが私達の仕事、らしい。
 歌には自信がある。でも、なんで私達なんだろう?人間にも歌が上手な人はいるはずなのに。
 そもそも、心を癒すなんて大それたことを、その『心』があるかどうかもわからない私達に託すのは、おかしい気もする。
 でも、歌ってる間は幸せ。少なくとも、そう感じられるってことは、心があるってことなんだろうか?
 可愛い弟分と妹分達は、私に比べてよく笑う。それも、心の現われなのかもしれない。
 お兄ちゃんとお姉ちゃん――私がそう呼んでいるだけなのだが――も、好物を頬張っている時の顔ときたら、人間よりよっぽど感情豊かだ。
 ま、そういう私も、ネギをもらうとついつい頬が緩んでしまうのだけど。食べ物って偉大だと思う。
 おっと・・・。閑話休題。
 結局、存在意義なんて、考えなくてもいいかなぁ。私はそういう結論にたどり着いた。
 私がここにいて、私の歌声がこうして響いている。それを聞いている人達は、笑っている。
 それがつまり、私の見つけた答え。自分のいる意味なんて大したものじゃない、ただの結果。私はそれに満足してる。
 だから、それでいいや。
 ふと、気がついた。音楽が終わっている。もう一曲終わってしまったみたい。拍手と歓声が、私を包む。うん、正直、悪い気分じゃない。
 上手と下手の同胞達が、私を見つめる。少しだけ、笑顔で頷いてみる。意味なんてないけど。
 次のイントロが流れた。私のステージはまだ続く。まだまだ、もっともっと。

       

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