Neetel Inside 文芸新都
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ぽに☆すた
<文化祭編>第7時間目〜Memories"前編"〜

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「今日はどんなお話をしてくださるのですか?」

真っ暗闇の中、マイクによって拡張された美樹の声が響き渡る。
次は私の台詞だ……。心を静めてゆっくりと、焦らずにやればできる!

「今日は飛びっきり面白い話をお持ちいたしましたよ、姫様」

『これはある世界でのお話。まだ日本が戦国時代だった頃に似ている』

そういう切り出しでナレーションが始まる。ここで舞台の幕がゆっくりと音を立てて上がって行く。
緊張は最大まで来ていた。しかし、もう逃げ出すこともできない。腹を決めてやるのみ!

『彼女の名前はナルキア。ムルーナ国の宮廷兵である。皇女であるエミールとは、立場を超えて信頼しあっている』

「こら、ルキ。私と話すときはタメ口にしなさいって言ってるでしょう」
「エミールお嬢。我々はただの兵士なのですよ……」

スクリーンの端から現れる凛々しい男性。そう、剣崎君である。
腰には細長いレイピアが帯刀されており、いかにも兵士っぽい。
……今こんなことを思うのは不謹慎だけど、カッコイイ。

「ロアですか。今は女の子二人の話し合いだったのよ」
「それは失礼致しました。しかし、皇女様とあろう者が一兵士とそんなに仲良くされては……」
「私は皇女である前に、普通の女ですよ。お話しする友達が欲しいのですよ」

そこまで言うとロキは反論の言葉が出ないらしく、黙って出て行ってしまった。
すると、エミール皇女は目を輝かせて私に振り向いた。

「さぁ、ルキ!話をしてください」
「えっとですね、これは聞いた話なんですけど……」
「失礼します!お嬢様とナルキア殿、王様がお呼びです」

いきなり一人の兵士が現れるなり、私たちを呼びだした。

「王様がじきじきにお呼び出しだなんて……何かあったのでしょうか」
「お父様は気まぐれですから、何かまた気まぐれじゃないですか?」
「あ、そういえば前は何かラジオ体操とかでしたよね」

そんな思春期ならではの会話を交わしながら、王様の待つ間へと向かっていった。

「おぉ、きたか」

ついた途端、その場の重苦しい空気に押しつぶされそうになる。
なにやら大臣やら兵士やらがあわてている。本当に何かあったのか?

「手紙が来たそうだ」

隣にロアが居ることに気がつかなかった。短くそういうと、王様から詳しく話がある。とだけ言った。

「隣のスクーロ国からエミールへの結婚届けがきたのだ」

王様が重々しく口を開いた。その台詞は私たちにはショックが大きすぎた。
その場は凍りつき、誰も一言も発しないまま永遠とも言える時間が過ぎた。

「スクーロ国と言えば……この地域では最高の権力を誇る国ですね」

『この時代は権力こそがすべてであり、国王は娘をどの国に嫁がせるかで将来が決まると言っても過言ではない』

「でも、スクーロ国の王子は噂だとあんまりで気がよろしくないはず!」
「ナルキア、誰が聞いているか分からないからそういうことは……」

ロアにそういわれたことでやっと自分が熱くなっていることが分かった。
当の本人、エミール嬢の様子をちらと見てみた。俯いており表情は分からないが、きっと嫌だろう。

「お嬢様!」
「嫌です……そんな知らない人となんか結婚できません」
「エミール……そうか、そうだよな。権力になんてひるんではいけない!娘は渡さない!」

一気に大きな歓声が響き渡る。兵士たちは剣を振り上げて戦う気があることをアピールしている。
私は頑張ろうねといった気持ちを込めてロキの方を向いた。
すると、一瞬だがロキの表情が暗かった。次の瞬間には、笑顔に変わっていた……。見間違えかな。

「王様!我々、兵士隊がお嬢様をお守りいたします。例え、この命が果てようとも!」
「ルキ……」

私のことを心配そうに見つめるエミールお嬢様の姿を、私は見逃さなかった。
そして、深刻そうに顔を曇らせているロアも。

       

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