Neetel Inside 文芸新都
表紙

asym
窓ガラスの笑顔

見開き   最大化      

僕の世界はたった六畳半だった
狂ったかのように毎日同じ壁を見つめる
見つめすぎて穴が開けばどれだけいいだろう。

僕は何も知らない、光が煩わしくて、知ろうとはしなかった
睡魔すらいなくなった世界で、僕は目を瞑った。
羊すらいなかった



風が頬を撫でた
僕は驚いて上半身を起こした。
光が僕を射している。照らしている。眩しくて、気持ちが悪い光。
埃が舞っていた。僕は口に手を当てる。

――窓を、カーテンを閉めよう

僕は立ち上がる
眩暈
僕は尻餅をつく

思わず笑ってしまった。
どうしようもなくダメな奴だ。ダメな奴なのに。
この僕を嘲笑ってくれる人は、誰もいない。

光に溢れる外界を見つめる。
きっと、僕が見つめすぎて開いた穴
僕の思考は逆行していく。
六畳半の世界だなんて、なんて都合のいい比喩だろう。

外に出たい。
歩きたい、空気を吸いたい。

バツンッ

バツンッ

バツンッ

世界は暗転した。笑顔の生首が重なって近づいてくる
近すぎて、生首は僕の顔に埋まった
息が出来ない
悪夢だろうか、だとしたらいつから見てる?
寒気がした、全身を撫でるような寒気

身震いと共に、僕の目は全開した
掛け布団をしっかりと握り締め、くの字に折れた身体は硬直していた。
首だけを動かして、六畳半の世界を見渡した
青白い世界に、青白いカーテン

ああ、宇宙は今、朝なんだ
ゆっくりと身体をほぐしていく、パキパキと乾いた音が鳴り、やがて止まった
布の擦れ合う音が、僕が立ち上がる音だ

僕は立ち上がる
眩暈
しかし倒れない、僕はあのカーテンを開く。
頭を押さえながら歩み、そしてカーテンを両の手でしっかりと掴む

勢いよく開けると、そこには窓ガラスに映った笑顔があった
僕はその笑顔と額を合わせると、
声を出さず泣いた。一緒に。

       

表紙

post 先生に励ましのお便りを送ろう!!

〒みんなの感想を読む

Tweet

Neetsha