日陰者の詩
まとめて読む
幼馴染の暴走女は性格を度外視すりゃ随分な美少女だ、性格を度外視すりゃすっぴんでテレビの生中継にだって出せる。
聞いた話じゃ校内にちょっとしたファンクラブまで設立されているらしい。
クラス委員長のメガネは、その瓶底メガネちょいと外せば文句無しの大和撫子に変身する。
メガネを取ったら美人なんて、今時マンガでも珍しい特徴の大人しい娘だ。
最近親しくなった先輩は、去年一昨年と文化祭で『ミス・日高』に選ばれている。
一つ違いとは思えない落ち着きと、面倒見の良い性格がその美貌と相俟って、男女問わず人気が高い。
他にも最近、元気っ子の後輩から何故か通学しているアンドロイドの女の子なんかとも一緒に行動することが多くなっている。
こちらの方はまだ、お互い言葉のやり取りが少ないせいか警戒されているみたいだけどな。
この通り俺の周りには美少女が多い、自慢するわけじゃないぞ。 自慢だけどな。
彼女等に比べれば、ブラウン管の中で歌っているアイドルなんてワゴンセールされても適わないだろう。
そんな美少女達に囲まれた俺の青春は、なんと輝かしいことか。
その辺りに溢れている、女ッ気皆無の毒男達に比べて、なんと恵まれていることだろう。
そうたとえ俺の存在が刺身に添えられるツマのようなものだとしても。
鯛を釣り上げる為のエビ的な存在だったとしても。
幸せなはずだ。 きっとそのはずだ。
……あぁ、もう一人紹介する奴がいた。
勘違いの無いように言っておくと、今から紹介するのは男だ。
顔は良い。 とはいっても俺ほどじゃない。
頭は悪い。 これは試験の追試なんかでは、ほぼ間違いなく俺と机を並べているので間違いないだろう。
しかし運動のできはいい。 得に授業の柔道なんかじゃ、あいつが背中をついたとこなんて見たことが無い。
うん、割と普通の奴だ。 なんとなくマイナスイオン出していそうな奴ではあるけど。
しかし、どういった事情か前述の美少女達は揃ってこいつにイかれているらしい。
……底引き網かっつーの。
俺の知り合いで美人は大概こいつに参っているのはどういう理屈だ。 妙なフェロモンでも出ているんじゃないかと最近疑っている。
こいつがもし嫌な奴なら、学校中にある事無いこと噂流してすっきりもできるんだが。
……困ったことに本人悪い奴ではない、というか世の中二つに分ければ間違いなく良い奴グループに入るだろう。
おまけに俺と馬が合う、一緒にいると正直楽しい。
そいつの名前は向日 祐。 俺は向日葵みたいな笑い方をするそいつの親友で、日陰者だ。