Neetel Inside ニートノベル
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Cyborg Neet
第十四話『the end』

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そいつは、どっからどう見ても奇妙な奴だった。

例えるならば、いや、一目で見て何だ、この“忍者”は?

と俺は思った。

時代劇の忍者とは違って見えるが、柿色で統一された野良着に、
背中に何か剣のような物の柄が見え、何かを背負っているのが分かる。

腰にも、二振りの背中の刀よりは少しばかり短い脇差を下げていた。

そして、武士等の兜についている鬼の様な面を顔に嵌めて“怪人”は其処にいた。

――――こいつが、例の“ナイト”って奴なのか?

「こちら図師! 目の前に怪し―――!?」

右手に持った無線機に向かって、大声で叫ぼうとすると、
自分のすぐ目の前へと黒色の鉄球が飛んできたのが分かった。

視界には、黒色の鉄球。 その後ろに此方へ駆けてくる怪人が見えた。

俺の直感が、その黒色の鉄球を【危険】だと判断する。

「っだらぁっ!!」

目の前で地面へと落ちて行く黒色の鉄球へと駆け、右足で蹴り放つ。

蹴り放たれた黒色の鉄球は、駆けて来る怪人の横を勢いよく通り過ぎ
数秒経った所で、轟音を館中に響かせて爆発した。

直後、仄黄色い薄明かりでぼんやりと照らされ続けていた通路を閃光が
真っ白に染めていく。

「―――――クッ!?」

その閃光が遠目にだが、もろに目に入る。

目元を押さえ、少しばかりふらついて思案する。

・・・・・・・・・・・これが、閃光音響手榴弾って奴か!?

「ほう。今のに反応した事にはなかなかやると評価してやるが――――」

斜め横から中空に跳躍するような物音が聞こえる。

「所詮はアワレな貧弱一般人 どちらにしろもう勝負ついてるから」

それに数秒遅れて、何かが振り下ろされる音が続いた。

恐らく、振り下ろしたのは背中に背負っていた“何か”

聞こえた音は、たったそれだけだったが自身の無意識の底に
セットされてある警戒信号が作動するには充分だった。

左腕を上げ、自身の命を刈り取りに来た“刃”を受け止める。

「――――つれねぇな。」

ギン、と勢いよく金属音が鳴り響く。

「ッ!?」

剣を下に振り下ろしたままの状態で怪人は、新人の左腕に支えられてるかの様に
宙に浮き続けている。

相手から驚きが生まれるのが分かった。

そりゃ、当然だ。・・・・・・・間違っちゃいない。

「始まったばっかだ。
もうちょっと、ゆっくりしていってくれてもいいだろッ!?」

左腕に力を籠めて、勢いよく後方へ刃ごと怪人を吹き飛ばす。

蹴り飛ばしたのが正解だったのだろうか。
幸いな事に、耳はやられていないしもろに光を見た眼も
仄暗い中に透ける柿色が覚束ないが、ぼやけて見える。

・・・・・・・・・これならば、何とかなりそうだ。

「卑怯にも左腕に何か鉄板でも仕込んでいると一瞬思ったが・・・・
おいィ? 何だdおまえのそのからだ」

切り裂いた衣服から新人の左腕の皮膚が見え、血が確かに流れてるのも
見えて怪人は、対峙する人物の異様さに気づく。

「そうか分かったぞ 俺が思うにおまえは最近流行のサぃボんグとやらだろ
天から授かった肉う体を解像する何てアワレだなアワレ
サィボんグ化すれば黄金の鉄の塊であるオレに伯仲すると思った浅はかさは愚かしい」

怪人が大剣らしき物を背中へと収めて、腰に下げている脇差を抜くのが見える。

「ごちゃごちゃ、うるせぇよ。 テメェが“ナイト”って奴なんだろ。」

ぼやけて見える人影へと左腕を上段に構えを取って、返す。

「名前を尋ねるならまず自分から名乗るべきでしょう?
マジでウザイなマジでぶっ飛ばしてやるから名前いってみろよ」

構えを取る新人を尻目に、怪人は腰を低く落とし、
脇差を握った右腕を下に落とし、もう一方の脇差を握った左腕を
顔のすぐ目の前に置いた姿勢を維持して構える。

「図師、俺の名は、図師だ!馬鹿野朗ッ!!!」

「そうか おれの名は騎士に道と書いて“ナイト”と読んむ。」

言葉を交わし終えると、猫のように姿勢を低くし、さながら地面を
這うようにしてナイトが此方へ向かってきた。

その速さは、撃ち出された弾丸の如く迅疾。

「ぜってー、ちげぇだろ! その名前!!」

新人のツッコミは無視されて、目も眩むような脇差の逆袈裟斬りが放たれる。

当の新人はそれに応じて首を捻り、上体を後ろへと崩しており、
瞬きの差で、自身のすぐ上を通り抜けた脇差を見送る。

後方へと倒れながら、しっかりと人影を捕らえる。

すぐ様、次の攻撃に転じようと後ろへと倒れ込む新人に追撃の一振りが穿たれる。

だが、ナイトはそこで押し留まって後方へとバックステッポし距離をとらざるを得なかった。

この覚束ない視界の中で、新人は両足で後方に蹴ると同時に両手を後方に振上げ、
弧を描いて、両手で地面を支えながら両足で蹴りを放つという大技に出たからである。

空振りした足はブオン、という轟音と共に風車のように
後ろへと綺麗に半回転し蹴りを放った位置から少し後ろへ下がって着地した。

「見事な曲芸だと関心はするがどこもおかしくはない」

「そりゃ、どうも」

「というか死海が回復してないように振舞ってるけど間違いなくフリでしょう?それ」

ヒュっという音に続いて再び、ナイトの体が流れた。

一足で相手の間合いの中へと詰められる。

両腕に握られた脇差がどちらから放たれるかの攻撃の“合図”はない。

段々とハッキリとしてきている眼を凝らし、煌く脇差の行方を視る。

次の攻撃は突進しながらの右からの横薙ぎ。
先ほど首を逸らして避けられたのを苦慮してのことか。

「・・・・っ!」

新人の選択は、バックステップ。右からの攻撃は、受け止める事ができないからだ。

左腕で無理やりガードする事は、可能だがそうすると相手に自身の弱点が
バレてしまう。 ここは、両腕サイボーグ化されていると思わせた方がいい。

もとよりこの攻撃に対するこの構えは、刃物を持った鈴音と対峙する
時の事を想定していた戦い方であったので、予期していたこともあり、
地面を蹴ってスムーズに背後に跳躍してかわすことができた。

かなり開く距離。 だが、それに負けじとナイトはくらいついていた。

「!?」

「おまえハイスラでボコるわ」

予期していたのは新人だけではなく、ナイトもだった。

初めから見越していたかのように、ナイトの二足目は軽やか。

横に薙いだ脇差を返し、逆手に持ち替えて振りかぶる。

「クッ!」

頚動脈を狙いとして左からの斜め切り上げが放たれる。

それを受け止めた左腕に、脇差が突き刺さり再び拮抗する。

続いて、相手の右腕の脇差が同じ左方向から振るわれる

――――――かに見えたが、

「甘いなおれのついげきのグランドヴァイパでさらにダメージは加速する」

「なっ!?」

ナイトは、俺の左腕に突き刺さった脇差を握ったままの左腕の肘に
右掌でぶつけて力を加えて拮抗している左腕を無理やり伸ばし俺を後ろへとぶっ飛ばした。

そのまま力に逆らえずに飛ばされた俺は、奥の扉にぶつかって肩を打つ。

背中に強い衝撃を受けながら新人は、素直に認める。

こいつ、・・・・・・・・・・・無茶苦茶つえぇっ!!!

「――――ぐあぁっ!」

気がつけば、一つの大きなクナイが右肩を貫いて扉ごと刺さっているのが分かった。

口では、ふざけた事を先ほどから言っているがナイトの顔に当てられた
鬼面の下には眼光炯炯として獲物を求める夜行獣の其れがある事を漸く理解する。

「っ、がっ!?」

右肩を貫いているクナイを引き抜こうとするとナイトが
そのクナイに足をぶち蹴ってグリグリと踏みしめる。

痛みのお陰で視界が完璧に晴れたぜ。クソヤロウ

「御前の浅はかさは愚かしい
黄金の鉄の塊で出来た思考で9曲で再考の騎士に
雑魚いサぃボんグが勝てるわけが無いのは確定的事項」

ドクドク、と右肩から血がでていく。

――――この野朗、そこは生身の体なんだぞ・・・ッ!!

「このままバラバラに引き裂いてやってもいいんだが」

ナイトは、足をクナイから離したかと思えば、

「おれの目的はあくまでタンゲッとを殺すことだ道をあけろ!邪魔だサル!!」

「ぐあああああぁぁぁっっ!!!」

そのまま渾身の力を籠めた蹴りをクナイに放って新人ごと
河合ハルが居る扉を蹴破った。

クナイを中心に亀裂が入り、バラバラに砕け散った木材が
ゴトゴトと床に落ちると同時に俺も再びぶっ飛ばされる。

「ひっ!?」

息をきらしながら床に横たわって、右肩に突き刺さったクナイに
手をかけて部屋の様子を確認するとハルが、広い部屋の隅っこに
体を縮まらせて怯えているのが分かった。

ナイトは、同じく部屋の隅っこにいるハルを見下ろしながら
写真か何かを確認して「間違いないな」といってクナイを取り出している。

数秒後には、クナイが縮こまっているハルに向けられて投げられて
突き刺さり無残にも殺されるという光景が新人の中でイメージされた。

そうイメージした瞬間、全身の血が沸騰したような感覚を得る。

「うおおおぉぉ!!!」

我武者羅になって、新人は突き刺さったクナイを抜き取ってそのまま
ナイトへと思いっきり投げつける。

「むだだ」

だが、非情にもクナイは突き出した主人の手へと綺麗に戻り

「おまえはこいつを守れなかったおまえの負け
時既に時間切れ 英語で言うと ジ・エンド」

そのクナイをそのままヒュッとハルへと投げた。

その光景を見送りながら絶叫する新人とハル。

コマ送りで飛んでいくクナイが、新人の目に再生されていく。

時がまるで、止まっていくような錯覚に陥る。


俺の叫び声が、スロー再生で耳に聞こえる。

その止まっていく時の中で、


「ほらな、だから俺を中に入れといた方が良いって言っただろ?」


ハッキリとその一言と

―――――――――ズドン、

という一発の銃声だけが俺の耳へと“時の法則”を無視して綺麗に入ってきた。


直後、コマ送りでスロー再生されていた時が元通りになる。

キュイン、という弾丸が何かにぶつかり合った音がして
ハル目掛けて飛来していたクナイが弾かれる。

「み、みきさぁん!!」

クナイを投げ放ったナイトの背後の通路をスタスタと
ナイトに負けないレベルの変質者が右腕でクルリ、と銃を廻しながら歩いてくる。

「こういう時は、ベタだが待たしたなっ!っていうもんなんだろ?後輩」

「「もうついたのか!」「はやい!」「きた!ガンマンきた!」「メイン銃士きた!」「これで勝つる!」」

無言で近づいてくる三木さんをナイトは、睨んで警戒している。

「おい、そこの。」

――――突き出されるコルト・ガバメントの銃口。

0.45インチのACP弾がいまか、いまかと発射を待ち焦がれている。

「アンタのさっきの言葉を借りるとこれが、本当のジ・エンドだぜ?」

気がつけば、三木さんと新人にナイトは挟まれている形となっていた。


・・・・・・・・・・三木さん。

あんたを見てると本当に、救われたよ。

       

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塩田悦也 [website] 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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