エイプリルパニック
4月1日。今日、悠一はすべてを疑った。人の話もニュースも何もかもを!
この日、すべてを疑いだしたのは朝からだった。朝、ケータイを見たら何通ものメールが来ていた。その内容は彼女できたとか宝くじ当たったとかそういう物だった。
「すごいな」
そう思いながら返信した。その後、来たメールでこれはすべてが嘘だとわかった。そう、今日は4月1日エイプリルフールなのであった。
「くそっ・・・今日は4月1日だったんだ・・・。もう誰も信用しない!」
俺は血が上った頭を冷やす為に外に出ようと服に着替える。外に出ようとした時、母親が声をかける。
「あら、悠一お出かけ?昼においしい料理食べに行くけどいっしょに行く?」
どうせ、嘘だろう。母さんまで。
「いらない、食べてくれば?どうせ嘘なんだろ!」
俺は母さんを怒鳴って、外に出て行く。
くそっ・・・嘘ばっかりだ。小腹が減ったのでコンビニで何かを買う事にした。
「315円になります~」
店員がそう告げ、俺も財布から金を取ろうとした時、今日が何の日か思い出した。
「だ、騙されないぞ!うそつきめ!」
「え?」
驚いた顔をしている店員、俺はすぐにコンビニを出た。
「はぁ・・・はぁ・・・。うそつきめ・・・」
俺はぶらぶら目的もなく歩いていた。
「あ、悠一君」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
「なんだ、ゆきか」
春休みで最近会っていなかった、同じ学校の同級生であり、幼馴染のゆきだった。
「あの・・・今日用事ある?」
そんな質問をするゆき。
「別に何もない」
そう答えると笑顔で俺を見上げるユキ。
「じゃあさ、お花見でも行こうよ!」
ゆきの誘いを受け取ろうとした俺は今日が何の日か思い出した。そう、嘘なんだと・・・。幼馴染のゆきでも俺を騙して笑いものにするのか・・・。そんな虚無感が俺の頭で渦巻いた。
「花見なんて嘘だろ!?俺だって今日がエイプリルフールだってわかってるぞ!」
「え・・・。そんなつもりじゃ・・・」
ゆきは脅えながら口ずさむ。
「ゆきも俺を騙そうとしてたなんてな!」
ずっとイラついて冷静じゃなかった俺はゆきをほっといて歩き出す。ゆきは追いかけない。ずっと立ち止まっていた。
「ごめん・・・。悠一君を怒らせるつもりじゃ・・・。ただ、いっしょに遊びに行こうと思って・・・」
その小さな声は悠一には届かなかった。
俺はあの後、家に帰った。家に帰っても今日の自分の行動やゆきにした事を考えていた。
「謝ろうか・・・」
そう思い、ケータイを取ろうとしたが今は深夜の12時前だ。やっぱりやめようかとケータイを見ていた。ブーブーと振動するケータイ。
「なんだ?こんな時間に・・・」
ケータイのディスプレイを見るとそれはゆきからの電話だった。何と言えばいいかわからなかった。俺は今日ゆきに最低な事を・・・。それでも謝らないといけない!数秒考え、電話に出た。
「もしもし・・・」
「あ、悠一君・・・」
いつも通りのゆきの声だった。
「あの・・・」
「ごめん!」「ごめんなさい!」
「な、何でゆきが謝っているんだ?」
「だって・・・、今日雄一君を怒らせて・・・」
ゆきの優しさに俺は涙がぽろぽろと溢れて来た。
「俺が全部・・・悪いんだ・・・ごめん・・・」
「もう4月2日だね。悠一君、今日お花見に行きませんか?って言ったら信じてくれますか?」
昼間と同じ誘い。
「うん・・・信じるよ・・・絶対行く・・・」
「昨日の事、気にしてないよ。だから泣かないで」
ゆきは俺が泣いている事に気づいたのか、優しく言ってくれた。本当に傷ついていたのは彼女の方なんだ。俺は謝ることしかできなかった。
俺とゆきは桜がたくさん咲いている公園で花見をする約束をした。昼ごろになって俺はその公園に向かった。
「すごい桜だな・・・」
そんな事を思いながら公園を見渡すとゆきが桜の木の下で待っていた。頭の上にさくらの花びらを乗せている姿は愛らしかった。そんな事を想い、桜の木の下に向かう。
「もう遅いよ!あ・・・」
俺は無意識にゆきに抱きついた。
「ごめんな・・・そして、ありがとう・・・」
おわり