Neetel Inside 文芸新都
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裏の細道
春の歌

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春は桜の季節です。
また、出会いと別れの季節でもあります。
そんな季節をしみじみと感じられる歌を作ってみました。


【第1首】
冬の虫 死に絶えてのち 桜咲く 死屍累々の 春は来にけり

【解題】
春の訪れは、冬の死滅であります。
冬の生き物たちが抵抗むなしく命を散らした後、陽気な春が訪れるのであります。
春がやって来ると、血みどろに死んでいった冬を思わずにはいられません。


【第2首】
通り魔も ふと立ち止まる 桜かな

【解題】
暗い通りの電信柱の陰から、誰を襲ってやろうかと待ち構える通り魔。
春の風物詩です。フヒヒヒヒ。
そんな通り魔も、電信柱の上に咲いている桜に気づくと、心をなごませるのであります。


【第3首】
一本の 花見団子を 食い終えて 残る串にて 何を刺そうか

【解題】
花見団子って美味しいですよね。
食べ終えた後、残った串を捨ててしまうのは、モッタイナイ。
じっと見つめていると、別な使い道が思い浮かんだりします。


【第4首】
首吊りの 重みにしだれる 桜かな

【解題】
シダレ桜は綺麗で、見てるとウットリしてしまいます。
でも、シダレ桜って、なんであんなにシダレてるんでしょうか。
その答えを探してみました。


【第5首】
さよならと 春の別れを 切り出され 出刃包丁で そっと一突き

【解題】
春は出会いと別れの季節でもあります。
突然の別れにとまどって、どうしようもなく落ち込んだり、泣きたくなったり。
そんなときは台所に行って下さい。
便利な道具が揃ってますよ。


【第6首】
桜咲く ブルーシートの 河川敷 末期の水を すするドブ川

【解題】
大きな川の河川敷には、青いビニールシートの家が立ち並んでいますよね。
あと何年かしたら、僕もその場所へ引越しする可能性があります。
でも、死に際に喉が渇いても、近くの川でたらふく飲めるので、心配無用です。


【第7首】
畠山鈴香も 愛でた 桜かな

【解題】
彼女もきっと、春の季節には、桜を見て心打たれたことでしょう。
人生行程が暗ければ暗いほど、明るい春の桜が心にしみるものです。
だからむしろ、他の誰よりも、彼女こそが桜の美しさを本当に理解していたのかも知れません。


【第8首】
吉野山 花見でにぎわう 古戦場 足元掘れば 人骨の山

【解題】
大勢の人でにぎわう奈良の吉野山は、日本有数の観光名所です。
でも南北朝時代には、吉野山で戦があったそうですね。
戦死者の自縛霊が、吉野山の桜を支えています。


【第9首】
幸せな 寝顔の奧は 春の夢 ワンボックスカーに 練炭を炊く

【解題】
最近、新たな方法が発見されたため、市民権を失いつつある練炭自殺。
どんな方法でもいいんです。
ぐっすり眠って幸せにイキましょう。


【第10首】
花見酒 酔いつぶれたる 同僚の 首に手をかけ 絞め上げてみる

【解題】
会社のお花見って、無礼講と言いながら、なかなか言いづらいこともあります。
しばらく我慢してください。
宴が終わって、皆が無防備に眠り出した頃が、本当の山場です。


【第11首】
見る人の無くとも 匂う 桜かな

【解題】
桜は別に、人に見てもらうために咲いてるわけじゃないんです。
人類が核戦争で絶滅して、白骨死体が転がる中でだって、桜は綺麗に咲くんです。
そんな桜の匂いを嗅いでみたいですね。


【第12首】
無理心中 生き長らえた 病室の 外は桜の 季節なりけり

【解題】
自殺に失敗して気づいたら病院のベッドで寝ていた、なんてことは往々にしてあります。
これからどうしようか・・途方に暮れたら、窓の外を見てください。
人が生きようが死のうが、桜は今日も綺麗です。

       

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