Neetel Inside 文芸新都
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ゆとゆとショートショート
『ドブネズミみたいに美しく』

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ある国のある町。
近くの森から、動物達がやって来た。

「ここが人間の住むところかぁ」
「気をつけろよ。人間は暴力的だから、見つかったら何をされるか分からないぜ」

初めて見る人間の世界。
見るもの全てが新鮮な動物達は、好奇心に任せて町の中を歩き回った。

「・・・・・ん? 今、何か聞こえたぞ」
「あ、本当だ。」
「ちょっと行ってみようぜ」

音源までは距離があったが、聴覚に長けた動物達は安易にたどりつくことができた。

音を出している物体は、見慣れない形状をしており、長い触覚のようなものを体から伸ばしていた。

「こいつが鳴いていたのか」
「馬鹿、生き物じゃないさ。 【機械】っていう、人間が作り出した道具だろ、きっと」

『ガガ・・・毎週日曜朝8時からお送りしています、「サンデー・ミュージック・ラジオ」
今回のゲストは・・・』
人工のこの機械は、喋り続けている

「あ、これ、ラジオってやつじゃないか? ほら、物知りのキツネザルが言ってた」
「ふぅん・・・。でもアイツって見栄張りだもんなぁ」
「おい、静かにしてくれ。聞こえないだろ」

『それでは聞いてもらいましょう。ブルーハーツで、リンダリンダです。 どうぞ』

ラジオと思われるこの機器は、妙な名前の曲名を告げた。
次の瞬間、優しい和音が一定のリズムで流れ始めた。

動物達は耳を澄まして、これまた人間の発明である音楽というものを堪能しようとしたが、
イントロが流れ始めて数秒後、一匹の動物が叫んだ

「おい!!聞いたか!?  今、『ドブネズミみたいに美しくなりたい』って言ったぞ!」


「あぁ、聞いた!  なんだいっつもいっつもドブネズミばかり褒められて!」
「所詮人間も、俺達醜い動物には目もくれないんだ、動物の心も人間のそれも、そう変わらないんだな、やっぱり!」
「ほんとに、どいつもこいつも外見ばかり見やがって!」



その醜い動物達の内の一匹、
雪のような毛皮に包まれ、おっとりした目、ネコ科と分類されるだろうその獣は、ため息をついて言った。


「はぁ・・・。 俺も、ドブネズミみたいに美しい姿になりたいなぁ」

       

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