『後悔』
七夜 梓
カーテンを閉じ、灯りも消えた暗い部屋。
ベットに一人腰掛ける。
ギシ、と軋んだ音を立て、また静かになる。
両手をベットに付き、天井を仰いだ。
そのまま軽く息を吐く。
どれくらいそうして居ただろう、ふと姿勢を戻した。
ズレた眼鏡の位置を戻す。
そして、言葉を紡いだ。
「僕はね、後悔してるんだよ」
「・・・」
返事は無い。
「今までの事を。そしてこれからの事も、未来で後悔するだろうね」
口を軽く歪ませ、嘲笑する。
「僕はそうやって生きていくんだ。いや、僕だけじゃあなく人間はそういう生き物なのかもしれない」
「それって、悲しくない?」
「悲しいよ。だから後悔するんだ」
応え、眼鏡を外し前を見た。
あるのは暗闇に包まれた自分の部屋。眼鏡を掛け直し見ても同じ風景。
「昔を振り返っても、後悔しかない。『どうしてああしなかったのか』、『どうしてそう考えられなかったのか』」
「それは昔のアナタが一番正しいと信じたからじゃないの?」
「そうだとも。でもその『イチバン』が何時までも『イチバン』な訳じゃない」
「それで後悔するの?」
応えない。無言で返した。
部屋には静寂が戻る、フタリの呼吸音すら聞こえない。
そんな純粋な闇を、声が遮る。
「――私の事も、後悔してるの?」
「・・・」
応えない。いや、応えなければならない。
「――ああ、勿論だ」
「そう」
短く返し、少し間を空けて彼女は微笑んだ。
そして、
「 さ な 、 り と う 」
閉じたカーテンの隙間から、光が差し込んでいた。
振り返り、その光を顔で浴びる。
とても眩しくて、腕で顔を庇う。
隣には、誰も居なかった。