夢の人
1
飛行機に乗っていた。飛行機といっても小型のもので僕の叔父さんと二人で乗っていた。すばしっこくて小回りがよく、どこか施設の構内のようなところの木の幹から梢にかけて一瞬で抜けることができた。一般道に出ると車と車の間をすり抜けて進んだ。叔父さんの運転は荒々しくてトンネルを通るトラックの上の隙間をくぐる時は死ぬかと思った。
結局飛行機は地面にぶつかって壊れた。叔父さんはいつの間にかいなくなっていて、僕はひとりで歩いていた。途中誰かに足をかけられて僕は坂の下まで転がって落ちていった。
坂の下の裏路地にある医者へ行った。彼はあの飛行機の持ち主だった。僕が飛行機は壊れたと言うと医者はその場で50万円をクレジットカードで支払えと言った。僕はとんでもない医者だと思ってその場から立ち去った。
雪の積もっている道を多くの人が歩いている。僕の前を歩いていたのはあの少女だった。彼女は白いダウンジャケットを着て歩いている。僕の後ろでは誰か女の話す声が聞こえる。ひそひそと話しながら、けれどまるで僕に聞かれたいような感じで喋っている。
「あそこまでやったのに気付かないなんてねー」
と言った。僕はそれで直観的にあの足をひっかけたのがこの女の仕業だということに気付いた。僕は前を歩いている白い少女にやっとのことで肩に手をかけるとそのまま引き寄せた。彼女は少し照れていたようだが、いつものように僕に話しかけていた。彼女と肩を寄せて歩いているとさっきからの遅い足取りが急に速くなったような気がした。僕は彼女に何か話しかけようとしていたけれどそうはせずにそのまま後ろへ振り向いた。まだひそひそと話しているあの女はキツネのような顔をしていた。僕はそのままキツネ女に向って罵声を浴びせた。
彼女と二人でそのままどこかへ行った。やっと落ち着いて二人で椅子に座って向き合っていると、彼女は僕に対して何かのカウンセリングを始めた。彼女のだらだらとした長い言葉は僕の耳をすり抜けてていくのだけれど、何よりも印象的だったのが彼女が深緑色の金属のかぶせを歯にしていてそれに大きな同じ色のネジが付いていたことだった。