「シケモク・フラペチーノください」
「申し訳ございません、当店では販売いたしておりません」
「んだとてめぇコラ」
俺が真っ先に注文を終え、席を探している矢先のこと。諮問が店員に絡んでいるようだった。
「やめとけよ、ここは全席禁煙だ。そんなもの売ってるはずねーだろ」
「だってよ、サ店っつったらよ」
諮問は多少不満を残しつつ、神名に上手く窘められたようだ。
俺達はドリンクを片手に、空席を探した。
冷房の聞いた店内、猥談に花を咲かせるに相応しい。
そして異変に気づいた。
店内の客全員がお揃いのエメラルドグリーンのワイシャツを身につけている。
おまけに俺達を凝視している。
「あれは北高の制服だ、ここは奴等の領土だったのか」
神名が呟いた。
一人、聖子カットの眼鏡の男が席を立ち、黙々と俺達に近づいてきた。
男はこう言った。
「すいません、今はお客さんが僕達しか居ないので広々と使ってました。直ぐに席を空けますので」
瞬間、俺は男の頬骨に、右フックを打ち込み、殴り倒した。
そして神名と諮問に怒鳴りつけた。
「ここは俺にまかせてお前達は行け、急げ」
「大丈夫なのか」
神名が表情を曇らせ、俺にそう言った。諮問は怯え、震えていた。
「お前に、これを預ける」
俺は左手のキャラメル・フラペチーノを神名に手渡した。
「生きてまた会おうぜ、神名、諮問」
「分かった。死ぬんじゃねーぞ」
諮問の手を取り、出口へ走り出した神名を横目に見送り、改めて客席を見渡した。
奇声を発しながら襲いかかってくる不良集団、こんぼうやひのきのぼうが目に付く。
俺はそっと、右手のポリリズムを開放した。
「波ぁぁぁぁぁぁぁ」
右の掌から放ったポリリズムは青く光る洪水の如く不良達を襲い、全員を壁に叩きつけた。
ある者は血を吐き、ある者は体を変な方向に曲げ、ある者は息を引き取っていた。
「まだ俺に文句のある奴はいるか」
うめき声をあげるばかりで、俺の問いかけに返答する者はいなかった。
「ギャ、ギャンクミ」
何者かがそう言った。そして店員の「いらっしゃいませ」と言う声が聞こえた。
振り返った俺の真後に、オールバックの大男が立っていた。2メートルはあるだろう。ベストを地肌に着用し、サングラスで目元が見えない。
「貴様、何者だ」
俺はギャンクミなる男を睨みつけ、言い放った。できる。直観で感じていた。
「俺は、こいつらの担任の先生だ」
そのまま、ギャンクミな(ry男は静かに語り続けた。
「どうやらお前もPerfume使いの使いのようだな、だがお前は俺に勝てはしない」
その言葉に、俺はキレた。
「zip」
右手にポリリズムを圧縮させ、必殺技を放った。
「愛と怒りと悲しみの、ポリリズム・フィンガァァァァ」
そう、まさにギャンクミ(ry男に掴みかかったと思った瞬間、俺の全身が硬直した。
なぜだ、動けない。
「エレクトロ・ワールド」
ギャンクミは薄笑いを浮かべ、Perfumeを唱えた。俺の全身に電流が走る。
全身を貫く痛み、まさかこれ程の使い手とは。
数秒にして俺は倒れた。かろうじて意識はあるが、指一本動かせやしない。
「これが本物のPerfumeだ。思い知ったか未成年」
ギャンクミの低い声がこだまする。
その時俺は、その通りだったんだと思いたい弱さと闘うことで精一杯だった。
そして俺はギャンクミに犯された。