yamiako
似非エッセー
日の光を浴びた緑の芝生を絨毯のように敷き詰めた公園。そこに居るほとんど半裸といったような格好をした少女、そして周りには数人の男が何かの機材を持っている。よくよく見てみると何かの撮影のようだ。なのでそのあたりは近づきたがいような雰囲気だった。けど別にそう思う必要があるだろうか、そうしてはいけないという法はない。近づく僕に最初に気づいたのはあの少女だった。他の男達は僕に背を向けている状態なのでまだ気づいていない。彼らに促されて彼女はまたさっきまでのようなポーズを取った。僕はカメラを持った男を通り過ぎて少女の方へと向かう。おそらくカメラの視界に入ってしまったのだろう、男に「おい!何やってんだよ!邪魔だよ!」と言われる。しかしそんなのは全く気にする必要がない。もしここに大勢の人がいたら周りを取り囲んだりするように僕の行動はいたって自然な心理だと言えるのではないか。次第に男達が僕に向かって叫び散らす。少女は僕を妙な物を見るような目つきで見る。一人の男が僕に向かって歩いてきて肩を掴んで引きずり出そうとする。
「おい!仕事の邪魔だ!どっかいけ!」 僕はその男の手をふりほどいてこう言ってやった。
「僕にもここに居る権利があるはずです」
しかしそんな僕の言い分にもかかわらず男は「うるせえ!そんなものねえ!」と言って僕を投げつるように強引に押した。尻餅をついてとっさに伸ばした右手を擦り剥いた。起き上がろうと思って顔を上げると少女が僕を睨み付けていた。
「仕事の邪魔しないでください」 彼女はそう冷たく言い放った。
僕がその場を去ると彼らはさっきのように仕事を始めた。カメラを持った男は「さっきの睨んだ目よかったね~あんな風にしてみてよ」と言っていた。辺りの雰囲気はまた以前のように戻っていた。僕は泥の付いた手を見ながら何をしたかったんだろうかと考える。あの雰囲気を壊したかったのだろうか。あの男達と少女の関係を壊してみたかったんだろうか。けど実際彼らの仕事による結束は強かった。それとも彼らによって作り出される仮想空間を壊してみようと思ったのか、それともそこに立ち入ってみようと考えたのか。しかしそれも不可能だった。もしかしたら僕はその撮影風景というものを現実のように思っていたのかもしれない。テレビでよく映るような撮影風景、あれは撮影風景を模した仮想空間に過ぎない。だから僕は常軌を逸したような行動を取ったのだ。ああいうものは良くない、誰でもそこに立ち入っても良いような勘違いをする。
何にしたってそうだ、テレビの学園ドラマ、あれにしたってそういった思いこみを発生させる。僕だってあんな風になるのだろうかと思う、しかし現実はそれとは大きく剥離している。僕はあの頃よく教室の片隅で小説のような物を書いていた。それは学園ドラマより更に非現実的なものだった。僕は学園ドラマとは違い現実では得られない物を誇張して書いていた。そして最近になると僕はあの頃感じていたことを書くようになった。嫉妬や侮蔑、ねじ曲げた価値観によって得た優越感。そういった単なる自己肯定に過ぎないような物を書き連ねる。それは過去の自分に未練があったからだ。もちろんその自分とは学園ドラマにしがみついていた自分、つまり今でも全く変わっちゃいないってことだ。
あれから家に帰った僕は手を洗い泥を落としてから部屋に戻りテレビを付けた。そこに映るのはあの諸悪の根源である仮想空間だった。幼い頃から僕はこの光を浴び続けた。そしてその微細なレンズが感じ取り、反射によって拡大したのが今の自分だった。僕は仮想空間によって敷かれたレールの上を歩いていただけに過ぎない。僕は周りの人間こそがそのレールに沿って動いていると思っていた。彼らは何でもテレビによって信じ込まされたことをしているのだと思っていた。そして自分はそれに反発することでアイデンティティーを得たと思っていた。
テレビを消して今度はパソコンを付けた。僕はその仮想空間を打ち破るために真実の話を書こうと思った。自分の体験を書くことによってもしかしたら誰かがそれに気づいてくれるかもしれないからだ。僕は今日の公園での出来事を交えて、一切の脚色のない話を書こうと思った。そして今それを書き終えた。
しかしあの女の子かわいかったなー
あーオナニーでもして寝よう