Neetel Inside ニートノベル
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せかいはもううまれかわれない
僕の言葉で言いたかったのに

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それを読み終えたとき、呆然とした。

周りの景色が赤黒いぬめぬめしたような色合いで統一されてしまったからだ。
いつの間にか手元にあった本が消えていた。
はじめに頭に浮かんだことは、僕が何をしたっていうのかという具合で。
それからすごくツンと鼻につく臭いが僕に、今の表現はなんでか覚えがある。
ありきたりな例文に何故か思える。僕の言葉で言いたかったのに。
さっきの手元にあった本の文章から抜き出したような感じ。どんな内容だったのだろう。
ともかく頭が混乱して状況がよくわからない、考えがどうしてもまとまらなくなってしまう。
すっぽりと穴に落ちたみたいな、こうなってしまった段階があるはずなのに、その紐がするすると。

ずっと小さい頃からの悪い癖だ。
意識っていうものは常に連続したものでなきゃならないって、先生も言ってたのに。
君は抱えきれないバッグを背負いすぎるから錯乱してなにもかも分からなくなるというのも。

不安が加速した。
何がどうなってるのか、どうしたっていうんだろうか。気味が悪い。落ち着こう。
僕は冷静になった。小さく深呼吸をした。少し咳払いをした。こほんと。

「僕は今、どこにいるんだ」

声に出すと、やまびこのように反響して耳に届く。
僕の両目から見える四方へ赤黒い壁がどんどん伸びていくように感じる。
霧のカーテンを手で押しのける夢を見たときの感覚だ。懐かしいな。

似てる。

思い出した、ここ図書室だ。
記憶と照らし合わせると、何気に面影があるじゃないか。
僕は今、学校の図書室の隅であぐらをかいて、この光景を眺めてるんだ。

隣を見ると、キヨシが頭から血を流して倒れている。
僕は咄嗟に頭に浮かんだことを口に出してみるのはどうだろう、と。
案外、気が晴れるかもしれない。

「今の表現はなんでか覚えがある。
 ありきたりな例文に何故か思える。
 僕の言葉で言いたかったのに」

すごくむかついたから右手に持っていた月のナイフでキヨシの首を抉った。
すると、僕の罪を浄化するようにキヨシの体から羽虫がバタバタと何匹も飛んでくる。
僕に向かってバタバタと、電柱にたむろしている蚊柱に自転車で突っ込んだみたいだ。
しかし、なんでだろうか、その羽虫は僕の体に当たった瞬間に弾けて火花になった。
ここ一番に輝きを放つこいつを、僕はあまり嫌いじゃない。

       

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