放課後、誰かに体育裏に呼び出されたら普通はどんな想像をするだろうか。
見知らぬ男だったら何か危険な暴力的な匂いがするかもしれない。友達なら誰にも知られたくない秘密を共有するのかもしれない。
しかし、それが女性だったらどうだろうか。
しかも全く面識の無い女の子からだったら。
そこから危険を感じるのは男としてほぼいないと思う。いたとしたら何か前科があると思う。だから大抵は甘い期待を胸に抱きつつうきうきと指定の場所に向うだろう。
さて、その点宮本エイジはどうだったかというと、特にそうした事を考えていなかった……なんてこともなく、先程述べたように自分の下駄箱に入れられていた手紙にドキドキしながら指定の場所何向っていったのである。
ただ一つ違う所は彼には既に好きだと思う人がいるという点である。
彼は自分が恋をしているのかしていないのか正直分かっていない。たぶんしてる、という程度である。
まぁいくらそんな事をいっても所詮は男。エイジは指定の場所、体育館裏についていた。
体育館裏にある桜の樹の下で自分を待っているであろう少女を見つけたエイジは周りをきょろきょろと見渡してみる。
どうやら何かの罰ゲームで俺をからかっているという訳ではなさそうだ。
遠目に見る限りエイジには少女に見覚えが無い。全く無い。
取りあえず話し掛けてみることにした。
少女はエイジが近づいてきたのに気づくと、少し緊張したようだったが自分から近づいてきた。
少女の背はエイジより頭一個半ほど小さく、体つきは何食ってんだと思ったくらい華奢だった。
背中へ流した黒髪は綺麗だが何故か前髪が異様に長く、表情は窺えない。
見たところ同学年らしいが、全く見覚えが無いところを見るとクラスは違うらしい。
「宮本エイジ様でいらっしいますね」
「あぁ……まぁ、そうだけど」
今、なんていった?
エイジさま? 「様」ってなんだ?
「ずっと、待ちつづけておりました」
「えっ、あっ……はい?」
何こいつ?
すると突然目の前少女は地面に片膝をついた。
えっ何? これ何?
俺が知っている限り片膝をつくというのは気分が悪いときに行う行為のはずだ。けれど目の前の少女は理解の範疇を超えた言葉を続けた。
「一万年と二千年前からずっとお待ちしておりました。我が身体は貴方様の剣。心は奴隷。我が君、エイジさまに永遠の忠誠を誓います」
唖然とする俺に少女は靴のつま先に自分の唇をつけた。
あれだ、俗に言うキスって奴なんじゃないかな。靴にだけど。
ていうか、奴隷って何!? 忠誠?
「お、お前……何?」
「私はエイジさまの下僕です」
「下僕?」
「はい。何なりとお申し付けください」
日本語を喋ってるから日本人だ。
話は通じている。けどなんだこの……まるで未知とのの遭遇な気分は………!
「し、しっかりしろ。頭は大丈夫か?」
凄く失礼だがこの場合は仕方ない気がする。
「はい。大丈夫です」
前髪で隠れている所為で表情はわからないが多分、というか絶対目がやばいと思う。
どうしてこう、俺の周りには変な奴ばっかなんだ。
先輩は変態だしこいつは電波だし。
俺はなんか恐くなって一目散に元来た道へと駆け出した。
後ろで俺を呼び止める声が聞こえたが振り返らずに走りつづけた。
目指すは、文芸部室だ。
変態的な彼女
第二話
必死で走ったおかげで疲れたが追いつかれはしなかったようだ。
息を整えて部室へ入る。
相変わらず先輩は食い入るように本を読んでいる。
多分、こんどはイギリスかなんかの官能小説だろう。
昨日俺に喜んで朗読していた。
先輩は俺に気づくと顔を上げて微笑んだ。
「おや、今日は早いね」
「今日は五時間授業だったんですよ」
先輩は本を閉じてバックをごそごそと漁りながら返答をしてきた。
「そういえばそんな日だったね」
先輩は授業に全く出てない。
朝からずっとここで本を読んでいるのだ。
そのくせテストでは常に上位をキープしているのだから凄い。
ただ、保健の授業には必ず出ているらしい。しかも毎回保健は百点だといっていた。
もうね、あほかと。馬鹿かと思った。
俺は本棚から男装少年を手にとり読む。実は愛読書だったりするのは内緒だ。
俺が椅子に座ると同時に嬉しそうに先輩が話し掛けてきた。手には一冊の本がある。
「見てくれよこれ。海外の有名な作家が書いた官能小説でね、一日前からずっと店の前で並んで手にいれたんだよ! どうだい?」
「どうだいと、いわれても……頑張りましたね」
いつもはもっと静かなのにこういう時だけはしゃぐ。変な人である。
「そうだろう、もっと誉めてくれたまえ」
適当に先輩の話を受け流しつつ本を読んでいたら部室のドアが開く音がした。
「失礼します」
聞いた事のある声が後ろから聞こえる。
ま、まさかな。
「おや? 入部希望者かな? なら名前だけ教えてくれたまえ」
「はい。私の名前は時雨春香です」
先輩は俺のときと全くかわらない対応で受け応える。。
頼む、どうか俺の勘違いでお願いします。
「おめでとう今日から君は文芸部員だ。僕の名前は城島美夏。彼は宮本エイジ」
おそるおそる振り向くとそこには体育裏であったさっきの電波の顔があった。
彼女はにっこりと微笑んだ。前髪の所為で見えなかったが俺にははっきりそう見えた。
「どこまでもついていきますエイジ様」
俺は……こいつを侮っていた。
のんきに先輩が話し掛けてくる。
「知り合いかい? いや、様と呼ばせているくらいだから調教済みかな。エイジくんにまさかそんな趣味が合ったとはね」
改めて俺は、自分が入るべき部活を間違えたのを再認識させられた……………。
息を整えて部室へ入る。
相変わらず先輩は食い入るように本を読んでいる。
多分、こんどはイギリスかなんかの官能小説だろう。
昨日俺に喜んで朗読していた。
先輩は俺に気づくと顔を上げて微笑んだ。
「おや、今日は早いね」
「今日は五時間授業だったんですよ」
先輩は本を閉じてバックをごそごそと漁りながら返答をしてきた。
「そういえばそんな日だったね」
先輩は授業に全く出てない。
朝からずっとここで本を読んでいるのだ。
そのくせテストでは常に上位をキープしているのだから凄い。
ただ、保健の授業には必ず出ているらしい。しかも毎回保健は百点だといっていた。
もうね、あほかと。馬鹿かと思った。
俺は本棚から男装少年を手にとり読む。実は愛読書だったりするのは内緒だ。
俺が椅子に座ると同時に嬉しそうに先輩が話し掛けてきた。手には一冊の本がある。
「見てくれよこれ。海外の有名な作家が書いた官能小説でね、一日前からずっと店の前で並んで手にいれたんだよ! どうだい?」
「どうだいと、いわれても……頑張りましたね」
いつもはもっと静かなのにこういう時だけはしゃぐ。変な人である。
「そうだろう、もっと誉めてくれたまえ」
適当に先輩の話を受け流しつつ本を読んでいたら部室のドアが開く音がした。
「失礼します」
聞いた事のある声が後ろから聞こえる。
ま、まさかな。
「おや? 入部希望者かな? なら名前だけ教えてくれたまえ」
「はい。私の名前は時雨春香です」
先輩は俺のときと全くかわらない対応で受け応える。。
頼む、どうか俺の勘違いでお願いします。
「おめでとう今日から君は文芸部員だ。僕の名前は城島美夏。彼は宮本エイジ」
おそるおそる振り向くとそこには体育裏であったさっきの電波の顔があった。
彼女はにっこりと微笑んだ。前髪の所為で見えなかったが俺にははっきりそう見えた。
「どこまでもついていきますエイジ様」
俺は……こいつを侮っていた。
のんきに先輩が話し掛けてくる。
「知り合いかい? いや、様と呼ばせているくらいだから調教済みかな。エイジくんにまさかそんな趣味が合ったとはね」
改めて俺は、自分が入るべき部活を間違えたのを再認識させられた……………。