Neetel Inside 文芸新都
表紙

変態的な彼女
第四話

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前回までのあらすじ――なんか部員集めないと廃部になる。

急遽部員増員を強いられた俺たちは仕方なく勧誘活動に精を出すことになった。
と言っても実質的には俺一人な訳だが。先輩ははなから気にしていないようで今日も朝から文芸部室にこもっている。時雨はと言うと黙って俺の後に続くだけで何か自分からと言う事はしない。
命令すれば捜してくるだろうけれどそうするとこの関係を認めることになるのでしたくない。
非常に困る。なのでまずはクラス内で目星をつけることにした。
委員長の小宮さん。あと、渡辺さん。
「あれれー? 私の筆箱が無いよー」
駄目だ。なんか渡辺さんは駄目だ。消去法で小宮さんに決定。
「小宮さん、ちょといいかな?」
「何々? 告白? 愛の告白なの? なら残念だよー私の応えはNOだからね!」
煩いこの人。だからあんまり好きじゃないんだよ。
然ししょうがない。これしかいないんだから。
「そういうのじゃなくて、人助けだと思って文芸部にはいってくれないかな」
一瞬小宮さんはきょとんとしたがすぐにあははーと残念そうに手を左右に振った。
「別にいいよー」
「いいのかよ」
それはいいと言うサインだったのか? 俺には駄目としか取れなかったのだが。
まぁそんなことは些事なのだ。問題はYESorNO。これにつきる。
結果YESが出たのだからOKだ。
「ありがとう。助かったよ」
「けど私バスケ部所属だからたまにしか顔出せないけどいいの?」
「うん。大丈夫だよ」
まずは一人ゲットと言ったところか。
さて、次は隣のクラスだな。隣のクラスといえば佐々木だ。幼馴染の佐々木千華。あいつなら多分どこにも所属していないだろう。変にめんどくさがりだからな。
さて、しかし会うのは少し躊躇われる。なぜなら当の昔にあいつとは縁が無いからだ。小学校までは多少付き合いがあったものの中学校からは全く疎遠になった。そして高校生になっては顔すら見ていない。まぁ現実は損なもんだ。朝幼馴染が起しに来てくれるなんてシチュエーションはありえる訳がない。俺を起すのはいつも妹だ。でもあれだ。ラリアットかましてくる。首に。
おっと、はなしがずれたな。まぁ佐々木は性格的にはクールでアホ。
とは言っても背に腹は代えられないというやつだ。
俺は意を決し隣のクラスへ向った。
「佐々木、いる?」
と尋ねたのはすぐ近くにいたジャージ姿の金髪ポニーテールの女子生徒。金髪なのは多分地毛だろう。顔がハーフっぽい。なんかフランス人っぽい。要するに美人だ。
「私が佐々木だ。エイジ」
「えっ、あっ……そう」
気まずい。非常に気まずい。
やはりここは俺からいうべきなのだろうか。けれど、なんだ。あれだ。恥ずかしい。
脳内で激論を交わしていた俺に佐々木から話し掛けてきた。
「で、何のようなんだ」
ありがとう佐々木。
「いや、そのなんだ。単刀直入に言うとだな文芸部に入部して欲しいんだ」
「任せろ。だが条件があるぞ」
ぐっと顔を近づけて言う。
「ピノ」

     

「……あぁ………ピノな」
「ふふん」
満足そうに、無駄に偉そうに頷く佐々木。
とりあえずこれで集まったと。思ったより楽だったな。まぁピノは後で買ってくるとしてさっさと天宮先生に報告してこよう。
そう思って廊下に出た俺は偶然ばったりと天宮先生に出会った。
いや、これは手間が省けた。たまには良い偶然と言うのもあるんだな。
「天宮先生じゃないですか。丁度今捜してたんですよ」 
「おう宮本。丁度今お前にパンツをせがもうと思って捜していたところだ」
どうやら偶然ではなかったらしい。まったく。いつも偶然と言う奴は迷惑な奴だな。
まァそんな事はどうでもいい。これで廃部は免れるのだ。
「で、なんのようだ。パンツを渡す気になったのか?」
なんだよスルーかよとか言っているが気にしない。
「部員が二人集まったんですよ」
「げっ……マジかよ」
「マジです」
俺がそう答えると天宮先生は突然あーあーあーと叫んで耳を塞ぎ始める。
もしかして聞こえないというジェスチャーなのだろうか。
「あのーもしかして」
「あーあーキコエナーイ」
何で後半片言なんだ。
というかこれはもしかして認められないって事か?
それは困る。非常に困る。俺頑張ったのに。いや、実際は別に頑張ってないけど。
「あのー」
「キコエナーイ」
そのまま身を翻し職員室へ戻ろうとする。
それはなんとしてでも阻止せねば!
「先生!」
今度はダッシュで逃げる。
ああ、もう! 最後の手段だ!
「俺のパンツ上げます!!」
叫んだ。大声で。
ぴたっと天宮先生はとまってにこやかに戻ってくる。
はぁ……助かった……ん? やけに静かだな、廊下。さっきはもっと煩かったのに。
あれ? おれ、さっきなんていったっけ…………あ、あああ。ああああああ!!
なんて叫んだ俺!? 大声で! たくさんいる生徒達の前で!
パンツやるって叫んじまったァあああああ!!
「ま、約束は護れよ」
にやにやしながらぽん、と肩をたたく天宮先生。
もちろん俺の背のほうが高いので先生は背伸びしたけれど。
でも。そんなことはどうでもいい。
「ちょ、なにあれ」
「きもーい」
「おいおい……」
周りがひそひそと話し始める。お前ら、全部聞こえてるぞ……。
嗚呼、俺のイメージが崩れ去っていく。
さよなら、優等生だった俺……こんにちは変態な俺。
「うわぁあああん!!」
結果宮本エイジは大声で泣き喚きながら―――逃げた。

     

宮本エイジはその後の授業には一切出ず、ずっと城島先輩のいる文芸部室にこもっていた。
「ふむふむ。それで、成る程。エイジ君は大勢の人間がいる中で変態発言をした訳だ。ふふふ、素晴らしいじゃないか。僕にもそんな事は流石に出来ないよ。だからこそ僕は君の事を尊敬し、喝采を送ろう。僕が出来ない事なんてそんなにないからね」
先輩に今日の出来事を愚痴っていると中々慰めか同情かよく分からない返事をくれた。
「あの、先輩。それって慰めてるんですか?」
「まさか! 何で僕がエイジ君を慰めなきゃいけないんだい。誉めているんだよ。素晴らしいと。賞賛しているんだエイジ君」
そうですか。
多分隣にいると思う時雨を見るとやはり思ったとおりいた。
今度は時雨に向って愚痴る。
「本ともう。死にたい」
「エイジ様が死ねとおっしゃれるのならば喜んで死にましょう。あのちっちゃいのを殺せと言うのならば歓んで殺しましょう。エイジ様が死ぬのならば私も悦んで死にましょう」
駄目だ。会話が通じない。あれ? 通じてるのかな。微妙なところだ。
てか、ちっちゃぃのって。確かにちっちゃいけどさ。なんつーか……なんだかなぁ。
「もう、そんな簡単に殺すとか死ぬとか言うなよ。あとちっちゃいのも」
死にたいと言い出したのは俺自身だがこの際はあんまり関係ない。
少しでもこいつがまともになる事を夢見て今から教育だ。そう、教育さ。
「仰せの通りに致します。ですが、ちっちゃいです」
表情を変えずに、いや表情は窺えないので正確には声音をかえずに返答する時雨。
確かにそうだけどさ。そうなんだけどさぁ。
「おーい、宮本いるかー」
ガチャリと無造作にドアが開けられて天宮先生が入ってきた。後ろには何故か佐々木がいる。
先生の問いには先輩が答える。
「ああ、ここにいるよ」
「てめぇにはきいてねぇ」
それだけ吐き捨てるとずかずか(とたとた)と俺の目の前にまでやってきって椅子に座る。
やけににやににやしながら俺を見つめて来る。ああ……帰りたい……。
「あの、先生……」
「約束はきちんと護れよな。先生は信じてるぞ、なぁ宮本」
くそう………先手を取られたか! って遊んでる場合ではない。
何とかして俺のパンツを死守せねば! 前回は先輩が助けてくれたけどパンツを上げなかったから多分今回は知らん振りだろう。
「先生は、こんなことして聖職者として恥ずかしくないんですか?」
俺はまずは立場を利用して戦う!
「ああ? んなもんいいんだよ。だって生殖者だもん。ププ」
俺の問いに意味不明な応答をする天宮先生。
だめだこいつ速く何とかしないと。
次の一手を考えていた俺に突然横槍が入る。
「ところでエイジ。ピノはどうした」
佐々木だ。
正直とりあえずは一時凌ぎにしかならないがまぁ助かったから感謝しよう。ありがとう佐々木!
ところでこいつは俺を助けようとしていったのか、それとも唯単にピノが欲しくて言ったのか?
多分後者だろう。おそらく間違いない。こいつはだって馬鹿だからな。
「ああ、ピノか。よし! じゃあ今から買いに行くとするかな!」
「じゃあ先生も行こうかな」
先生よりはるかに速いスピードで佐々木の手を掴む。
急いで立ち上がって天宮先生から逃げ出した俺に後ろから制止の声が聞こえたが構わず逃げた。

     

「いらっしゃいませー」
学校から比較的遠いコンビニを選んで俺らはピノをかいに来た。
十分間走りつづけた俺は凄いと思う。
「はぁ……はぁ……もう追ってこないだろう……」
「大丈夫かエイジ。息が荒いぞ」
心配した風に俺を覗き込む佐々木。かわいい……けど、なんでこいつ汗一つかいてないんだ。
「なんで……お前、はぁはぁ……汗かいて……ないんだよ」
「ん? なぜならそこにピノがあるからさ。名言だなこれは」
やっぱりこいつはアホだ。アホの子だ。
まぁいいさ。分かりきっている事だ。はやいとこピノ買ってどこか違う場所に潜伏しよう。ピノ買った後はどこに隠れようか。
「ところでエイジ。ピノは何個まで買っていいんだ」
色々と思案していたが佐々木に声をかけられたために一時中断する。
俺は紳士なのさ。だからレディーファースト。
そう、変態という名の紳士。……ぐす。
さぁ、涙をふいて。普通に対応だ。涙は見せちゃいけないよ。だって僕は紳士だもの!
「ああ、そうだな。先生から逃げれたのはお前のおかげだし、特別に二個買ってやろう」
「ふふん。大人買いだな」
いや、二個は別に大人買いじゃないだろう。
そう思いつつ取りあえず二個買ってやる。
「ありがとうごさいましたー」
コンビニを出て佐々木を見ると既に一箱空になっていた。しかも残りは一つと食いかけ。
佐々木恐るべし! 是非ともその早食いを見習いたいものだ。 
「うん、どうした。食べたいのか」
俺が感銘を受けていると、ふふんと無駄に偉そうに笑ってからそんな問いかけをする。
「いや、別にいいよ」
「そうか。ならば頂くとするかな」
「ああ、そうし……!」
前方約五十メートル先に先生が、時雨と壮絶な闘いを繰り広げている。
時雨は先生のローキックを後ろにジャンプしてかわした後そのまま着地と同時に跳ぶ!
先生の顔面めがけて勢いのついたパンチを繰り出すも右に軽くかがんでかわされる。瞬間、その勢いを利用して背負い投げを繰り出される。
無様に地面にたたきつけられると思ったその一撃を時雨は絶妙なタイミングで受身を取り何とか凌ぐ。
時雨は素早く先生を振り払って立ち上がりそのまま回し蹴りをかますも腕でガードされる。しかし、ガードされると同時に大きく其の足を上げ踵落し!
咄嗟に両手を交差して頭への直撃を防ぐもかなりのダメージはあるようだった。
だが、次の瞬間、
「ッッ! らぁああああああ!!」
右手で時雨の足を掴み取りぶん投げる! まるで時雨はボールのように吹っ飛んで何度もはねながらも何とか起き上がる。
が、そこにどこから跳んだのか。目の前に先生の肘打ちが時雨の鳩尾に決まった。
様に見えたが間一髪でそれを両手で押さえ込んだようだった。
そのまま――――其の瞬間あいていた口の中に何か冷たくて甘いものが入る。
「ふふん。美味しいだろピノ。ところで何をぼっーとしている、早く帰ろう」
「あ……ああ、そうだな」
そうだ。帰ろう。
時雨が時間稼ぎをしていてくれている間に。
「全く。そんなに大口をあけて。食べたいのなら最初から言えばいいだろう」
呆れたように言いながら最後のピノを食べる佐々木。
ということは、さっきのは・………。
「どうした。先に帰ってしまうぞ」
「ん……」
ピノのほろ甘さを味わいながら俺達は帰路についた。

     

文芸部室で一人ぽつんと本を読む人がいた。
「誰もいない……全く。まぁ、なれているけどね」
ちょこっとだけ寂しそうに呟いて城島美夏は栞を挟んで本を閉じた。

       

表紙

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Neetsha