Neetel Inside 文芸新都
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いごいごな短編
ウサギとカメ 〜かくれんぼ編〜

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かくれんぼ編

昔々あるところにウサギと亀がいました。

さて、ご存知のとおりウサギは亀との勝負に敗北し、その後二人は犬猿の仲となってしまいました。
それは森の皆さん(?)には周知の事実であり、且つそのような間柄でありながらも二人の間には強い絆で結ばれているということも―――「だからこそ二人は分かり合っている」と言った声も少なくはありませんでした。

ウサギは毎度のように勝負を仕掛けます。

二人の関係は実に上手く成り立っていました。
いいコンビだったのです。

ウサギは言いました。
「おい亀よ、ここでいっちょかくれんぼをやらないか?」

亀は言いました。
「やだ」

ウサギはそのそっけない態度にピクリときましたが、とりあえず平静を保ち聞きました。
「ほう。なぜだ?」

亀は言いました。
「やだから」

ウサギの頭の毛細血管が290本程切れました。
しかし、ここでウサギはある考えが浮かびました。

※以下はウサギの頭の中をあらわしています。

何故、亀は私との勝負を拒んだ?駆けっこの時はあれほど簡単に承諾したというのに…、何故だ。…そうか、わかったぞ。ハハハハハ!!わかったぞ!!!!!(ブゥン)亀は私に勝てないのだ!!!かくれんぼでは私に勝てないのだ!!!この亀、以前は既にこの時、奴は勝てることを確信していたのだ!作戦を既に立ててあったのだ!しかし、このようなことを私が言い出すとは夢にも思わなかったのだろう!!!こやつの予想はこれまでだったということ!つまり!私がここでかくれんぼを強行すれば奴には策がない!!ファファファファ♯ファ♭!!!!!!!(ブゥン)私は無の力を手に入れたぞ!!!!勝てる!!!ファファファファファ♯ファファファファファ♭ファファファファファファファファファファファ!!!!!!!!(ブブゥン)

ウサギは言いました。
「理由を言ってもらわねば困るな。私はしたいんだ!どうしても!今すぐに!!ここで!!!!!!!」
(おっと、少しばかり強く言い過ぎたかな…ふふふまぁいい)

そして亀は言いました。
「理由なんてない」

ウサギは言いました。
「だぁから!!理由もないのにかくれんぼしないってのは通用しないんだよ!!俺はしたいんだよ!!わかったか!!!!あぁ!?」

亀はウサギのその勝手すぎる態度に絶望しました。
「…」

ウサギの頚動脈がはちきれんばかりになりました。
「まぁいい。とにかく。かくれんぼはするぞ!文句は言わせない!貴様のくだらない理由でかくれんぼはやめさせない!!!俺はやる!!!やるぞ!!!」

亀は言いました。
「…いいよ。わかった、やるよ…」

ウサギは思いました。
ファファファファファ…作戦成功。後はこいつを始末するだけだ…ファファファファファ。

亀は言いました。
「君が言い出したんだから君が鬼ね」

ウサギはノリノリでした。
「オッケェェェェェェェェェェェ!!!!!!!!」

ウサギは既にこの時亀の策略にはまっていたのです。
先に言っておきます。
もうウサギの負けです。

亀は言いました。
「僕は足が遅いから200秒数えて」

ウサギは言いました。
「かまわぬ。その程度ハンディキャップ、取るに足らん。500秒にしてやろうか?」
ウサギは負けることなどこれっぽっちも考えてはいませんでした。

亀は言いました。
「あ、じゃあそれで」

ウサギは言いました。
「ふん…では数えるぞ!!…イーチ…ニー…サーン…シーン…カルロス・ゴーン…イヤッホォーーーーーーーーーーーーーーイ!!!!!!!…ろーく…しーち…」
テンションの高さが異常でした。
奇声を発しながら数えるその姿には狂気以外の何物でもありませんでした。



500秒数え終わるとウサギはすごい形相で振り返り、いいました。
「ファファファファファ…すばらしい…」(何が)

その顔、まさに「白カブトムシ」の如く。

ウサギは「ブゥン」と口で言いながら、移動しました。

…が

一時間ほど探し回っても見つかりませんでした。
数を数えていた木のところに戻り、ぺたんと座り込み、疲れ果てたウサギは言いました。

「ファ…ファファ…ファ…フ……うふふ、いない…帰ったんだ。あの人、また帰ったんだ。ウーフフフフ帰ったんだぁ…ヌフ…」
ウサギは壊れました。

その時、どこからか声がしました。

「…帰ってない。灯台下暗しとはまさにこの事」

なんとその木の裏から亀が出てきました。
亀は初めから、そこにいたのです。

亀は逆光を浴びて、そのシルエットが美しく背景に浮かび上がりました。

しかし、亀には予想のできなかったことがあります。
ウサギは壊れていたのです。




















「カメェェェエェェェェェエェェーーーーーーーッッ!!!!!」

こうしてウサギは無の力で亀と自分を次元の狭間に送り込んだのでした。

       

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