Neetel Inside ニートノベル
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物憂いプロトコル
少女、少年、犬

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 私の地元に、右手の指が六本ある少女がいる。
少女は、右手の小指の横に小さな六本目の指があるという以外、全く普通の小学三年生だった。
だから、普通の小学校に通い、右手にも左手にも五本しか指がない子供たちと一緒に勉強し、指が六本ある右手で給食を食べた。
でも彼女は右手の指が六本あるという以外全く普通の少女だったから、自分の右手に指が六本あるということが非常に気になった。
右手にも左手にも指が五本しかない同級生からからかわれることもあったし、見知らぬ大人から奇異の目で見られることもあった。
そういうのが少女はとても嫌だったし、毎日寝る前に自分の右手の六本目の指のことを考えたし、鋏でそれを切ってしまいたかった。
そして、そういう、自分の右手に六本目の指を与えたような、理不尽な絶対的な力を憎んだ。
更に、そんな理不尽な絶対的な力に憧れた。
少女はまだ「理不尽」という単語は知らなかったけど。

 少女は、野良猫の尻尾を切ってまわるようになった。
普通の鋏では上手く切れなくて猫にひっかかれてしまったから、お母さんの部屋から巨大で強力な裁ち鋏を持ち出して、引きちぎるように切ることにした。
切った尻尾は野良犬に食べさせた。
どうしてそんな事をするようになったかは少女にも分からないが、絶対に少女の右手の六本目の指は無関係ではなかった。

     


     



 私の地元にとても猫が大好きな少年がいる。
少年は、本当に、切実に猫が大好きだった。
世界中のどんな猫にも幸せになって欲しかった。
しかし、世界の99%の猫が幸せになることより、世界の1%の猫も不幸にならないことを、少年はより強く願っていた。

 少年はある日、猫の尻尾を口にくわえる野良犬を見た。
そして、日に日に増えていく尻尾がちぎられた猫に気づいた。
少年は、このまま猫の尻尾がちぎられていくのを、どうしても我慢できなかった。
少年は悩んだ。
その野良犬の事だって、少年は好きだったからだ。
でも駄目だった。
生まれたばかりの小さな白い子猫の尻尾がちぎれているのを見た日、少年はバットで犬を・・・

     


     

 結局、少年がバットで犬を殴り殺した日から、猫の尻尾が切られることは無くなった。
犬が殺されるところを、偶然にも少女は見ていたからだ。
少女は怖くなり、悲しくなり、申し訳なくなり、意味が分からなくなり、猫の尻尾を切ることをやめた。

 苦しくてつらくて猫の尻尾を切った少女がいて、猫を守りたかった少年がいて、ただ殺された犬がいる。
こんなのは間違ったことで、理不尽な事件だ。
ではどうなれば正しかったのか?
少年は勘違いをせず、猫の尻尾を切った犯人を突き止め、少女を殺せば良かったのか?
私には分からない。

















 というストーリーを、私はベッドに入ってうとうとしかけた時に考えた。
何の為に?

       

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