Neetel Inside ニートノベル
表紙

自分流自己満足短編集
シナリオ2『ハコモノアブダクション』

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ハコモノアブダクション

あらすじ
大学生のオニイサンと現役JKの広瀬サキちゃんが、地球に観光に来ていた宇宙人に拉致られて監禁される。



**

それはゴキゲンな週末の午後2時の出来事だった。遅めの昼食を済ました後に、久しぶりに映画館でも行こうかと思い付き、家を出た時の事だ。頭上にUFOとしか思えない様なUFOの様な物体が、所謂アダムスキー型円盤の様な物体が、……いや、もうあれはUFOそのものだ。とにかくUFOが重厚な音を轟かせ飛行していたのだ。呆気に取られてしまった。只々馬鹿みたいに大口を開けて見上げることしか出来なかった。頭上に浮かぶUFOはそれを狙ったかの様に俺に向かってポワワとベタな音を鳴らしながら波打つ光を照射した。その瞬間、重力を無視したかのように身体が地面から離れ始めた。正月の特番でやっていたUFO特集が脳裏をよぎる。キャトルなんとかで使われるトラなんとかビームだ。叫び声をあげる暇もなく身体はみるみるうちにUFOへと引き寄せられていく。高度はどんどん上昇し更に加速する。俺の住むボロアパートも上空から見下ろす形になって、すぐに米粒位の大きさになってしまう。眼前にUFOが迫る。しかし上昇する速度は落ちず尚も加速する。それもUFOの腹に今まさに衝突せんという勢いで。

「なあ、オイ、ちょっと、危」

身体を動かそうにも勢いは以前変わらない。俺はそのままUFOの腹に顔面を強打し、歪む意識の中でこれって前代未聞とか前人未到の域だよなとか考えるもすぐにそれも消え失せた。


**


鼻の頭と額がずきずきと痛む。それに加えて頭の奥で大きな鐘を鳴らしているかの様に頭痛がする。目を開けてると一面真っ白な天井が視界に広がった。

「いっててて、何が、何だ? ってここはどこだ?」

重い頭を片手で支え、無理矢理立ち上がって辺りを見渡す。一面真っ白だ。真っ白な部屋だ。部屋というより一辺が5メートル程の立方体だ。窓もドアもない。まるで箱だ。天井や壁に照明が無いにも関わらず辺りは明るい。

「やっと起きた。大丈夫スか」

後方から聞き慣れぬ声がし無意識の内に振り向く。そこにはセーラー服を着た少女が体育座りをしながら左手で後頭部を擦っていた。

「アッ、パンツ」

「なっ!?」

短いスカートでこちらに向かって体育座りをしているんだからそりゃパンツも見える。少女は赤面させながら足をバタバタと動かし、最後はあぐらで落ち着いた。

「なんつー人ですか、アンタ。会って間もないJKのパンチラ拝むってどんな神経してんスか」

「いや、だって見えてたもんで、俺はそれを指摘しただけであって」

「まあいいッス。無防備に晒してたこっちに非が無いとも言えないんで」

「どうも」

最近の女子校生は物分りが良いなと感心する。

「それで、まさかとは思うが、これ君がやったの? その、これ。UFOとか?」

女子校生は狐につままれた様な顔をし、次にケタケタと笑い出した。

「オニイサン、面白いこと言いますねえ。ええ、そうッスよ! 実は我こそが地球の植民地化を企む悪の――」

「ああ、嘘だ」

「嘘ッスよ。その正体は地元の女子校に通うしがないJK。広瀬サキ。どうぞお見知り置きを」

広瀬サキと名乗った少女は深々と頭を下げる。つられてこちらも頭を下げた。

「広瀬……さんもUFOに引っ張られたってこと?」

「サキで良いッスよ」

「サキ……さん」

「さん付けで呼ばれるとこそばゆいッスね! 年下相手に何気ぃ使ってんスか!」

「んじゃサキちゃん」

「まあそれでいいデス。それで話を戻しますと下校中にUFOが現れたと思ったら、ポワワって光でぐんぐん引っ張られて最後に頭ぶつけましたわ」

「なるほど、俺も似たような感じだな」

そう言いながら俺は額を、サキちゃんは後頭部を擦って二人で笑った。

「そういや、オニイサンの名前を聞いてなかったッスね」

「ああ、俺の名前は――」

名乗ろうとした瞬間に俺の声は重たい金属と金属を擦り付けた様な音に遮られた。反射的に俺とサキちゃんは耳を塞ぐ。

「オー、ハウッタハウッタ。ゴメンネ、コノホシノタミヨ。ウルサカッタネ」

白い部屋中にイントネーションがめちゃくちゃな声が響く。天井を見上げるといつの間にか巨大なスピーカーが生えていた。

「ハジメニマズアヤマルネ、フタリヲカイシュウスルサイニ、アタマブツケチャッタヨ。ゴメンネ」

俺とサキちゃんは思わず顔を見合わせた。考えていることは大体一緒だろうが、お互いに声が出せない。

「マズハコレノムトイイヨ。アタマイタイノナオルカラネ」

すると床が少し歪み、形を変えたと思うや否やそのままテーブル状の物体が突如床から生えてきた。卓上には見慣れた半分は優しさで出来ている錠剤と透明な液体が入ったコップが乗せられていた。

「アト、ワタクシノコトバ、コノホシノゲンゴニホンヤクシテイルガ、ツタワッテルカ」

俺はコクコクと素早く頷く。

「ヨカッタヨ」

「ちょっと待ってくれ。……い、いや、失礼しました。待って下さい。幾つか質問いいでしょうか」

「ドウシタネ」

耐え切れず話を割ってしまった。自分自身に落ち着けよと何度も言い聞かせる。声の主の言ってる事に虚偽がないならまずこいつは人間じゃない。ここに拉致られた経緯を思い返す限り明らかに人の技術力を超えた事をやってのけたのは確かだが、俄に信じがたかった。しかしこいつは本当に宇宙人だ。ドッキリか何かだったらあまりにも手が込みすぎている。今は生かされているがコイツが人間の命を尊重しない奴だった場合どうなる。無礼な事を言って機嫌を損なわせてその場で殺される可能性もゼロではない。虫けらの様に殺されても全くおかしくない状況だ。

「……そのですね、ええと、まず貴方はどういった方でしょうか」

「オー、ジコショウカイガオクレタネ。ワタクシ、タンホイザトイウホシカラキマシタ、ジキーマデスヨ」

マジに宇宙人だ。動揺からくる汗がじわりと吹き出てきた。口の中が乾き舌が縺れる。

「そ、それではジキーマさんは、私と彼女にどういった要件があってここに連れてきたのでしょうか」

「カンコウツイデニ、コノホシノタミノブンカヲシロウトオモッテネ。イキナリツレテキテゴメンネ」

「……ぐ、具体的には何をすればいいのでしょうか」

「ソウソウ、コノホシノタミニヤッテホシイコト、リストカシテマトメタモノガアッテネ。モッテクルカラチョットマッテクダサイ」

「え、あ、はい。分かりま――」

「ちょっと待つッス、ジキーマさん!」

俺の横からサキちゃんが声をいきなり張り上げる。

「ン、ドウシタネ」

「サキ達は、元いた所に帰れるんスか?」

一番問いたい事をサキちゃんに言わせてしまった。しかしいきなり核心に触れすぎてしまったのではないか。俺は思わず生唾を飲み込んだ。

「カエスヨ。モチロンカエスカラアンシンシテホシイ」

そんな俺の不安とは裏腹に一番聞きたい答えが帰ってきた。自然と顔が緩み笑みがこぼれた。

「ジャアチョットサガシテクルカラ、フタリハシバラクヤスンデルトイイネ」

ジキーマのその声を最後に天井から生えていたスピーカーが音もなく埋もれていった。

「……はあ」

ため息と共に一気に気が抜ける。一先ずは緊張が解け、大きく安堵することができた。俺はその場に倒れる様に横になった。そこに少し興奮気味のサキちゃんが側に寄ってくる。

「驚いたッスね」

「うん、マジで驚いた。タンホイザ星のジキーマさんが観光で地球に来たって」

「驚いたッス」

「いるもんだな。宇宙人」

「いるもんスね。世界は広いスね」

「どうしたもんかね」

「取り敢えずは飲んどきますかね。半分は優しさで出来ている錠剤。あっ、でもお腹すいてる時に飲むと胃を悪くしちゃうかもッス」

サキちゃんがそう言うとテーブルと椅子が床から即座に生えてくる。卓上にはごはんと味噌汁と箸が配置してあった。

「驚きッスね」

「ああ」

「ハンバーグも欲しいッス!」

卓上にハンバーグが現れる。

「凄いッスね、宇宙人」

君もね、と言葉にする余力が残っていなかったので、俺は中途半端に頷きながら錠剤と水を飲み干した。


**


サキちゃんがハンバーグ定食を食べ終わって小一時間が経過した頃にまた天井から音もなくスピーカーが生えてきた。まずジキーマを名乗る宇宙人は何度も謝った。改めまして御免なさい。突然の非礼を詫ます。私は貴方達に致命的な危害を加えることはありません。そして全てが終われば貴方達を元いた場所に返す事を約束します。私のエゴに巻き込んでしまって御免なさい。御免なさいと。約束を守る保証が皆無なのが辛いが、俺たちには他に信じられるものがないが故にジキーマの言葉を信用するしかなかった。次にジキーマは俺たちが今いる白い空間の機能の説明を始めた。この空間は衣食住を満たせるものやその他諸々の雑貨程度ならば大抵はイメージするだけで壁や床、天井から生成することが出来るとのことだ。先ほど突如出現したハンバーグ定食の一件もこの空間の機能だったという訳だ。すこぶる便利なこった。それとこの空間で過ごす10時間は地球で言う約1秒とのこと。まるで都合の良さをSFで理由付けした様な安い話だ。

「アナタガタニコレカラヤッテホシイコトガ、ミッツアリマス。ミッツニシボルノトテモクロウシタヨ」

結局何をやらされるのか直前まで聞けなかったのでぶっつけ本番だ。握る拳に力が入る。

「マズハ、ウタ。ウタトイウモノヲヤッテホシイネ」

「……」

サキちゃんに目を向けると俺と同じように困惑していた。顔を近づけて小声でやり取りをする。

「……う、うた? 歌を歌えってことか?」

「歌えってことッスよね? アッ、でもウタっていう特殊な儀式とか指してるのかもしれませんッス。南米の方とかの」

「ナニソレ」

「サキも知らんッスよそんなの。あー、ジキーマさん? 歌を歌えってことで良いんでしょうか?」

「ソウヨ! ウタッテホシイ! コノホシノタミヲショウチョウスル、トテモウツクシイブンカ!」

「ってことはなんだ。歌って地球人しかない文化なのか? 超時空要塞もびっくりだな!」

「なんスかソレ」

「いや、忘れてくれ」

サキちゃんは顔を顰めた後に、スピーカーの方に向き直し大きく手を降った。

「一つ確認ッス! ジキーマさんジキーマさん!」

「ドウシタノ」

「楽器とか出せまスかね!?」

「ガッキ? ガッキトハナンデショウ? ブキカナニカデスカ」

「武器じゃねーッスよ、音を奏でるモノッス。じゃあいっちょやってみるッスね」

サキちゃんは大きく深呼吸をし、両手を床に向けて――

「いでよ、ピアノ!」

――声高々に叫んだ。禍々しく床が破れ、裂け目からモクモクと煙が上がる。そして次に閃光を放ちながらピアノがゆっくりと生成される。

「わお、カッチョいいッスね」

「……生成モーションまでお好みで弄れるの? やたら光ってたね」

「細かいことは言いっこ無しッス。はい、オニイサン。これ歌詞カードッス」

「ああ、ありがとう……ってこれ仰げば尊しじゃん! なにその選曲!」

「もう少しで卒業なんで今練習中なんスよ。それに版権的にも多分オーケイッス。ちなみにサキは楽器は何も弾けないので今回ピアノさんはオートプレイで行きますよ。それじゃミュージックスタートッス!」

サキちゃんが指をパチンと弾くと聞き覚えのある前奏がピアノから流れ始める。思えば人前で歌を歌うなんてこと何年もやってなかった。

「あ、ああ、ああ」

「なに緊張してんスか、オニイサン。そろそろッスよー! ほら、いちにーさんしー、いちにーハイッ!」

こうなったらもうヤケクソだ。音程なんて知ったものか。俺は最後の一拍で大きく息を吸い込む。

「あーおーげーばーとーおーとーしー」

「オ、オオ、ウタ。コレガ、……コレガウタ! ソウゾウシテイタモノヨリハルカニウツクシイ!」

興奮と羞恥心でピアノの伴奏がまともに聴こえない。サキちゃんは俺を見て笑いながらも大きな声を張り上げて楽しそうに歌っている。それを見ているとなんとなく緊張も解れていく気がした。よく響くいい声だと素直に感心した。そして願わくばこの時間よ、今すぐに終われと切に思った。


**


「スバラシイウタ、アリガトウネ。コノホシノタミヨ」

「喜んでくれたなら何よりッス。オニイサンどうしました?」

肩で息をする俺にサキちゃんが尋ねる。

「いや、ちょっと、久々に大きな声出して疲れて。水、水出てこい、水」

「ンモー、だらしないッスよオニイサン」

直ぐ様にテーブルと水が入ったコップが生成される。この光景も見慣れてしまった。コップを手に取りゆっくりと喉を潤した。

「アリガトウ、コノホシノタミヨ。コノクウカンノジショウ、セーブシタノデ、カエッタラワタシノトモヤカゾクニミセルヨ」

「マジッスか。下手したらタンホイザ星で地球出身の伝説のアイドルユニットとして崇められちゃうかもしれないッスよ。どうするスかオニイサン」

「勘弁して下さい。割りとマジで。いや本当に」

否定するも一つ目の要望を無事達成できたからか、妙な達成感からかあまり嫌な気はしない。それはそれでありじゃねえかなと思えてきた。

「ぶはあ、よっしゃ。ジキーマさん、一つ目のお願いが終わりましたよ。次は何をすれば良いんですかね」

「オオ、ソウダッタネ。デハツギハ、ナヤマシイガ。ウーン、キミタチハコノホシノニポーントイウトコロニセイソクシテイルノダッタネ?」

ニポーン。日本のことだろう。

「そうッスね。日本人ッスよ。ワ~レ~ワ~レ~ハ~ニ~ホ~ン~ジ~ン~ダ~」

首元を片手でトントンと叩きながら妙な声を発するサキちゃん。

「やめろやめろ。本場の人にやるギャグじゃない」

「それもそッスね。失礼しましたッス」

「ナラバツギハオリガミトイウモノ、ツクッテミテネ。コノホシノニポーンノタミ、ウスクヤワラカイモノカラ、サマザマナモノヲセイセイスルトキイタコトアルヨ」

「折り紙?」

「折り紙ッスか! 良いッスよ、お安いご用ッス!」

「仰げば尊しの次は折り紙か。なんだか海外の人に日本の文化を教えるコーナーみたいになってきたな」

「ジキーマさん、何か作って欲しいものはあるッスか? こう見えてサキは昔、折り紙サキちゃんの名をほしいがままにしてたッスよ!」

「マジか。すげえなサキちゃん」

「デハコレヲツクッテイタダキタイ」

すると床の中央部から半径5センチ程の球状の物体が出現し、白い鳥が穏やかな水辺から飛び立つ様が空間に投影される。

「鶴か。またベタな物が来たな」

「鶴ッスね。楽勝ッス」

「ニポーンノタミ、コノセイブツヲオリガミデヒョウゲンスルノハ、タノツイズイヲユルサナイトキイテマスヨ。タノシミデス」

「マジッスか。日本人凄いスね」

「まあ、そも折り紙で鶴を折るのなんて日本人くらいだしなあ」

「それもそうッス」

「デハザイリョウヲヨウイシマスノデ、オネガイシマシタヨ」

ジキーマはそう言い残すとスピーカーが天井に埋もれていった。それと同時に壁から白い紙が生成し始める。しかし紙は紙でも一辺3メートル程もある大きな紙だ。

「ははー。いやー、参ったッスね。デカいッス」

「デカいなこれは。テレビの企画でやりそうなデカさだ」

若干途方に暮れながらまず三角に折るための準備をするのであった。


**


「オー! ミゴトナゾウケイビ! スバラシイネ!」

「ンフフ、折り紙サキちゃんの名は伊達じゃないッスよ」

「折り紙サキちゃん様々だよ。しかし鶴一つ折るのにまるまる一時間掛かったぞ。いやはや疲れた。水出ろ、水。あ、やっぱ麦茶で。麦茶2つね」

すぐ手元に生成されたテーブルに置かれたコップを手に取ると中の氷がコップにぶつかりカロカロと心地のいい音が響いた。そのままもう1つの麦茶をサキちゃんに渡す。

「オッ、どうもッス。いやあ、やっぱり少し疲れたッスね。もう暫くは鶴も折り紙も見たくねえッス」

「同感だよ。ええと、ジキーマさんこれどうすればいいですか? ジキーマさんの居る方に受け渡しとかした方がいいですよね?」

「オー、ソウデシタヨ。アマリノデキニモニターノホウカラミトレテシマイマシタヨ。デハコチラニテンソウスルノデスコシハナレテネ」

ジキーマの言葉通りに俺とサキちゃんは鶴の折り紙から三歩ほど下がる。すると折り紙の周りに淡い光が集まり、ゆっくりと収束する。光が幾度か瞬くと折り紙は消えてしまった。

「……」

「何の説明も無しに物質転送とかいきなり使われるとビビるッスね」

「思ってたことを言葉にしてくれて有り難う」

「マジカデミルトタマラナイヨ。アリガトウコノホシノタミヨ。イイミヤゲガデキタネ。ハッハー」

無邪気に喜ぶジキーマを尻目に俺とサキちゃんは目を合わせ頷いた。サキちゃんも分かっている筈だ。そう、次で最後だ。次さえ終われば地球に、元いた場所に帰れる。歌に折り紙ときて次は何が来るのだろうか。手料理のごちそうとかこないだろうか。それならば楽だ。逆に最後の最後で俺とサキちゃんで殺し合えとかとんでもない要求が来たりしないだろうか。その時はどうしたら良いだろうか。不安で視界が歪む。だがどちらにしろ退く選択肢はない。ここまで来たなら最後までやりきってやろうじゃないか。

「ジキーマさん、お楽しみの所悪いですが、つ、次で最後です。何をすれば、……良いでしょうか」

緊張、期待、不安で声が強張る。だが俺の声は確かにジキーマに届いた。

「ツギデサイゴネ。ナゴリオシイガヤクソクハヤクソクデスネ。ワカリマシタ」

さあ鬼が出るか蛇が出るか。口内が粘着く。コップの中の残り僅かとなった麦茶を口に含みゆっくりと飲む。

「デハサイゴニ、コノホシノタミドウシデ、セイコウショウヲシテイタダキタイヨ」

セイコウショウ? せいこうしょう、成功賞、精巧商、……性交渉?

「……ブフォッ」

理解した瞬間、俺は口内に含んでいた麦茶をプロレスのヒールの如く噴出した。


**


「うっわ、汚えッス! 汚えッスよオニイサン!」

「いや、だって、お前、そんな、いきなり、……なあ?」

「普通こういう時は男より女がオーバーなリアクションとって、きゃあきゃあイヤイヤどうしましょうとかやる所ッスよ。オニイサンのせいで完全にそのタイミング逃したッス。どうしてくれるッスか」

「あ、ああ、うん、ごめんね。その、ジキーマさん? か、確認になりますが、要するに俺と彼女でまぐわえと?」

「いやーんッス」

サキちゃんはわざとらしく身体をくねらせる。

「ソウダネ。ハナセバナガクナルヨ。モトモトワレラタンホイザノタミハ、シユウドウタイナンダヨ」

「しゆ……? なんスか?」

「雌雄同体。簡単に言えば男でもあり、女でもあるってこと」

「なるほど。要はふたなりッスね」

「……なんで今時のJKがそんな言葉知ってんだ」

「ヒミツッス。乙女にヒミツは付き物なんスよ」

「ハナシヲツヅケテイイカナ」

「はいどうぞ、すんませんッス」

「ジツハネ、ヒトツメトフタツメノオネガイ、コノホシノブンカヲシルトドウジニ、モウヒトツノモクテキガアッタノネ」

もう一つの目的、それは即ち人間の男と女の交流をこの目で見たかったのだとジキーマは続ける。タンホイザ星は星の規模に対しての人口が極端に少ない。雌雄同体で単為生殖をすることも出来るが、出産することは大きく制限されている。それ故に他人とコミュニケーションを取る機会が極体に少ない。ましてや異性に対する交流の例は文献や書籍でしか知る術が無く、己自身が体験する機会もそもそもないのだという。今回の歌や折り紙の共同作業を通じて俺達が見せた行動は目を見張るものがあったという。

「ソコデサイゴニ、キュウキョクノイセイコウリュウトモイエル、セイコウショウヲシテイタダキタイ! ブンケンニモ、ホラ! ハカナクモウツクシイモノダトカイテアル! ミタマエ!」

麦茶を生成した時に生えてきたテーブルの上に本が続々と生成され、重力を無視してズラリと並ぶ。背表紙に目を通すと、『放課後エッチ!』、『ムチムチ生徒会長』、『先輩はM奴隷』etc、etc、

「……エロ漫画じゃねえか! しかも殆どが女子校生モノ!」

「オー、ワタクシノコレクションノヨサ、ワカッテクレタヨウデヨカッタネ」

「ふたなりは無いみたいッスねえ」

「またふたなりかよ! 冷静に探すな!」

「まあまあ落ちつくッス、オニイサン。サキとオニイサンがまぐわえば地球に帰れるッスよ? そうなんスよね、ジキーマさん」

「ソウネ。モチロンカエスヨ」

「ですってよ、オニイサン。ここで最後の踏ん張りをみせるだけッス。気合入れていくッスよ」

「……うん、まあ、そうなんだけどさ。確かに帰りたいんだけど」

「どうしたんスか」

「サキちゃんは良いのかよ。仮にも会ったばかりだろ、俺達」

「ははーん」

「なんだよ」

「はっはーん!」

「だからなんだよ!」

「……オニイサン、さては童貞ッスね。間違いないッス。オニイサンは童貞ッス」

「なっ! だ、だったらどうだって言うんだよ!」

「ぶぇっつにー。じゃあ逆に聞くッスが、オニイサンはサキが相手じゃ不満スか?」

「いや、それは……、い、嫌じゃないけど」

「ならそれで良いじゃないスか。据え膳食わぬはナントヤラッスよ」

「……はい」

「ちなみにサキも初めてッス」

「マジで!?」

「おうおう、たいした食いつきようデスネ。サキも思う所あってッスね。ま、続きはピロートークでってことで……。それじゃあジキーマさん! いっちょまぐわうので、どうぞ活目あれッス!」

「タノシミニシテルヨ」

サキちゃんはゆっくりと目を瞑り、幾度か大きく深呼吸をし、俺の方に向き直る。

「オニイサンも覚悟を決めるッス!」

「お、おう!」

「では行くッスよ! いでよダブルベッド!」

床がばっくりと破れ巨大なクレバスを形成した後、クレバスからもうもうと煙があがる。やがて閃光を放ちながらゆっくりとダブルベットがクレバスの中から重たい音を立てて生成され這い上がってきた。 

「さあ、クライマックスですよ、オニイサン!」


**
 

「とう!」

「うわ!」

ダブルベッドが生成し終えるや否やサキちゃんは俺の手を引っ張り、ダブルベッドへ勢い良く突き飛ばした。

「いきなり何を――」

「ナニをするッスよ、オニイサン。ジキーマさんの熱い情熱に応える為にも文字通り一肌脱ぐッス」

「おっさんみたいなこと言ってんじゃ……お、おい、ちょっと待てって! そんな乱暴に脱がすなって!」

「さあ、早く生まれたままの姿になるッスよ、オニイサン! ン、この服どうなってんスか。中々ボタンが外れないッスよ」

「んな強く引っ張るな! 破ける! 脱ぐから! 脱ぐからちょっと待ってろって!」

胸元のボタンを力任せにぐいぐいと引っ張るサキちゃんを引剥返し、すばやくシャツとズボンを脱ぎ捨てた。

「……ほら、脱いだぞ」

「なあにが脱いだぞッスか。まだパンツが残ってるじゃないスか。ナメてんスか。やる気あるんスか、オニイサン」

「いや、だってその」

「男のくせにモジモジするなッス! アッ、もしかしてパンツはサキに脱がして欲しかったんスか? ンモー、なら早くそう言うッスよー」

上半身を左手で抑えられ、空いたサキちゃんの右手が俺のパンツに伸びる。

「ではでは改めまして、オニイサンのオニイサンに感動のご対面ッス。ハイ、ご開帳~」

いよいよ、俺の局部がサキちゃんへ晒される。緊張か、それともムードの無さから来るのか、露出されたナニは未だいきり立っては無く、平常時のままだった。

「フニャフニャじゃないッスか、オニイサン。軽くショックッスよ。サキはそんな魅力無いッスか」

「そ、それ以前の問題だ。……って、オイ。何してる」

サキちゃんが狙いを済ませた四足動物の様ににじり寄ってくる。唇を一度ぺろりと舐める仕草が妙に艶っぽく映る。

「ンフフ、オニイサン。まずはちゅうッスよ、ちゅう。顔をこっちに向けるッス」

「……おう」

「ちょっと、オニイサン。ホントに顔こっちに向けただけじゃないッスか。こういうのは男で年上であるオニイサンの方から迫るべきっすよ。まあ、今回は特別ッス」

そういうとサキちゃんは俺を押し倒し、不意に唇を重ねてきた。突然の出来事に思わず四肢を硬直させ、目を見開いてしまう。

「んっ、……ちゅっ。ぷはぁ。まずはフレンチッスよオニイサ――オニイサン? 、目ぇギンギンに開いてちょっと怖えッスよ」

「あ、突然だったんで、その、すまん」

「もしかして緊張してるスか? オニイサン、キスぐらいしたこと無いんスか?」

「ば、ばっかヤロウ。き、キスぐらい俺だってしたこと……いや、無かったデス。すんません」

「大丈夫ッスよ。なんせサキも初めてッス。お互い初物同士ッスよ。安心するッス」

「にしては妙に場慣れした雰囲気があるような」

「疑うんスかあ? 女の子はいつだって耳年増なんスよ。ちょっとくらいませてても仕方ないんス。それじゃ再開ッスよ」

再度サキちゃんの顔が目前に迫る。俺もそれに引き寄せられるかの様に唇を重ねた。

「んむぅ、ちゅっ……んっ、ちゅ……はむ、ちゅぷ…・…」

小鳥の様に啄む軽いキス。唇と唇が触れ合うだけの軽いキス。それだけで俺は多幸感に包まれる。自分のことを現金な奴だと思うが、今は酷くサキちゃんが愛おしく感じた。サキちゃんの首元に手を回し、そのまま抱き寄せた。するとサキちゃんは何も言わず一度微笑んで、俺を抱き返してきた。

「オニイサン、オニイサン」

急に耳元で囁かれ、背筋がぞくぞくと甘く痺れる。

「……なんだ」

「結構甘えん坊ッスね。ちょっとカワイイッスよ」

「そうかな。そうかも。…‥ゴメン」

「謝ること無いッス。ホラ、頭撫でてあげますから、もっとリラックスするッス」

ゆっくりと頭を撫でられる。照れくさかったがそれ以上に心地良さが優っている。俺は目を瞑りサキちゃんの首元に顔を埋めた。

「やっぱカワイイッス、オニイサン。でもサキはもうちょっとキスしたいんスよね。顔を上げるッス」

言われるままに顔を上げ、向き合う。サキちゃんはニッと白い歯を覗かせながら笑った。

「次は深いのやりたいッス。なのでオニイサン、ちょっと軽く口を開けて欲しいッスよ」

「……んあ」

またもや言われるがままに口を開ける。するとサキちゃんも俺と同じ位口を開きそのまま唇を重ねる。

「んちゅ、はむぅ……れろ、じゅる」

生暖かい舌がサキちゃんとは別の生き物かの様に口内を這いまわる。舌先を丁寧に転がされ互いの唾液が甘く溶け合った。

「ンフフ、気持ちいいッスか? オニイサン。 ちゅる……んっ、んれろ…‥・。すごいッスね。ちょっとこれ、……病み付きになりそうッス」

俺は目を瞑り、ゆっくりと頷いた。

「んちゅ、れろ……頭の中に直接っ、ぺろ、れるっ、……水音が響いてるみたいで、凄いえっちいッス。ホラ、オニイサン。舌をもっと出すッスよ。いっぱい舐めてあげるッス」

「はぁむ、れろ、んちゅ……れろ、もっと、もっとッスよ、オニイサン。はむ、くちゅ。……いっぱいしゃぶってあげるッス。んれろ、んちゅ。……アハ。オニイサンのオニイサンもちょっと反応してきたスね」

サキちゃんは俺の股間に手を伸ばし、優しく撫でる。反射的に腰がビクリと浮いてしまう。故意か偶然かサキちゃんが撫でる手は裏筋の弱い所を執拗に往復する。下半身にじんわりと快感の熱がこもり股間の硬度が増していく。

「ちゅ、れろ……ぷはぁ。キスされながら手でされるの気持ちいいッスか?」

「……う、うん」

「どんな風にされるのがお好みッス? 要望があるなら言ってくれると助かるッス」

「それじゃ、そうだな、……そのまま握って上下に扱いてもらっていいかな」

「スタンダードな手コキッスね。お安いご用ッスよう」

そう言いながらサキちゃんは俺の股間を掌に包み、ゆっくりと扱き始める。

「んんっ、……ぐっ」

「アッ、痛かったスか?」

「……いや、……ち、ちが」

「血ッスか!? 大丈夫スか、オニイサン! 強過ぎたッスか! 痛かったスか!?」

「ち、違うって。 その逆で、その、……気持ち良いから、……もっと続けて欲しい」

「冗談ッス。知ってるスよ。オニイサンの顔見れば一発ッス。なら、もちっと強めにやってあげるッスね」

「……うん、頼む」

「素直なのは良いことッスよ。ご一緒に亀頭責めのオプションも如何ッスか?」

「……唐突に凄い単語を口走るなって。でもそれ、結構、魅力的かも」

「オニイサン、Mっ気あるッスね。んじゃ左手で先っぽを ……アッ、やっぱ駄目ッス」

「……うん?」

サキちゃんは上半身を俺に密着させそのまま覆いかぶさってくる。

「両手使っちゃうとオニイサンと、…‥ちゅう、しづらくなっちゃうスからね。……はぁむ」

ああ、なるほどと言う前に唇がサキちゃんの柔らかな唇で塞がれる。同時にぬるりと舌が口内に入り、妖美に蠢く。

「ちゅる、……くちゅ、はぁ。んっ、ちゅっ、……れろれろ」

先ほどよりもより激しい口内と股間の同時愛撫。

「むちゅ、んっ……はぁ。しーこ、しーこ、おっきくなれなれ、おっきくなるッスよう」

「んぐっ、サキちゃん、ちょっとそれ……す、すご、ヤバ……!」

サキちゃんの手によるストロークに俺の股間はみるみるうちに熱く滾り、完全に勃起してしまった。

「ちゅ、……ちゅるるっ。かなり大きくなりましたね。気持ちよかったッスか? キスしながら手でされるの。……ンフ。ほら、しーこ、しーこ」

「ああ、うん、……すげえ良い」

口から熱をもった吐息が漏れ出る。それはサキちゃんも同様だ。

「ちと、あっつくなってきたッスね。アッ、サキも脱げば良いんスね、忘れてました。ちょっと待つッスよ、オニイサン」

サキちゃんは一旦、ぴったりと寄せていた身体を離す。名残惜しさにサキちゃんの身体を追って両手が伸びてしまう。

「メロメロじゃないスか、オニイサン」

ニヤニヤと笑いながらサキちゃんはセーラー服の裾に手を掛けて躊躇なく脱ぎ捨てる。そして直ぐ様に手慣れた手つきでブラジャーのホックを外した。

「どジャアァああ~~ん。おっぱいッスよ、おっぱい。JKの生おっぱい。どうッス? オニイサンは幸せモノッスねえ」

サキちゃんは胸を両肩で寄せて身体に左右に振る。若干馬鹿にされた気もしたが、JKの胸が眼前にあるならば些細な問題だ。思わず釘付けになる。それに――

「……小振りだが、形の良い胸だ。健康的なハリで美しい曲線美。乳首も乳輪も大き過ぎず小さ過ぎもせず、均等の取れた非常に良い按配。そして、若さから来るものなのだろうか。その乳首は色素の沈着も無く綺麗で穏やかな薄桃色だ。更に胸の膨らみよりやや下に目を移すと、うっすらと浮き出る肋骨がまた――」

「オニイサン、地の文が台詞になってるッス」

「アッ、ゴメン」

「褒めてくれるのは嬉しいスけどね。ただ小振りな胸ってのは納得いかんス! これはまだ成長途中なんス! 発展途上で数年後にはバインバインになるッス!」

「いや! ここは言わせて貰うが俺はそのまま君でいて欲しい! 正直、今の今まで俺はおっぱいは大きければ大きい程良いとか言っちゃうような巨乳論者だったが、君のおっぱいを間近に目にして大きなイノベーションが起こった! 小振りなおっぱいも、いい……ってね!」

「オニイサン、おっぱいの事になると早口になってキモチワルイッスね。でもね、オニイサン。世の男はみんな巨乳の虜ッスよ」

「違うね!」

「嘘ッス! そいじゃ確かみてやるッス。オニイサンの顔に押し付けてやるッスよ」

「確かみてみろ!」

「オラッ!」

飛び掛かるように俺に抱きついた後に、サキちゃんは宣言通り自らの胸を俺の顔面にグリグリと押し付けてくる。控えめな柔肉が顔面を覆い、むせ返りそうな女の臭いが鼻孔をついた。

「うぷっ、ば、バッチコイやあ!」

「オラオラ、どうスかオニイサン? おっきくないから顔に肋骨が当たりマスし、埋もれさすことも出来ないから夢見心地になることもないッスよね? これでもスか、これでもスか! アッ、でもこれ乳首がオニイサンの顔に擦れてちょっとキモチイッスねえ。アハ、これもこれでちょっといいかもッス。……い、いや違うッス、今はオニイサンッスよ。 こんな小振りなおっぱいでもオニイサンのオニイサンはオニイサンでいられるッスか!? ……い、いられるみたいスね。それに、なんかさっきより、またちょっと膨らんでる気もするッス……」

「……正直、たまらんです」

俺はサキちゃんへ惜しみのないサムズアップを送る。

「オニイサン、実はロリコンだったり? マゾでロリコンってまたこりゃ随分と業が深いッスね」

「ほっとけ! それにJKを指してロリとか言っちゃうと俺より業の深い人達に怒られるぞ」

「それもそッスね。それはそうと、オニイサン。ちょっと提案がありましてッスねえ」

「どしたの。改めて」

「ええとですね、オニサンのイノベーションはともかく、つい先程、サキにもイノベーション? ……がありましてデスネ……」

両手をぐりぐりと弄りながら、俯くサキちゃん。垣間見えたその顔はどこと無く赤面しているかの様に見えた。

「オニイサンと、……その、き、キスした時にッスね? 気が付いたんスけど、……さ、サキ、舐めるのすんごい好きみたいッス。だからッスね、オニイサンのオニイサンもオニイサンになったことですし、次は、ちょっとこれ、な、舐めてみたいなあ~って。……駄目スか?」

駄目な理由が何処にあるのだろうか。あるのなら俺の元に持ってきて頂きたい。見事それを砕いてやる。俺は頷き、サキちゃんへ再びサムズアップを送る。

「うひゃあ! マジスか、やったあ! オニイサンがドMで助かったッス、良かったッス!」

「ドは余計だ。ドは。……しかし、まあなんだ。俺も、その、フェラとかされんの初めてだから、……まあまあ優しくね」

「男のくせに何言ってんスかキモチワルイ! いきなりマックスでいくッスよ。男なら当たって砕けるッス」

そう言うとサキちゃんは俺の下半身に向き直り、股間に顔を寄せる。

「改めて見ると大迫力ッスねえ。血管とか浮き出ててちょっとアレッスね。若干かなりキモいッス」

「オブラートに包めてないぞ、サキちゃん」

「照れ隠しッスよ、オニイサン。それじゃ早速、……いただきマース。……はぁむ」

「オッフゥ! い、いきなり咥えるの!? 最初はまず舌先でアレして、そのむず痒さにどうにもこうにもいかなくなって俺から、『なあ、サキちゃん、次は咥えてくれよ』って頼むパターンじゃ!? ……ッング!」

「ふんむっ、……んちゅっ、……はむ、ちゅぶぶ、ちゅぶ、れるっ……んはあ。‥…ンフフ。せっかくオニイサンのオニイサンがこんなにもやる気出してくれたんスからね。……はむ、ふぁふぃもふぁんふぁっひゃうひゅよ……」

「ちょっ、んっ、何言ってっか分かんねえけど咥えながら喋るの……や、ヤバいって!」

「んれる……ぴちゅ、んぢゅ。……ン、なんか先から出てきたッスね。アッ、カウパー! これカウパーッスね! つまりこれはオニイサンが感じてる証拠!」

「……その通りだよ。だからちょっと、もうちょっと大人しめにーー」

「俄然やる気が出てきたッス! んあーむぅ、ンフフ。れろ、ちゅくっ、ちゅぷっ……はあ。……んぢゅるるる」

「っく。んぐっ!」

想像以上。只々その一言に尽きた。エロ本等でフェラされてヨガる男なんてのは星の数程見てきたが、確かにこれはヤバい。舌先が陰茎を容赦なくなぶり、睾丸から精液が迫り上がってくる感覚を覚える。

「んぷ、じゅるる……、んっぷ、んっぷ、……んぢゅるるるる、……ぷは。お口でスルのも意外と疲れるッスね。どッスか? オニイサン。上手にやれてるッスか?」

「で、出来て、いるから!」

「れぇろ、んっ、……ちゅっ、れるれうれう……ふぇふぃふぇいるはら? んぷ、……ちゅぷ……んちゅ、れろぉ」

「……出来てるから! ちょっと、マジでっ……!」

「んぷっ、れろ……れるる、ぢゅるる、んぷっ、……ンフフ。れろ、ぴちゃ……んぷっ」

「ま、マジで、あっ、ちょっ、……でっ、で……」

「ちゅく、ぺろ、んれろれるれる……ンフフ。んっ、ちゅ、ちゅく、……ぢゅっ、ぢゅぞっ、ぢゅるるるるるる」

「……出るっ!」

「んっ!? んんーっ! ……んっ、んぢゅっ、んぷっ、……ケホッ、んぢゅっ、……ケホッケホッ」

目の前が白くフェードアウト。頭に一瞬靄が掛かった感覚。その刹那、俺は自身の欲望をサキちゃんの口内にぶち撒けていた。チカチカと白い火花が舞う。意思とは関係なく腰がガクガクと痙攣を起こす。快感と羞恥が鬩ぎ合い身を捩る。一度、更にもう一度、身体が跳ねた。

「ほふぃいはん、ほふぃいはん」

目を潤ませ口内を膨らませたサキちゃんが俺の内腿を叩き、俺は光悦な意識の中から我に帰る。

「ひょ、ひょっほ、ほふぃいはん? ふふぃのははのほれ、ふぉうふれはいいっふは?」

「……ん……あー、どうしようか。まあいいや。ペッてしちゃいなさい。ペッて」

「ふぁい。……うええー」

「まてまてまて! 俺の股間に垂らさなくても良いだろう!?」

「得も言われぬ味ッス。おいしいおいしい言ってるエロ漫画は全部嘘ッス。奴ら味覚がヤバいか淫魔の類ッスね。オニイサンも味わいたいならセルフでどーぞッス」

「いや、遠慮しておく」

そう言いながら俺は濡れタオルを生成し、自らの精液にまみれたナニを丁寧に拭き取る。サキちゃんは不満そうな顔をして俺の膝をばしばしと叩いてきた。

「それにしてもオニイサン、ちと早くないスか!? やってる最中に必殺技とか色々考えてたってのにどれも試せず仕舞いッス」

「サキちゃんそれ以上は戦争だぞ。スピードを表す単語は慎むべきだ。さもなくば俺の初体験のエピソードがとんでもないトラウマに変貌してしまう」

「んあー、悪かったッス。サキもオニイサンの反応が面白くて責め過ぎたと思うス」

「分かればよろしい。それで、達してしまった訳だが。これで終わりって事ではないよな」

俺がそう言うとベッドの脇に空間投影機が生成され、ホンバンガマダダヨと文字が投影されスクロールする。

「まあ、そうだよね」

「ちょっと、なに浸ってんスか。賢者スか。オニイサンはサキのお口にぶっ放して満足かもしれないッスけど、サキはまだまだアレッスよ」

「そんなこと言っても、ホラ。俺のオニイサンがサキちゃんの口撃によってこの様に。男のエレクチオンにはクールタイムが必要なんだよ。だからちょっと休憩ーー」

サキちゃんは手をポンと打つ。

「なるほど。つまりオニイサンのオニイサンが再びオニイサンすれば良いってことッスね。了解ッス。……いでよ、拘束具! そしてオニイサンを捕らえよ!」

サキちゃんがそう言い放つとベッドシーツの表面が盛り上がり、黒く太い革のベルトが生成された。そしてそれは4つに分裂し、それぞれが俺の四肢を捕らえ素早く巻き付き末端はベッドに同化する。なるほど、俺は大の字に拘束された訳だ。身動きが取れない。

「な、なにをするか!」

「それを聞くんスか? 分かってるくせに。オニイサンは卑しい人ッス」

サキちゃんの眼光が妖しくギラリと光る。

「いや、ちょっと、イッたばかりでね? 辛いと思うのよ。だからちょいと休憩をね?」

「却下ッス。すぐにまた大きくしてあげるスから覚悟するッスよ。それにこの空間で何かを出したり出来るのはサキだけじゃないッス。その気になればオニイサンはこのベルトを外して逆にサキをどうにかできる筈ッスよ? なんでしないんスか?」

「そ、それは……」

「だーいじょぶッス。皆まで言うなッス。要するにオニイサン、期待してるんスね」

「……お見通しかよ」

「お見通しッス。オニイサンはJKに縛られて興奮するド変態のドMッス。……でもね、オニイサン。期待してるのはオニイサンだけじゃないッス」

「……何?」

「サキもッス……はあむっ」

「……ぐっ」

亀頭がサキちゃんの口内に包まれる。頬の内側の筋肉を匠に動かし、亀頭全体を揉みしだく。絶頂に達してあまり時間が立っていないく、通常時より更に敏感になっている股間に、再び血液が集まりだす。

「さ、サキちゃ……、も少し弱目に頼む。こそばゆいというか、なんていうか、なんて言ったらいいんだこの感覚」

「んっ、ぢゅぶっ、ぢゅっ、ぢゅぶ……ぷは。弱めませんッスよー。しかしあれッスね。フニャフニャになってるこれをお口で弄ぶってのも、結構楽しいッス。やっぱ先っちょと裏筋とか弱いみたいスね。重点的にやってあげるッスよ。あむっ」

「んなあっ、だから、マジで敏感になってっから! くっ!」

「ぢゅぶっ、んれるれる、ちゅっ、……ちゅぷ。ふぃんふぁんにふぁっへるふぉふぉろをふぇめられるっふぇのふぉ、……ぢゅっ、ぢゅぷ。ふぉれはふぉれれいいんひゃないふは?」

「あっ、んぅっ……。だから何言ってっか分かんねえよサキちゃん!」

「……ふぉんなのふぁふぉうふふぁ? んぢゅっ、ぢゅぶぶっ、んっ、ぢゅぼ、……んぢゅるるるるるるるっ」

「あっ、がっ……」

強烈な吸引。左右の頬を引っ込ませながら亀頭全体が吸引され、同時に舌が裏筋を何度も往復する。股間から脳髄へ電流が駆け廻り、強い快感がじんわりと下半身から全身へ広がっていく。

「ぢゅぶぶっ、ちゅっ、んぽ、ぢゅっ、んっ……ぢゅうぅぅぅぅっ! ぷあ。……ンフフフフ。どうッスか、オニイサン。先ほど思いついた必殺技の超バキュームッス。相手は死ぬッス」

「こ、殺してどうする。つうか、殺す気か。ちょっと飛ばし過ぎ。休ませて欲しい」

「まだ言ってるスか。オニイサンよりオニイサンのオニイサンの方がよっぽど素直ッス。ホラ、ちょっと、いや、大分硬くなってきたッス」

「マジで。マジだ。マジか」

「落ち着けッス。オニイサンは自分で思ってる以上にマゾの気が強いってことッスねえ。それじゃ次は先っちょを強く吸いながら手で竿の方も扱いてあげるッスよ。技の1号、力の2号ッス。いざ活目あれッス。……んあーむっ」

「どっちが1号でどっちが2号だよ! ……あぐっ、うっ」

サキちゃんは宣言通りに亀頭先端を強く吸いながら、右手で竿の握り、扱き始めた。男性器に慣れてきたからなのだろうかか。それともコツが掴めてきたのだろうか。扱き方は一番最初に俺にした時のものとはまた違う動きで、手の捌き方が大胆になっていた。竿の根本から頂点であるカリ首にサキちゃんの指が到達する度に股間の強度が増していく。

「ぢゅうっ、ちゅぶっ、ぢゅくっ、んぢゅるう……。サキの手とお口の中でどんどん膨らんできてるッス……。凄い。……あむっ、んく、れる……ちゅっ、ちゅる」

「さ、サキちゃん。分かってると思うけどやり過ぎると、ま、また俺出ちゃうからね?」

「んぢゅぷ、ちゅぶ、んんっ、……ふぁかっふぇるっふ。んちゅ……んむぅ、んんっ、ちゅぴ、んれる、んぢゅうるるるっ……ぷあ。……段々分かってきたッス」

「な、何が?」

「オニイサン、先っぽ舌でクリクリされるのがめっちゃ弱いみたいッス。……はむっ。んぢゅっ、はあ……。んれうれうれう……、ほら、ふぉうひはふぉひに……ぷは。こうした時に腰が浮いてビクビクするッス。どうスかね」

「……う、うん、確かに気持ち良い」

「アハ、良かったッス。ならこれに手で扱くのも加えてスパートかけるッスよ。ギンギンになるまで後もうちょっとっぽいスからね。……あむんっ」

「……くっ」

「ンフフ、ふぉいひゃ、いふっふよー。……んれる、れるれる、んんっ、……ふう。……えれえれえれえれぇ、んえろえろえろえろっ、んっ、ちゅっ、くちゅ、んぷ」

鈴口の回りに円を描く様にサキちゃんの舌が踊る。口内の中の舌の動きは直接見ることは出来ないが故に、淫猥な想像を掻き立てられ、より興奮を覚えた。

「んっ、ちゅぶ、れろれろれろぉ……はぁ。はむっ、んうっ、ぢゅうっ、ぢゅぷ、んれる、んれうれうっ」

サキちゃんの的確な愛撫により股間の膨張はいつしか最大まで達していた。

「さ、サキちゃん。もうギンギンだからねっ? ……くっ。こ、これ以上やると!」

再び睾丸から尿道へ精液がこみ上げてくる。しかしサキちゃんは薄く笑みを浮かべるだけで止めようとはしない。

「もうひょっほふぇふ、もうひょっほ……。れろぉっ、ちゅっ、ちゅぷっ、んっ……ちゅるっ、んれるれる。……はあむっ」

「だっ、まっ、……うおおっ、ちょっと待って待って待って、ストップストップサキちゃん」

「んちゅ、ちゅぴっ、ぢゅっ、んぷっ……ふぅ。れるっ、れるれろっ。ちゅうっ。……もうひょっほっふ」

もう直ぐにでもまた達してしまいそうだ。グツグツと煮えたぎるマグマの様に精液が尿道へ流れ込む。

「あっ、あっ、……で、出そっ……」

「もうひょっほはまんっふ。んぢゅるるるるうぅっ、ちゅぶっ、んっ、ちゅっ、ちゅぶぅっ、んぢゅっ、んぢゅうううううううぅ!」

「あっ、出っ……、いっ、イクッーー」

「ぷはあっ! 駄目ッス!!」

目の前がチカチカし、絶頂へ達する今際の際、サキちゃんは俺の股間から口を離し、同時に竿の根本を親指と人差指で作った輪で強く握りしめる。

「駄目ッス、我慢ッス、寸止めッス! 男なら気合見せるッスよ、オニイサン! ホラ、指できつーく握っててあげマスから精液早く戻すッス!」

「がっ、あっ、……ん、んな無茶なぁっ……」

「無理を通せばナントヤラッス! ホラッ! ホラッ!」

「あぅっ、……グッ……はあっ……!!」

腰ががくがくと震え、額には玉の様な汗がじわじわと滲む。視界が一度大きくぶれて、集点が再び正常に戻る。

「……収まったスか」

「はぁっ、はぁっ、はぁっ……ゲッホ。……ひ、ひどいぜサキちゃん」

「謝るッス。ゴメンナサイ。……でも、オニイサン」

「な、なに……」

「オニイサンのオニイサンは先程サキの口にぶち撒けた時以上にオニイサンになってるッスよ。素敵ッス」

「……ちょっともうこれ収まりつかんぞ」

「それで良いッス、オニイサン。そのまま、それで、……さ、サキの、……サキのに」

「大丈夫だ、サキちゃん。皆まで言うな」

俺は額の汗を勢い良く吹いた後に、サキちゃんへサムズアップを送った。


**


「……さて、俺は例によってまた拘束されている訳だが」

サキちゃんは縛られて仰向けになっている俺の上に跨った。

「……よっこいしょっと。オニイサンは拘束されたまま騎乗位で童貞喪失したいって訳ッス。とんだド変態ッス」

「同様にサキちゃんは拘束した男に乗っかって処女喪失したいって訳だ。とんだド変態だな」

「類は友を呼ぶとは言ったものッスね。もしかして、サキ達って結構お似合いなんじゃないッスか?」

「ハハハ、違いねえ」

サキちゃんは後ろを向きスカートに手を掛けた。そしてチャックをゆっくりと下ろしていく。その手は若干震えているの様に見えたが俺は見ぬふりをした。次にパンツに手を掛ける。下ろすその手には若干の躊躇があったものの、直ぐにそれも失せたのか一気に脱ぎ落とした。サキちゃんは俺の方へ向き直る。

「文字通り一糸纏わぬ姿ッス。すっぽんぽんッス。丸裸ッス。どうスか、オニイサン」

「ああ、綺麗だよ。すごく綺麗だ」

そう口走った瞬間に、後悔してしまった。今の言葉は嘘や偽りは無い素の言葉だ。ただ普段の自分から想像もしない甘ったるい言葉だ。羞恥で顔を隠したくなるが縛られているので、それも出来ない。

「ンフフフフ。縛られておっ立てながらお世辞言われるのもちょっとアレッスね。まあ、でも良いッスよ」

案の定、馬鹿にされた。それもそうだなと思い軽く笑った。

「なあに笑ってるスか」

「いや。……ハハ。ムードもヘッタクレもねえなあってさ」

サキちゃんは一度きょとんとするが、直ぐに照れたように笑う。

「フフ、確かにそうッスね。サキもね、よく妄想したもんスよ。自分の初めての相手はどんな人かな、何処でするのかな、どんなふうなのかなって」

「うん」

「それがね。まさか会ったばかりの見ず知らずの相手と、地球上かも微妙な謎の空間でこんな初体験とは思い付きもしなかったッス」

「そりゃあ、なあ」

「これじゃ人に言っても絶対に信じてもらえないッスね。困ったもんス。……でもね、オニイサン。サキ、思ったんスよ」

「……うん」

「こんな、……こんな不思議体験がサキの処女で済むんだったら安いものだって、思ったんス」

「……なるほど」

「ところで、オニイサンも本当に良かったんスか? こんな見ず知らずのJKが初めての相手で。こんなちんちくりんの小娘よりも、おっぱいバインバインの年上のお姉さんに優しく手ほどきされる方が良かったスよね」

「いやっ、そこはまあっ、悩ましいが……」

「悩むんスか。気ぃ使ってそこは『初めての相手はサキちゃんでめちゃオーケイだよ、ハハハ』とか言ってくれッスよ」

「最後まで聞いてくれよ。そんな風にこだわり過ぎていたからこそ今の今まで童貞だった訳だよ。サキちゃんに同調するようで悪いが、サキちゃんの初めての相手になれるのならば、その、お、俺の童貞くらい安いもんだよ」

「……ああ。……え。……なんスか。もしかして今告られたッスか!? マジスか、オニイサン。うひゃあ! もう一回言うッス! オニイサン!」

「は、初めての相手はサキちゃんでめちゃオーケイだよ、ハハハ」

「ちーがうッス! そうじゃないッス! もう! ……ンフ、フフフッ」

「ハハハ……勘弁してくれ」

そう言いながら二人で笑った。


**


「さて、じゃあ始めるッスよ。痛いのは最初だけッス。辛かったら天井の染みを数えるんスよ?」

「……もう何もツッコまねえぞ」

「それは困るッス。オニイサンが突っ込んでくれなきゃ終わるものも終わらないッスよ」

「……」

「拗ねちゃイヤッスよう。これはサキなりの照れ隠しッス。乙女の恥じらいッス。受け止めてくれなきゃイヤッスよ」

「分かった分かった。んじゃ始めるぞ……と言いたい所だが、生憎俺は縛られて身動きが出来ない。主導権はそちらにある」

「承ったッス。任せるッスよ。……それじゃちょいと失礼してと。……んっ」

俺の性器の先端にサキちゃんの性器があてがわれる。ぴちゃりと水音が響いた。

「すっげえ濡れてる」

「そういうことは気付いても言っちゃ……んくっ、……駄目ッスよぅ、オニイサン」
 
「ご、ごめん」

「こ、擦り付けてるだけでも、……んっ、結構良い感じッスね。あっ、……ふぅ、それじゃオニイサン。……の、飲み込んじゃうッスよ」

サキちゃんはそう言うと腰をゆっくりと落とした。

「んあっ、お、オニイサン、見えてるッスか? ほ、ほらぁっ、どんどん、……は、入っちゃってるスよっ」

「うおっ、……っぐ。入っていってるな……」

「あんっ、……凄いッスね。さ、サキ達本当に、んっ、……え、エッチしちゃってるッスよ、ンフフ」

亀頭の先端がずぶずぶとサキちゃん自身に埋もれていく。先端部からサキちゃんの体温を感じる。サキちゃんは一度ビクリと腰を震わせ、顔を俯けた。入り口は想像以上に狭い。先端だけしか挿入していないにも関わらず、サキちゃんの中は俺を吸い付いて離さない。これまでのサキちゃんの言動からくるギャップが劣情を煽り立てた。

「まっ、まだ、先っちょだけしか入って、……な、無いッスからね。焦らすようで、……悪いスけど、ゆっくり挿れていくスね。ちょっとサキ、あくっ、や、ヤバいんで……」

「やっぱり痛い? 大丈夫か?」

「ち、ちっ、違うッス、オニイサ……あっ、んぅ! いっ、……痛みは勿論あるんスけどね……」

ふるふると身体を震えさせながらサキちゃんは続けた。

「何でッスかねっ……い、痛いのは、んっ、……ふうっ。か、覚悟してたんスけど、うんっ……い、一時期、乗馬やってた、からスからね?」

「じょ、乗馬?」

サキちゃんは身悶えこそするものの、腰を下ろすのを辞めようとはしない。

「もしくは、日頃の、ひ、一人、エッチが……あっ、……ちと激しかったからスかね。痛いのは確か、なんスよ」

「ちょ、サキちゃん。本当に大丈夫?」

「あっ、ぅんんっ! へっ、平気ッス。その、なんでなんスかね。い、痛みより、気持ち良いのがっ、……くぅっ、う、上回ってるんスよ。正直ちょっとでも気を抜いたら、その、……い、イッちゃいそうッス。ンフフ、そ、そこでオニイサン。ちょっと、あっ、……アレなんスけど」

俺の耳元にサキちゃんは顔を寄せる。熱い吐息が耳に吹きつけられた。

「その、一気に……こ、腰を落としてみたいッス。そのままイッちゃうかもしれないスけど」

その吐息混じりの囁きは俺に有無を言わせなかった。その声を理解するや否や俺は反射的に頷いた。

「ンフフ、ありがとうッス。それじゃあ失礼して、……んっ、く……、あ、……んやぁっ、……んっ、ふぅううう!」

カリ首の辺りまで飲まれていた肉棒を、サキちゃんはそのまま強引に根本までねじ込んだ。全体が柔なかな肉壁に包まれ快感が波のように腰から全身に伝わる。

「あっ、ふっ、……んあぁっ。おっ、オニイサン、ど、どうスか? 全部入っちゃい、……んんぅっ、ましたよ……」

「ああ、凄い。サキちゃんの中凄い畝って、暖かくて……」

ぼんやりと感想を述べる俺にサキちゃんは急に抱きついてきた。

「あっ、やっぱ駄目ッス、無理ッス、い、イクッ、……んなぁっ、い、イクイクッ。あっ、や、やだっ。オニイサン、見ないでっ、……いやあっ!」

膣壁が急激に締まり、肉棒が刺激される。サキちゃんは全身が痙攣し上方に顔を仰け反らせ、魚の様に口をぱくぱくと幾度か動かした。

「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ、……んっ、ふぅー、はぁーっ、え、エヘヘっ、さ、サキもオニイサンのこと、馬鹿にできないッスねえ。っふぅ。そ、想像以上スね、これは。はぁーっ、……お、オニイサンは大丈夫スか? イッてないッスよね」

「だ、大丈夫。俺もさっき1回イッてなかったら、正直ヤバかったと思う」

「ンッフッフ、さ、サキに感謝するッスよ。全て計画通りッス」

「嘘つけ、今想像以上って言ったばかりだ」

「……や、野暮なことは言いっこ無しッス。ちょっと落ち着いてきたんで、このまま続けるッスよ、オニイサン」

「良いのか? サキちゃんイッたばかりで……」

「良いッス。オニイサンもサキの中でさっきからビクビク跳ねてマスし、これ以上焦らすのは可哀想ッス。ほら、行くッスよ」

「うぅぐっ」

サキちゃんの腰が緩やかに上下し始めた。動く度に肉棒が膣内を押し広げる。

「んぁっ、い、イッたばかりだから、やっぱり敏感になってるスけどっ、ぅんっ、さっきよりは平気そうッス! ふぁっ。……どっ、どうスか、オニイサン、サキ、ちゃんと、……あんっ、出来てるスか?」

「で、出来てるからっ」

「ンフフ! それじゃもう少しペース上げるッスよ! あっ、スゴいッス、オニイサンッ。サキの奥に、……ふぁっ。オニイサンの先っちょが届いて、あはっ、まるでちゅーしてるみたいッスねっ!」

サキちゃんの腰を振る速度が更に上がる。俺もイッたばりとはいえ、このまま続けてたら先ほどの二の舞いになる。それも時間の問題だ。

「ほーら、んあぁっ、どうッスか? サキの子宮の入り口とっ、んっ、はぁ、オニイサンの先っちょが、ちゅーって、ほらっ、ちゅーってしてるッスよ?」

「サキちゃん、あんま激しくすると、また俺っ、すぐイッちゃうから!」

「んっ、……ぁんっ。……だあめッスよ、オニイサン。独り善がりなエッチじゃモテないッスよ? んっ、ふぅー、こ、今度はサキと一緒にイクッス。じ、ジキーマさんが持ってたエロ漫画みたいに!」

「えっ、エロ漫画を引き合いに出すな! 確かに理想的だがっ」

「なら気張るッスよ、オニイサン! あんっ、魅せつけてやるッスよ。ジキーマさんにっ! それとっ、ふぁあっ、オニイサンとサキでぇっ、……ふ、二人でっ、さ、最高の初体験にするッス!」

「な、なるほど。それは確かにゴキゲンな初体験だ。だがそれにしてもだなぁっ」

「あっ、あっ、……あふっ。なんだかんだ、言いつつもオニイサンだって腰が思いっきり浮いてるじゃないッスかぁっ。ぅんっ、んっ。もっと自分に正直になるといいッス! それにっ、が、我慢も必要ッスね」

「くっ、くそう! 真綿で首を絞めるとは正にこの事だぜ!」

俺は考えも無しに腰を大きく突き上げた。快感のゲージがあるとするならもうとっくに振り切れていることだろう。しかし尻に力を入れ、歯を食い縛り必死に堪える。

「あっ、んやぁあっ!? ちょ、ちょっとオニイサン!? あっ、あくまで攻めるのはサキの方ッス! ふああぁっ。お、オニイサンから攻めるのは、あんっ、ず、ズルいッスよぉっ!」

「ふ、二人で、……最高の初体験、……だろ?」

「キメ顔で何寝惚けたこと言ってるスかっ、オニイサンッ、……あっんぅ!」

「サキちゃんが先に言い出したんだろう!? こんにゃろめ、こんにゃろめ!」

「だぁっ、だからぁっ、……んやぁっ、オニイサンからそうやって動くとっ、サキのいい所にっ、ゾリゾリってぇっ、……するッスから! あぁんっ!」

「それがっ、そ、それが狙いだ! サキちゃんにも早くイッて貰わないと、お、俺もどうにかなりそうだからっ」

「なっ、なるほど。それもっ、そッスね! ふやぁっ! サキもっ、んあ、お、思いっきり、腰っ、うちつけるんでっ、オニイサンもガンガン突き上げるッスよ!?」

「あ、ああっ、分かった!」

俺は無心に腰を振った。さながら壊れた玩具の様に。サキちゃんも負けじと身体を淫らに揺らす。汗がこめかみから顎を伝い、雫になって俺の身体に落ちる。

「おっ、オニイサッ、んんぅっ! す、スゴいッス。ふあぁっ、さ、サキ、気持ち良すぎてっ、訳分からなっ、くぅっ、あんっ、んはあッ!」

「俺もだっ!」

「お、オニイサン! サキ、もう少しでまたっ、い、イッちゃいそうッスっ! ほらっ、サキが中でっ、お、オニイサンのをきゅっきゅって、締め付けてあげるスからぁっ! ほらっ、オニイサン、どうスかっ? ほらっ!」

「さ、サキちゃんそれ、や、ヤバ……うぐっ」

「んっ、あふぅっ、ほらほらぁ、オニイサン、もっ、もうイッちゃってもイイッスからね? んやぁっ、し、絞り取ってあげるッスからねっ。……っていうかもうイッちゃって下さいッス! あっ、んぅんっ、さ、サキの方がもうっ、あんっ、あっ、あっ、だ、ダメッス、だ、ダメダメッ!」

サキちゃんの腰のうねりがより一層激しくなる。俺はそれに合わせてスパートをかける。

「あっ、オニイ、サッ、ちょっ、はっ、激しいッス、あんっ」

「さ、サキちゃん、俺、もう……」

「さ、サキもッス、もうダメッス、お、オニイサンッ、んあぁっ、さ、サキも、……も、もう、イッちゃ……、あっ、あぅっ! んひぃっ、い、イクッ、あっ、い、イクイク、い、イッちゃ……うあぁっ!」

サキちゃんの身体がより一層、大きく、跳ねた。

「オニイサンも、い、一緒にイクッスよっ、あっ、……い、イク、イクイクイクゥ、あぅっ! んんうぅうぅうぅぅぅっ!」

膣内が強く収縮し、肉棒を締め付けた。耐え切れず俺もそのまま欲望を放出する。

「……がっ、あぁっ! で、出るっ!」

頭の中に火花が何度も散る。身体の全ての感覚が股間に収束し吐き出された。それは勢いをそのままにサキちゃんの膣内を満たしていく。

「……っ! ぐうっ、ああ」

「んあぁっ、おっ、オニイサンの、な、中で脈打って、あ、暴れてるッス! あんっ、す、スゴいッス……」

「はぁーっ、はぁーっ、……っ! っふうー、はぁー……」

「んっ、ふぅ、……はぁ、ふぅ、い、いっぱい出たッスか……?」

「……ああ、こ、これ以上出ないぞってくらい出た……」

「ンフフ、サキも死んじゃうかと思ったッス。……ふわぁ、オニイサンの、サキの中でまだビクビクしてるッスよ」

「ああ、ごめん」

「なーんで謝るッスか。そんな子にはこうッス、ほらっ、きゅっきゅっきゅー」

「あぐぅっ!? ちょ、サキちゃん!? もう出ないから締めないで!」

「ンフ、冗談スよ。……オニイサン」

サキちゃんは上半身を倒してもたれかかり、顔を寄せた。

「最後にちゅうするッス。んー……」

「お、おう……」

「んむっ、……ちゅっ、んちゅっ……ンフフ。……オニーイサン?」

「な、何?」

「……童貞卒業、おめでとうございますッス!」

「さ、サキちゃんも処女消失お悔やみ申し上げます」

「ンモー、そこはおめでとうで良いッス! ホラ、もう一度!」

「おめでとうございます」

「ンフフ、ありがとうッス」

そう言ってサキちゃんは笑った。つられて俺も一緒に笑った。


**


事の後。疲れきった俺達はそのままダブルベッドに横になる。がっつり中出しをキメていた事に今になって焦ったが、ジキーマが言うに妊娠はしないようにするので大丈夫とのことであった。宇宙人の技術力恐るべしである。

「今更ッスが」

「どうした」

両足をパタパタと動かしながらサキちゃんは唐突に切り出した。

「サキ、オニイサンとエッチしてる時に結構ダメダメーって言ってたの思い出してッスね」

「う、うん」

「ここはダメダメーよりらめらめえーって言ったほうが良かったスか? そこんとこどうスか、オニイサン」

「あれって快感で呂律が回らないで出る声だろ。意識して言ってる時点でなんか違う様な」

「なるほど、一理あるッスね。でもらめらめなんて意識しないと言えないと思うんスよ」

「ゆ、夢の無い事を言うなよ」

「アッ、もしかしてオニイサンそういう系結構好きだったりしたスか? ンフフ、ごめんなさいッス」

「いや、別に良いけど」

「そッスか。……それとデスね……」

「うん?」

サキちゃんは両頬を赤らめる。照れ隠しなのか持て余していた両手を握り、指先を弄りだす。

「その、話が巻き戻るんスけど、エッチする前の言ってた事って覚えてるッスか?」

「うーんと、どの辺りの会話かな」

「続きはピロートークでってとこッス」

「ああ、確かに言ってたね。覚えてる」

「それで今ピロートーク真っ最中なんスけど。そのサキ、こんな不思議体験が出来るのなら処女くらい安いもんだって言ったじゃないスか」

「うん」

「あれ、半分嘘なんス」

「……う、うん? というと?」

「ええと、実はオニイサンに先を越されちゃったんスよ。だから今言うか迷ってたんスけど……。言っちゃうッスね」

「……うん」

「そ、その、……オニイサンの初めてを貰えるのならサキの処女くらい安いもんだと思ったんスよ」

「……え? あ、それって? え?」

「ハイ! それじゃ甘ったるいピロートークはここまでッス! いでよバスルーム!」

サキちゃんがそう言うと部屋の隅に浴槽とシャワーがある個室が直ちに生成された。

「じゃあ一番風呂はサキが頂くんで、ちょっと待ってるスよ!」

「え、あ、ああ。うん」

ダブルベットから飛び起きてスキップしながらバスルームに入るサキちゃんを見送った。


**


「ヨカッタヨ、スゴイヨカッタネ。コノホシノタミヨ。スバラシイモノヲミセテモラッタヨ。ハッハー」

サキちゃんの次に入浴を済ませ、着替えが終わった時の事だった。またもや天井からスピーカーが生えてきて、ジキーマの声が部屋にこだました。

「オッ、オニイサンも着替え終わった所ッス。ナイスタイミングッスね、ジキーマさん」

「シリョウニアルトオリノ、ウツクシク、ハカナイダンジョノセイコウショウ! ソレニコノホシノタミドウシノ、レンボマデコノメデミレルトハ!」

「ああ、やっぱそういうことなの? サキちゃん」

「オニイサンが何を言ってるのか分からないッスね」

「ワタクシニハオミトオシデスヨ、コノホシノタミヨ」

「ゲッ、ジキーマさんってテレパシー持ちでしたか。タンホイザの民、恐るべしッス」

「ソレデウタヲウタッテモラッタトキドウヨニ、ココデオキタジショウヲセーブシタノデ、ワタクシノユウジンヤカゾクニモ――」

「それは止めるッス、ジキーマさん!」

「アラ、マズカッタネ?」

「ジキーマさんが個人的に楽しむのはいいスけど、他の人に見せるのはちょっと恥ずいスね……」

「オー、ソレハシツレイシタネ。デハイワレタトオリニスルヨ。ヤクソクスルネ」

「じ、ジキーマさん、それで俺達は元の場所に帰れるんですよね?」

「モチロンカエスヨ。イロイロアリガトウネ。カエスマエニキミタチノキオクノショリヲスルカラネ」

「き、記憶ッスか?」

「ソウネ。ココデオキタコト、キミタチニハゼンブワスレテモラウヨ。コレハ、ウチュウリョコウシャガ、カナラズマモラネバナラナイコトネ」

うすうす最後はこうなるんじゃないかと思っていたが、当たってしまった。この手の話だと宇宙人に攫われた人間は軒並みその事を忘れていたりする。俺達も例に漏れずにそうなるんじゃないかと予測していたが……。

「じゃ、じゃあオニイサンのことも全部忘れちゃうってことッスか?」

「ソウナルネ」

「……そんな」

「コレハキマリダカラネ。ココデアッタコトモ、ワタクシノソンザイモ、ゼッタイニモラシテハナラナイノヨ」

「……サキちゃん、良かったじゃないか。俺達は無事に地球に帰れるんだ」

「お、オニイサン?」

「見ず知らずの男とまぐわった記憶も残らないで済む。それで良いじゃないか」

「……オニイサン、本気で言ってるんスか?」

「……本気の訳ねえだろうが。だけどサキちゃん、恐らく俺達は、この条件をのまないと地球には帰れない」

「あ、……なら、ここに残って――」

「ってのも出来ないから俺達をわざわざ帰そうとしてるんだろう。ジキーマさん、そうですよね?」

「ソウネ。リョコウサキノホシニスムセイブツハ、カッテニモッテカエッチャダメナノヨ」

「ということだ。つまり俺達は帰るしかないんだ。サキちゃん。なあ、サキちゃん。分かってくれ。頼む」

「おっ、オニイサンはそれで良いんですか? だって、サキ、オニイサンとここで出会ってそれで、す、好きになったってのに、オニイサンのこと全部忘れて帰れっていうんスか?」

「そういうことだよ、サキちゃん」

「そんな……」

「トイウワケデソロソロジカンネ。アトイップンデキミタチヲモトイタバショニカエスヨ。ホントウニカンシャシテルヨ。アリガトウ。アリガトウコノホシノタミヨ」

壁や足元、天井が白く瞬く。光の明滅は次第に強くなり目を開けていられない程に強く輝いた。

「お、オニイサン、聞こえますか?」

「ああ、聞こえてる」

「もうすぐ、お別れッスかね」

「そうみたいだな」

「その、順序が逆になってしまったスけど、……その」

「……うん」

「サキ、オニイサンの事が好きッス」

「俺も、サキちゃんの事が好きだ」

「……知ってるッス!」

その言葉を最後に俺の意識は深く沈み、深い闇に消え去った。


**


それはゴキゲンな週末の午後2時の出来事だった。遅めの昼食を済ました後に、久しぶりに映画館でも行こうかと思い付き、家を出た時の事だ。

「そういえば友人から映画のチケットを貰っていたんだったな。確か財布に入れたはずだったけど――あっ!」

風が一度強く吹き、手元の財布からチケットが抜けて空に舞い上がる。慌てて追いかけるが中々取ることが出来ない。

「くそっ、ま、待て!」

慌てる俺を翻弄するかのようにチケットは舞う。しかし次の瞬間、振られたテニスのラケットがチケットを捕らえた。

「ナイスキャッチ! 探し物はこれッスか? オニイサン」

「あ、ああ! ありがとう」

ラケットの持ち主は近所にある学校に通う女子校生だった。

「いやあ、助かったよ。いきなり風が吹いて飛ばされちゃってね」

「お安いご用ッス。ところでこれ何スか?」

「映画のチケットだよ。新作みたいなんだけど」

「アッ、宇宙人が地球に来てあれこれする奴ッスね! 知ってるッス! オニイサン、今からこれ観に行くんスか?」

「そうだけど」

「一人で?」

「うん」

「それじゃチケットを救ったお礼はこの映画ってことでどうッスかね。ホラ、ここに本券は二人まで利用可能ですって書いてあるッスよ」 

「へ? あ、いや、マジで? だって君、学校は?」

「何言ってるスか、オニイサン。今日は土曜日ッスよ。丁度部活が終わって帰ってきた所ッス。てな訳で行くッスよ、オニイサン!」

少女は俺に向かってニッと笑い、サムズアップをする。

「え、えええ」

ゴキゲンな週末の午後に同行者が加わった。



オワリ



       

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