Neetel Inside ニートノベル
表紙

自分流自己満足短編集
てろ子ちゃん

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扉を開けるとそこには満面の笑みを浮かべる幼女が佇んでいた。



T「おっじゃましまーす!」

男「えっ、ちょ、だっ、誰…?」

T「私ぃ、貴方のお母様から希望によりここへ派遣されました、てろ子ちゃんでぇーっす♪」

男「か、母さんが!?」

T「そうそう。 えーと、貴方は男で間違いないよねっ?」

男「間違いない。 間違いないけど……お前誰だよォ!?」

T「だからてろ子っ! 今言ったじゃんかよー」

男「そう言いながら靴を脱がないで。 つーか名前言われても何も分かんねーよッ! 何が目的だッ!!! 金なら泣けてくるほど無いぞッ!?」

T「お金なんて目的じゃないよ。んーっとね、『ひとりぐらしのおとこのへやにすみこんでしゃかいべんきょう』ってとーちゃんに言われてこの家に遥々やってきたんだよ?……よいしょっと」

男「こんな社会的じゃない場所で社会勉強ができるか! わざわざ俺の家に住み込む意味も分からんぞッ!? この家は無駄に広くても定員は俺でいっぱいいっぱいなんだよ!……あと律儀に靴揃えて隅っこの邪魔にならない辺りに置かなくていいからね? 家にあげた覚えはないから!」

T「細かいこと気にすると禿げるよー? おお、意外と広くて快適空間。だけど臭い」

男「ほっとけ!! 男の一人暮らしに何を求める……じゃなくて、オイオイっ! どんどん進むなよぉ! それに探索するな!! ここは俺の家だ!! 俺の城なんだッ!!!」

T「ばっかだねぇ……。室内戦でのクリアリングは基礎であって絶対なんだよ? 男はアレに似てるねっ! 洋画『プライベートライアン』で『上陸後、船先扉が開いて真っ先に頭を撃たれる男』みたいだねっ」

男「…………………」

男「……例えがよく分からないよ!! どうせ何かに似てるって言うんだったらもう少しポピュラーなものをチョイスしようッ!?」

T「んむ? なんだあれ?」

男「また無視か!! いい加減慣れてきたよッ!」

T「あ……っ!」

男「今度は何だ……って板チョコじゃあないか。あれは駄目だぞ? 俺の今晩のおかず兼主食だ。右の方を舐めながら左の方をかじり――――」

T「あれ前に食べたことあるぅ!! すごい美味しいんだよねっ! ねぇ、男あれちょーだい♪ うん、ありがとーっ」

男「って、おいいい! 一人で会話を成立させるなよ!! ただでさえ俺影薄いんだからな!! バイト先の連中に、なんか『石ころぼうし』って言われてるんだぞ!」

T「わぁぁぁぁいっ♪」

男「待て待て待て走るな止まれよ! 俺の晩御飯を食らう気かァッ!? あとそこら辺に今朝脱ぎっぱなしにしてた衣服の類がごっちゃになっててあぶな……」

T「いただきまぁ―――って、ふぁあっ…!?」


ずがー!


T「ひぅー い、痛いよぅ……」

男「ああ、もう。言わんこっちゃない。やっぱり転んだ……ってなにそれ? 床に転がる緑色でぼこぼこしたフォルムの手のひらサイズのそれは?」

T「んん、…………えーっと、パイナップルだね」

男「パイナップル! そう、思い出した! 戦争系のゲームでよく出てくるものな! 軍服着た兵隊さんが『ファイヤインダホー』とか言って室内に投げ込む奴だよね? うん。 いや、待て? ……俺の記憶が正しければそれの上部分に金属の部品が付いていた筈なんだけれど?」

T「これのこと?」

男「そうそう、その金属部品。それで俺の記憶が本当に正ければ、それは抜くと爆発するんじゃなかったっけ? うん、したはずだ。でも抜いてからすぐに爆発はしないんだよね。それで……てろ子ちゃんだっけ? パイナップルの爆破までの時間って?」

T「えっとね、これ抜いてから5びょ――――――」




あたりは閃光に包まれた。



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トゥルルルルルルル、トゥルルルルルルル、……ガチャ


母「はい、こちら吉田と申しますけれども何方様でしょうか」

男「もしもーし」

母「……なんだ、男じゃない。 どうしたの?」 

男「実の息子に向かって『なんだ』とはなんだよ……」

母「気にしたら負けよ」

男「そ、そう。……母さん。ちょっと聞きたい事があるんだけど良いかな?」
 
母「そんなことよりアンタ、元気でやってる? 仕事には就いたの?」

男「え? ああ。仕事には就いて無いけど元気でやってるよ!」

母「現状変わらずって感じね。 母さん応援してるからね? いつか男が立派に一人で自立できるって……」

男「ご、ごめんなさい。本当にごめんなさい」

母「うん、まあ、……いいわ。今からでも遅くないから頑張るのよ? いざとなったら、母さん、仕送りも惜しまないからね」

男「りょ、了解いたしました……」

母「あと、家にばかり籠ってないでたまには外へ出るのよ? きっと新しい出会いがあるはずだから」

男「そ……だね」

母「自炊もしなさいよ? カップラーメンとかコンビニ弁当だけじゃ、食のバランスも全然取れなくて、父さんみたいに早死にしちゃうからね」

男「そ……だね」

母「詐欺にも気をつけなさい。最近は男みたいなのを狙ってがっぽりだまし取る輩も少なくないんだから」

男「……うん。気をつける」

母「言いたいことはそれだけ。それじゃ頑張りなさいよ? まだきっと男なら間に合うはずだから。母さんも応援してる」

男「…………」

母「男? 聞いてるの? ……もう。それじゃ一旦切るからね? 体に気をつけるんだよ?」

男「は、はい。……それじゃあね」


……ガチャ


男「はぁー……。このままじゃ駄目だって分かっちゃいるんだけどね」

男「分かっちゃいるけど止められない……ってな」

男「何か駄目だ、俺」

男「…………」

男「……はぁ」

男「…………」

T「…………ん?」

男「……はぁー……」

T「…………」

T「ずっちゃん、ずっずちゃん、ずっちゃん、ずっずちゃん」

T「うじゃけた顔してどしたのー? つまらないーなら、ホラねー」

男「輪にーなってー踊ろうー。皆でー」

T「悲しーことがあればもうすぐー」

男「楽しーことがーあるからー。信じてみ…………て、てろ子ちゃん!! そうだ、忘れてた! すっかり流されてしまった!」

T「むぅ。 歌止めちゃ駄目だよ男ぉ」

男「ごめんごめん。というか、だいぶ古い歌を選曲したね、てろ子ちゃん。……えーと母さんの電話番号はっと。あったあった」

T「母さんって、男のお母様のこと?」

男「そうだよ。あーっと、てろ子ちゃん、ちょっと静かにしててねー?」

T「あいあいさー、きゃぷてん!………………よいしょ」

男(返事だけは良いんだよな……全く)


トゥルルルルルルル、トゥルルルルルルル、……ガチャ


母「もしもし」

男「あー、俺俺。男だけど」

母「詐欺ね!?」

男「違うッ!! 息子の声ぐらい聞いて分からない!? 今さっき話したばかりなんだから、声忘れるなんてあり得ないでしょうッ!?」

母「冗談よ」

男「………………はあ」

男「えぇっと、さっきの電話で一つ聞きたい事あったんだけど、言うのすっかり忘れててさ」

母「この年でボケだなんて……」

男「哀れみを帯びた声色でそんなこと言わないで。というか俺さっき聞いたはずだよ? それで母さんが回転寿司でいらないネタが来た時の如く受け流したんだよ」

母「確信犯」

男「ああ、そう」

男「……それで本題。俺の家にてろ子と名乗る、可愛いけど何考えてんだかよく分からない幼女が突然押し掛けてきた訳ですが」

男「話を聞くと『貴方のお母様』つまり、母さんから派遣されてきたって言ってるんだけど……何かの間違い?」

母「間違いでも何でもないわよ」

男「やっぱりそうなのか……」

母「ん。……一週間くらい前かしら。 引っ越してきたお隣さんとこれからの馴れ合いをかねて、飲み会開いてね」

母「それで、てろ子ちゃんを男の家に同居させないかーって、てろ子ちゃんのお父さんと盛り上がっちゃって……」

母「盛り上がっちゃって……」

母「…………」

母「今に到るってこと。 分かった?」

男「ぜ、全然話の趣旨が理解できないんだけど……? というか、どんな行程でそんなぶっ飛んだ話題になるの!」

母「もー、ベロンベロンに酔っててあんまり詳しいこと覚えてないのよね。なんていうか、ノリでそうなった?……って感じで」

男「そんな……、ノリって」

男「大体、相手方の親はどう思ってるのさッ!! 冴えない男が一人住む家なんかに愛する娘を放り込んじゃっていいの!? いい訳ないよねッ!」

母「もちろん無許可なんかじゃあないわよ。てろ子ちゃんのお母さんもお父さんも素敵な人だったわー。お父さんなんか特に。凄い豪快な人でね?」

母「母さんが冗談でそういった話題を持ち出したら『それはいい。てろ子にとっていい経験になり、社会勉強にもなるだろう』って言い出してきてね」

母「あーだこーだやってる内に、男の家に同居することになった、……ってわけ」

男「…………あー」

男「うん、なんかもういいや。 そ、それで、これから俺はどうすればいい?」

母「どうすればいいって、母さんは男が社会復帰でもなんでもすれば――」

男「そうじゃなくて。この女の子に俺は何をすればいいのッ? 何の前触れもなく自宅に幼女が来訪してきて結構パニくってるんだけど!!」

母「そんなの……好きなようにすればいいじゃない。てろ子ちゃんのお父さんは社会勉強の為にって言ってたんだから、男は普通通りに過ごしてればいいのよ」

母「色んな経験をさせるとも言ってたし。……ホラ、ね?」

母「同居している以上、てろ子ちゃんのご両親からも男の家に毎月の末に仕送りもしてくれるみたいだし、生活費のことはあまり心配しなくていいわ」

母「母さんもいい経験だと思うわよ? 人との接し方とかも男、苦手だったじゃない。彼女とくらして少しでも克服するといいじゃない」

男「幼女相手に人間関係のあれこれを学べと!? 知らないよそんなの!」

母「母さんだって知らないわよ」

男「俺だって知らないよッ!? 自分の言葉に責任持ってッ?」

母「はいはい。それで、他になんか問題や疑問は?」

男「……まだあるよ。この娘は、どのくらい俺の家で面倒見ればいいの……?」

母「んーとね、特に決まってなんか無いわ。しいて言うなら、てろ子ちゃんの気が済むまでかしら」

男「結構あやふやなのね……。とにかく気が済むまでこの娘と二人で暮せということ……で、間違いない?」

母「間違いない。頑張んなさいよ? 男」

男「……何を頑張ればいいのかよく分からないけど、とにかく頑張るよ…………」

母「あくまでも人様の娘なんだからねっ! 人間としての一線は越えるんじゃないわよ!」

男「俺はそんなぺド野郎じゃないよっ!」

母「手ェ出しちゃだめよ! 今は貴方が保護者みたいな感じなんだからねッ! 時には甘く、時には厳しくね!けじめは付けなさい」

男「分かった、分かったから!」

母「…………」

母「大体自分の現状は把握できたかしら。貴方に拒否権は無いんだからね。恨むんだったら自分の親を恨む――」

男「俺の親はあなたです」

母「そうだね。そうだった。話変わるけど、今てろ子ちゃんは? 大丈夫? 元気そう?」

男「うん、……大丈夫。あの幼女なら今は戦闘機の模型かなんかで遊びながら、テレビ見てる」

母「そう。元気そうで何よりだわ。こっちからわざわざ男の家へ行ったんだから少しは休ませなさいよ? 早く寝させるとか」

男「分かってる分かってるって」

男「……うん、それじゃ少し長くなったけど一旦電話きるから」

母「ん。てろ子ちゃんに一言よろしくと言っておいてちょうだいね? それじゃまた」

男「うい。じゃ、おやすみ。 母さんも体に気をつけて」

母「……男もね。おやすみなさい」


……ガチャン


T「ぶぃーん、ずががががー……メーデーメーデー!!」

男「てろ子ちゃん? そろそろ腹減ったでしょ」

T「うんっ! もうお腹ぺこぺこだよー」

男「俺もだよ。なんだか今日は無駄に疲れたしな……」

T「んー、大丈夫?」

男「……うん。大丈夫。 よし……! もう自炊する気にもならないし、ピザの出前でも頼むか! あんまり手元に金無いけど奮発しt」



その時だった。
一歩踏み出した右足の違和感。
何か固い物体を踏んだような違和感。

刹那。火薬の弾ける音。
俺の頭の高さより少し上の方まで、何かが打ち上がる。
視覚にて、握りこぶし大の鉄塊を確認。



後に俺はその鉄塊の名をてろ子ちゃんから聞くことになる。
『ボンシングベティ』という鉄塊の名を。



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T「よいしょ、んーしょ。よいっしょ」

男「ん。部屋が静かだと思ったらこんな所にいたの。何やってんの?」

T「えへへっ♪ んっとねー、工作だよっ」

男「工作って、ああそうか。テーブルの上で一生懸命練ってる明るい土色をした軟性物体はねんどだったのね」

T「…………よいしょ、それっ」

男「いやぁー、はははははは」

T「うん? なぁに?」

男「いやーね? なんだかやっと見た目通りの幼女……いや、子供っぽい仕草を見れた気がするなーって思ってさ」

T「……んんっしょ、よいしょっと。そうかなー?」

男「そうだよ!? 一度自分の胸によっく聞いてみてよ! 繰り返されるのはてろ子ちゃんの破壊行為だけだよッ!」

T「どんまいわんすもあげいん」

男「な、なにその適当な話の流し方!?」

T「だから細かいこと気にしてると若いうちに禿げちゃうよ? 大体私に胸なんて無いし、今の男の言動は一種のセクハラの類と受け取って良いんだね? 良いんだよねッ! 勢いあまって色々やっちゃうよ!?」

男「色々やらないで! というか悪かった! てろ子ちゃんの胸とかそういう物理的な問題ではないけれども今のは俺が悪かったよッ! いや、俺は悪くないんだけど―――ってごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ!! 頼むから先の方でおでこをゴリゴリしないで!! 俺が悪かったからッ! だから今すぐ俺の頭に突きつけている黒い鉄塊をどけてッ!!?」

T「全く。 これから大きくなるかもしれないのにホントに失礼なんだからっ」

男「てろ子ちゃんのは、まだまだこれからじゃないか……」

T「仮にも私はレディだよっ! 女の子なんだよっ!」

男「だ、だから胸ってのは、てろ子ちゃんの平たい奴のことじゃなくて………」

T「なんか言った?」

男「なんにもッ」

T「もうっ、男のせいで手が止まっちゃたじゃないかっ! よいしょっと……」

男「言葉と言葉のキャッチボールに武力介入なんかするからだよ!」

T「うるさいなー。んんっ……よいっしょっと。邪魔するのなら、いつもみたいに自分の部屋に籠っててよねー」

男「『いつもみたいに』ってなんだよ。勝手に社会問題の一員にすんなッ!」

T「似たようなモンでしょー。んじゃあ、どうして日曜日の午後になったばかりのこの時間帯に自宅にいるの?」

男「っぐ」

T「なんで?」

男「……そ、それはー……だなー」 

T「予定無いの?」

男「えー……、あぁっと……」

男「アレだ、その……えと…………」

男「……………」

T「…………う?」

男「………………」

T「………………」

男「……てっ、てろ子ちゃんッ? そういえばなんでさっきから長方形しか作らないのかなッ? ねんどだったら……そうだな、例えば犬だとか猫だとかあるじゃん!?」

T「ううん、これでいいんだよ?」

男「そ、そうなんだ」

T「そーなのっ。後は大事な仕上げがあるんだから♪」

男「大事な仕上げ……って、てろ子ちゃん? その足首のポーチから取り出した細長いのは一体何ッ? 答え様によっては俺は怒るよッ!?」

T「えっとね、これはブラスティングキャップって言うんだよっ」

男「ぶっ、『ぶらすてぃんぐきゃっぷ』? なんだよそれ……ああ、またアレなのか!? 爆発するのかッ!! ドカンかッ!!?」

T「もう、男。少し落ち着いて? これ自体は爆発もしないし、男の家も吹きとばしたりなんかしないからさ」

男「嘘つけッ!!」

T「うわー、あからさまな否定な仕方だねー」

男「だ、だって今まで俺が見てきたてろ子ちゃんが所有してる物の大半が、この家と俺の心身ともに大きな傷跡を残す恐ろしい物だったからさ……」

T「もー、感傷に浸らないでっ!  嘘なんか付いてないよ?」

男「ほっ……本当に?」

T「本当。だから安心してよっ!」

男「うーん……」

T「ねっ?」

男「……そ、それじゃあ、今回ばかりは信じようかな。てろ子ちゃんの事。そこまで言ってくるのなら嘘なんか吐いてないないだよね?」

T「吐いてないさっ!」

男「……うん、信じるよ。……なーんか腑に落ちないけども」

T「男ぉ、一言多いよー?」

男「ははははっ、そうかもな。んでもやっぱり変だなー、てろ子ちゃんが日課の如く繰り広げる暴行をせずに今日に限って『ねんど遊び』なんてさぁ」

T「お、男は私のことどんな目で見てるんだよ……」

男「だってほら、てろ子ちゃんが所持しているものの大半が、俺の家と俺の心身に深い傷を――」

T「昔のことは気にしないっ♪」

男「だいぶ最近のことだよッ!? 最後にあった爆発だって、つい二日前なんだよ!」

T「そうだったっけ? えへへっ☆」

男「ずるいよ、てろ子ちゃん! そうやって笑ってごまかす!!」

T「まあまあ、男もこうやって元気に生きてる訳だし……ねっ♪ おーるおけーいさぁっ!」

男「親指突き出しながら爽やかな顔されてもな。あぁ、あとてろ子ちゃん? さっきからなんで長方形になったになったねんどに『ぶらすてぃんぐなんとか』を突き刺してるの? と言うか、それってなんなの?」

T「シぃー! ちょっと静かにして、男! 今凄く大切な所なんだから……」

男「えぇ!? ごっ、ごめん!」

T「んん。……っと、 よっと。んー、これでOKかなぁ」

男「こ、これで完成? さっきの『ぶらすてぃんぐなんとか』をねんどに埋め込んだだけに見えてしょーがないんだけど……」

T「埋め込んだだけだけれど、これで完成っ! 思ったより時間かかっちゃったな。 ふぃー、疲れたー」

男「お、おつかれさんー……。それで聞きそびれたけどソレって何なの? てろ子ちゃんなりの芸術作品とか?」

T「違う。全然違うよ。これは『セムテックス』って言うんだよっ?」

男「本日二度目の俺の知らない単語が!? それって何!? なんなの!!?」

T「半年ROMれー、もしくはググれー」

男「『黙って見てろ、それが嫌なら自分で調べろ』ってことだね、てろ子ちゃん。だったら俺は自らの力で調べる道を選択するよッ! ……俺の右手がズボンのポケットへと伸びる! そして手にしたのは人類の英知の結晶である『携帯電話』!! ハハハハ、すぐに調べてやるからなッ!? …………『せむてっくす』っと」

T「点検完了! 後はこれを押すだけで――」

男「よーし、出た出た。流石はwiki大先生。えーっと、なになに……? 『セムテックスは高性能プラスチック爆薬の一種。チェコスロバキアにおけるセムテって、おいいいいいッ!? てろ子ちゃんッ!? あなたさっき爆発しないって言イマシタヨネ!?」

T「ブラスティングキャップ自体は爆発しないモン」

男「そんな屁理屈聞きたくねェ! お願いだから起爆させ―――――」




俺の視界の全てが、青白い光で覆われるまでそれ程時間はかからなかった。



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表紙

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