ブーンが高校の卒業式を迎えたようです
卒業式
――県立VIP高校、卒業式
( ^ω^)「今日は卒業式だお。何だかんだであっという間の3年間だったお」
( ^ω^)「ブーンは今日も裏方で音響担当だお。普通は在校生の仕事だお」
ξ゚⊿゚)ξ「しょうがないでしょ、あたし達は視聴覚委員なんだから」
( ^ω^)「けど皆と一緒に卒業式出たいお。ツンは出たくないのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「この仕事出来るのあたし達だけなんだから、我慢しなさいよ!」
( ^ω^)「……ツンは仕事熱心で偉いお」
ξ///)ξ「そ、そんなこと言われたって嬉しくないんだから!」
( ^ω^)「……」
( ^ω^)(全くこの学校はどうかしてるお)
( ^ω^)(けど楽しい3年間だったから別にいいんだお)
( ^ω^)(皆とお別れは寂しいけど、最後の仕事がんばるお!)
( ^ω^)「それと、ツンは司会進行担当だお。司会台に戻るお」
ξ゚⊿゚)ξ「わ、分かってるわよ! あんたが心配で来てあげたっていうのに……」
ξ///)ξ「バ、バカ! 何言わすのよ! バカバカバカ!」
( ^ω^)「教頭の開会の辞が終わる前に早く戻るお」
ξ///)ξ「バカッ!」
( ^ω^)「ツン、暗いから足下気をつけるんだおー」
( ^ω^)(ツン…… 大学でもちゃんとやっていけるか心配だお)
ドタドタドタドタ…
ξ゚⊿゚)ξ「ゴ、ゴホン! えー続いては学校長式辞です。校長先生、お願いします」
(-@_@)「……」
ξ゚⊿゚)ξ「校長先生?」
ダッタッタッタッタッタ…
校長は無言でステージに上がった。
( ^ω^)「おっ、校長先生が上がってきたお」
( ^ω^)「校長先生はいつも声が小さいからマイクの音量を上げるお」
ジジジジジジ…
( ^ω^)「これで大丈夫だお!」
校長は一礼をし、話し始めようとする。
(;^ω^)「あ、ダメだお校長先生! もっとマイクに近づかないと声が拾えないお!」
(;^ω^)「マイクの音量はもう最大だお! もっと近づくお!」
(-@_@)「えー、本日はお日柄も良く――」
( ^ω^)「あれ? ちゃんと拾えてるお」
( ^ω^)「卒業式だから校長先生も張り切って大きな声をだしてるんだお! おっおっおっ!」
(-@_@)「――絶好の卒業式日和であります」
(-@_@)「ご来賓の皆様、保護者の皆様、本日はご多忙中にもかかわらず、多数ご出席いただき、心から御礼を申し上げます」
(-@_@)「……」
(-@_@)「……」
ξ゚⊿゚)ξ(校長どこ見てるのかしら……)
(;^ω^)「何だか校長先生の様子が変だお? 台本忘れたのかお?」
(-@_@)「えー、本日はお日柄も良く……」
ξ゚⊿゚)ξ「!?」
(;^ω^)「何だかマズイお……」
(-@_@)「……」
(-@_@)「……お日柄も良く」
(-@_@)「……非常に」
(-@_@)「……ぽかぽかと暖かく」
(-@_@)「非常にお昼寝日和であります」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
(;^ω^)「おっ?」
(-@_@)「思い返せばこの3年間、諸君は寝てばかりでした」
(-@_@)「日柄など関係なしに、春夏秋冬年がら年中居眠りをこいていました」
(-@_@)「授業中だろうと何だろうとお構いなしでした」
(-@_@)「学校の授業に見切りをつけ、夜の予備校に備えて睡眠に勤しんでいましたね」
(-@_@)「朝礼での私の挨拶ともなれば覚醒している人は皆無に等しい」
(-@_@)「諸君は非常に合理的だから、無駄な時間は睡眠に回していたのでしょう」
(-@_@)「では、皆さんにとって有益な時間とは一体何でしょうか?」
(-@_@)「大学にいくための予備校の授業?」
(-@_@)「寝ていると怒る教師の授業?」
(-@_@)「TVゲームをしている時?」
(-@_@)「パソコンの前にいる時?」
(-@_@)「食事中?」
(-@_@)「排泄中?」
(-@_@)「はたまた自分を慰めているときでしょうか?」
(-@_@)「それとも慰めあっているとき?」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
(;^ω^)「……」
(-@_@)「ぼんやりとした毎日、くだらないことの繰り返し」
(-@_@)「寝ぼけた諸君が、寝ぼけた社会に進み、寝ぼけた国を支える」
(-@_@)「お昼寝から起きるよりも、そのまま寝続けているほうがずっとマシです」
(-@_@)「諸君は夢の中で楽しく遊んでいればそれでいいのです」
(-@_@)「ここで過ごした3年間の思い出と共に、諸君がさらなる深い眠りにつけるよう心から祈っております」
(-@_@)「以上をもちまして、私の挨拶とさせていただきます」
(-@_@)「それでは皆さん……」
(-@_@)「おやすみなさい」
(つづく)
(;^ω^)「校長先生どうしちゃったんだお……」
(;^ω^)「いつもは眠くなっちゃう校長先生の話だけど、今はそれどころじゃないお」
( ^ω^)「みんなはどんな反応だお?」
ブーンは舞台裏の覗き窓から、体育館の様子を窺う。
(;^ω^)「!? みんな眠ってるお!」
(;^ω^)「ブーンの同級生も、親御さん方も、PTAの人も、みんな……」
(;^ω^)「パイプ椅子にキチンと腰掛けたまま、きれいに整列して……」
(;^ω^)「まるでアンドロイドの格納所だお、気味が悪いお!」
(;^ω^)「一体どういう…… こ、校長先生は……?」
ブーンは校長の方へ向き直る。
(@_@)「ジッ……」
(;^ω^)「!?」
(;^ω^)「お、お……」
(-@_@)「まだ寝ていらっしゃらない生徒さんもいるようですが……」
(-@_@)「ここで皆さんの門出を祝し、子守歌を送りたいと思います」
(-@_@)「♪~」
(;^ω^)「それは、VIP高校の校歌……」
(;^ω^)「おっ……! 何か変だお、頭の中でぐわんぐわん響くお……」
(;^ω^)「嫌な音だお! こうなったらマイクの電源を切るお!」
ブーンは目の前の音響機材に手をかける。
(;^ω^)「あれ!? おかしいお、電源はもう切れてるお!」
(;^ω^)「マイクは最初から入ってなかったのかお!?」
(-@_@)「♪~」
校長は依然として壇上に仁王立ち。
体育館全体を見下ろしながら校歌を歌う。
(;^ω^)「うぅ…… だめだお、気分が悪いお」
(;^ω^)「あ、頭がぼんやり…… ね、眠いお……」
(;^ω^)「お、お……」
ドタドタドタドタ……!
ξ゚⊿゚)ξ「ブ―――――――――ン!!」
(;^ω^)「ツン! お、お、お……」
( -ω-)「ガクッ! zzz……」
(つづく)
ドタバタ!
ξ゚⊿゚)ξ「ブ――ン!!」
( -ω-)「zzz……」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとアンタまで寝てないでよ! ねぇったら!」
バチンバチンバチンバチン!
(*-ω-)「ぉ、ぉ、zzz……」
ξ゚⊿゚)ξ「もぉ―――起きなさいよバカ!」
ξ゚⊿゚)ξ「みんな寝ちゃって、あたし、どうしたら……」
(-@_@)「♪~」
(-@_@)「♪~」
(-@_@)「♪~」
(-@_@)「……」
(@_@)ジッ……
ξ゚⊿゚)ξ「ひっ!」
(@_@)「なぜ君は眠らない?」
(@_@)「なぜ? なぜ!?」
ドットットットッ……
ξ゚⊿゚)ξ「キャ――――! 来ないで――!」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっとブーン! ブーン!! ブ―――ンったら!」
校長は革靴をがっぽがっぽいわせてツンを追いかける。
ξT⊿T)ξ「イヤ―――!」
(-@_@)「……」
ザッザッザッザ……
底なしに静まりかえった体育館に、ツンの悲鳴が木霊する。
☆
(?)「ブーン」
( -ω-)「zzz…… ぉ?」
(?)「おいブーン!」
( ^ω^)パチッ……
(;^ω^)「お!? あれ、ここは?」
(・∀・)「ったくやっと起きたか。文化祭当日の朝っぱらに居眠りする奴があるかよ」
( ^ω^)「お? 文化祭?」
(・∀・)「俺らにとっては今年で最後の文化祭だって、一番張り切ってたのブーンだろ?」
(;^ω^)「あれ? えーと…… お!?」
(・∀・)「もうしっかりしてくれよ! 早くしないと一般公開の時間になっちまうぞ、準備追い上げねえと!」
(・∀・)「みんなー! 一気に仕上げちまうぞ-!」
「おー!」
「結局今年も準備ギリギリだなww」
「おーい飲みモンはちゃんと冷やしとけよ!」
「オメーは検便すっぽかしてただろ! 外で客引きしてろ!」
「ハッハッハッwwww」
ワイワイガヤガヤ……
( ^ω^)「……」
( ^ω^)「そうだお」
( ^ω^)「今日は待ちに待った文化祭だお! 寝ちゃうなんてうっかりしてたお!」
( ^ω^)「おっおっお! みwなwぎwっwてwきwたw おwww」
(つづく)
~ツンサイド~
(-@_@)「♪~」
ダッダッダッダッダッダッダッダッ
校長は淡々と校歌を歌いながらツンを追いかける。
ξT⊿T)ξ「イヤァ――――!」
ツンは息ぎれし、よろめきながら逃げる。
上履きのまま体育館から飛び出し、文化部部室棟の裏に隠れた。
ξ゚⊿゚)ξ「こ、ここまで来れば、大丈夫、かしら……」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
(@_@)ヌッ!
ξ゚⊿゚)ξ「ハッ!」
ξT⊿T)ξ「イヤァ――――!」
ダッダッダッダッダッダッダッダッ……
ξ゚⊿゚)ξ「はっ、はっ、もう、だめ、捕まる……」
ξ゚⊿゚)ξ「ブ、ブーン……」
(?)「こっちだ!」
ξ゚⊿゚)ξ「え!? だれ?」
(?)「いいからこっち来い!」
何者かがツンを曲がり角の向こうに引っ張り込んだ。
ドシッ!
ξ゚⊿゚)ξ「いった~い!」
(?)「早くこれを持て!」
ξ゚⊿゚)ξ「え? なにこれ、ヒモ?」
(?)「せーので、思いっきり引っ張れ! いくぞ!」
ξ゚⊿゚)ξ「え!? ちょ、ちょっと! なに、なにそれ!? 大砲!?」
(?)「せーの!」
バンッ!
ツンが大砲に見間違えた物は、超巨大クラッカーであった。
爆発をモロに受けた校長は水平に吹っ飛び、コンクリートブロックに激突した。
起き上がってくる様子はない。
ξ゚⊿゚)ξ「うわ、助かった……」
ξ゚⊿゚)ξ「い、一体どういうことなの?」
(?)「ったく、それはこっちの台詞だ、ツン」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、あんたは!」
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ!」
('A`)「おう」
ξ゚⊿゚)ξ「あんた、なんでこんな所に!」
('A`)「お前こそなんで教頭に追っかけられてんだよ。卒業式もう始まってんだろ?」
ξ゚⊿゚)ξ「え、教頭? あたしを追ってきたのは校長……」
ツン達は倒れている人間に近づき、顔を確認する。
(-@_@)「zzz……」
('A`)「想像以上の吹っ飛び具合だから死んだかと思ったが、いびきかいてやがる」
ξ゚⊿゚)ξ「ホントだわ。よく見たら確かに教頭じゃない」
('A`)「両方ともハゲあがりメガネだから区別つかないよな」
ξ゚⊿゚)ξ「途中まであたしを追ってたのは校長だったわ。本当に何がどうなって……」
('A`)「だからそれは俺の台詞だって。なんで教頭に追われてたんだ」
ξ゚⊿゚)ξ「校長先生が、みんなを眠らせて、あたしを追いかけてきて……」
('A`)「はぁ?」
ξ゚⊿゚)ξ「だから!」
ツンはぷりぷりしながらこれまでの出来事を話した。
('A`)「なんだよそれ、俺がいない間に盛り上がり上がって……」
ξ゚⊿゚)ξ「えぇ!?」
('A`)「あの校長も最後の最後にはっちゃけやがったか」
ξ゚⊿゚)ξ「ちょっと、何言ってるの!」
('A`)「早く戻ろうぜ、ひと味違った卒業式、楽しませてもらおうか」
スタスタスタ……
ξT⊿T)ξ「やめて!」
('A`)「!?」
ξT⊿T)ξ「冗談じゃないの!」
ξT⊿T)ξ「ホントに変なのよ! 最初から様子がおかしくて……」
ξT⊿T)ξ「絶対遊びじゃないわ! きっと大変な事が起きてる!」
ξT⊿T)ξ「あたし、怖い……」
('A`)「……」
('A`)(あんなに泣いて……ただ事じゃなさそうだな)
('A`)「分かったよ。俺が調子に乗ってた」
('A`)「だから泣くのはやめてくれ」
ξT⊿T)ξ「うん……」
グスッグスッ、ゴシゴシ
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅ……」
ξ゚⊿゚)ξ「そうだ。あんたはなんで卒業式抜け出してこんな所にいたのよ」
ξ゚⊿゚)ξ「それにあの巨大クラッカー」
('A`)「湿っぽくて退屈な卒業式はゴメンだからな」
('A`)「どかんと一発、やらかしたかったんだよ」
('A`)「文化祭のとき先公に封印させられたクラッカーぶっ放してやろうと思って取りにきてたわけ」
('A`)「まさか教頭を倒すのに役立つとはな」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたって、斜に構えてクール気取ってるわりに、やることはバカよね」
('A`)「うっせーよ」
…………
ξ゚⊿゚)ξ「そんなことより、どうしよう……」
ξ゚⊿゚)ξ「こういう場合って、やっぱ警察とか?」
('A`)「……とりあえず、俺が様子を見てくる」
ξ゚⊿゚)ξ「それはダメ! 危険だわ!」
('A`)「正直なところ、信じられねーんだよ、こんな話」
ξ゚⊿゚)ξ「今戻ったらきっと校長に寝かされてしまうわ!」
('A`)「そうだ……お前は?」
ξ゚⊿゚)ξ「え?」
('A`)「お前はなんで眠くならないんだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、そういえば」
ξ゚⊿゚)ξ「なんでかしら……」
('A`)「……」
('A`)「とにかく、俺は一度様子を見てくる」
ξ゚⊿゚)ξ「ダメよ! 危ないってば!」
('A`)「ここで油売ってたってしょうがないだろ」
('A`)「ブーンを助けたくないのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「……うぅ」
('A`)「じゃ、行ってくる」
ξT⊿T)ξ「ダメ――――!」
ξT⊿T)ξ「ドクオまで眠っちゃたらあたし一人ぼっちだわ!」
ξT⊿T)ξ「あたし一人じゃどうしようもできない!」
ξT⊿T)ξ「怖い、怖いのよ……」
('A`)「……」
('A`)(確かに、迂闊に行動するのは危険かもしれんな)
('A`)(だとしたら、一体どうしたら……)
リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ!
ξ゚⊿゚)ξ「!」
('A`)「!」
ξ゚⊿゚)「な、何?」
('A`)「俺の携帯だ」
ξ゚⊿゚)ξ「こんな時に電話? 誰から?」
('A`)「発信者は……」
パカッ
('A`)「ブーン!」
(つづく)
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンから……電話!?」
ξ゚⊿゚)ξ「そんなはずないわ! ブーンは今眠らされているのよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「それとも何!? ブーンは無事なの!? ねえ!?」
(;'A`)「ま、待てよ落ち着けって!」
リリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリッ!
('A`)「やはり、番号は確かにブーンの携帯のだ」
ξ゚⊿゚)ξ「無事なの!? ねえ! ねえ!」
(;'A`)「分かったから! とにかくでてみよう」
ピッ!
('A`)「……もしもし」
(?)「……」
ザ――――――゙ッ!
('A`)「チッ! ノイズがひどいな、もしもし!」
(?)「……」
(?)「……ぉ」
('A`)「もしもし! 聞こえるか? ブーンなのか?」
(?)「……ぉ……お!」
('A`)「!」
( ^ω^)「ドクオ! ドクオ! お! お!」
('A`)「ブーン! ブーンだな!?」
ξ゚⊿゚)ξ「!!」
( ^ω^)「ふぅ、今日はやけに電波の調子が悪いお」
('A`)「ブーン! お前無事なのか? 今どこにいるんだ!?」
(;^ω^)「ちょ、落ち着いて欲しいお! ドクオこそ今どこだお! まだ家なのかお?」
('A`)「あぁ!?」
( ^ω^)「文化祭に遅刻なんてドクオらしくないお!」
('A`)「はぁ? 文化祭!?」
( ^ω^)「もうすぐオープニングセレモニーだお!」
( ^ω^)「文化祭実行委員長のドクオの挨拶が無いと始められないお!」
( ^ω^)「生徒もみんな中庭の特設ステージに集まってるお!」
( ^ω^)「吹奏楽部も応援指導部もスタンバってるし、お客さんも校門前に並び始めてるお!」
(;^ω^)「だから早く来ないとヤバイんお! 急ぐお!」
(;'A`)「ちょっと待て、何言ってんだよお前……今日は卒業式だぞ!?」
( ^ω^)「卒業式? ドクオ寝ぼけてるのかお?」
(;'A`)「寝ぼけてんのはお前のh、」
(・∀・)「おーい、ブーン!」
( ^ω^)「おっと、呼ばれたお。当日の朝はホント修羅場だお。大忙しだお!」
( ^ω^)「セレモニー開始まであと15分!」
( ^ω^)「パジャマのままでもいいから、絶対間に合わせるんだお!」
( ^ω^)「それじゃ」
(;'A`)「待て! ブーン!!」
ピッ!
ツーツーツーツーツー……
(;'A`)「クソ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ブーンは何て言ってたの!?」
(;'A`)「ブーンは今、文化祭に出ているらしい」
ξ゚⊿゚)ξ「文化祭!? どういうことよ!」
(;'A`)「さっぱり分からん」
(;'A`)「ブーンは、『ドクオは文化祭実行委員長なんだから早く学校に来い』と、俺に言った」
ξ゚⊿゚)ξ「あんたが実行委員長って……去年の文化祭の話じゃない!」
(;'A`)「あぁ、俺は確かに去年の文化祭で、実行委員長をやった」
(;'A`)「だが俺は遅刻なんてしなかった。時間通りに挨拶決めてやったはずだ」
ξ゚⊿゚)ξ「……ブーン、寝惚けているのかしら、夢の話かしら」
(;'A`)「俺もそう思ったんだが、ブーンのクラスメイトの声が聞こえた」
(;'A`)「周りのざわざわ声も、いかにも文化祭の準備をしているかのような……」
ξ゚⊿゚)ξ「なんなのよもう! 今体育館では何が起きてるの!?」
(;'A`)「……」
(;'A`)「……あ、そうだ」
VIP高校の敷地、その一番端っこにある文化部部室棟。
ドクオはそこから慎重に中庭の様子を確認する。
ξ゚⊿゚)ξ「な、なに?」
('A`)「ブーンは中庭に生徒が集まってると言ってたんだが……」
ξ゚⊿゚)ξ「誰もいないわね、気持ち悪いほどシーンとしてる」
('A`)「……」
('A`)「やはり、体育館に向かおう」
ξ゚⊿゚)ξ「えっ!?」
('A`)「ブーン達はもう目を覚ましてるってことが明らかになった。無事ってことだ」
ξ゚⊿゚)ξ「け、けど……」
('A`)「頭は無事じゃないかもしれんがな」
ξ゚⊿゚)ξ「そんな!」
('A`)「うーん……ていうか……」
ξ゚⊿゚)ξ「な、なに?」
('A`)「……」
('A`)「ひょっとしてこれ、ドッキリか?」
ξ゚⊿゚)ξ「ええっ!?」
('A`)「お前ら全員で、俺をハメようとしれるんじゃないか?」
('A`)「全くなんて大がかりなイタズラだ」
('A`)「あれか? 俺が挨拶ん時、ステージから大量の水をぶちまけたの、恨んでんのか?」
('A`)「お前らキャーキャー言って盛り上がってたじゃないかよ」
('A`)「それとも何だ? お礼としてのドッキリか?」
('A`)「どっちにしろツン、お前は俺を体育館に案内する役目なんだろ?」
('A`)「これで全てに合点がいった」
('A`)「もう十分楽しませてもらったから、早く終わって卒業式に戻ろうぜ」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ξ;⊿;)ξ「う……う……」
(;'A`)「げ!」
(;'A`)「う、うそうそ、冗談だ!」
ξT⊿T)ξ「うわあああああああああぁん! バカァ!」
ベチン!
(;'A`*)「痛ぇ!」
ξT⊿T)ξ「ドクオの馬鹿! 大嫌い!」
(;'A`*)「冗談だって!」
(;'A`*)「俺現場見てねえから未だに信じられなくって、でももう分かった! 信じるから!」
ξT⊿T)ξ「もういい! あたし一人で体育館に行って、ブーンを、みんなを助けるんだから!」
ツンはぷりぷりお尻を振りながら体育館へ邁進する。
(;'A`*)「ま、待てよー!」
頬を押さえながら、ドクオはよろよろとツンの後を追う。
ザッザッザッザッザッザ……
…………
…………
(-@_@)「zzz……」
(-@_@)「zzz……」
(-@_@)「……」
(-@_@)「う、うう」
(つづく)
(;'A`*)「おい、待ってたら!」
ξ;⊿;)ξ「……グスン」
先ほどまでの懸念はもはや皆無。
ツンは勇猛果敢に体育館を目指す。
頬を腫らしたドクオがその後を追う。
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅ、体育館に着いたわ」
('A`*)「はぁ、お前歩くの速ぇな随分……」
ξ゚⊿゚)ξ「何よアンタまだ居たの?」
ξ゚⊿゚)ξ「あたしは本気なの。冗談だと思ってる人は帰っちゃいなさいよ」
(;'A`*)「わ、悪かったって! もう信じるから!」
('A`*)「それよりお前、鼻垂れっぱなしだぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「なっ!」
ξ///)ξ「ズ……ズズッ!」
('A`*)「ほら、ちり紙やるから」
ξ///)ξ「ありがと」
ξ>⊿<)ξ「ち―――――んッ!」
体育館周辺は底なしに静まりかえっいて、
ツンの鼻汁の音がよく響いた。
('A`*)「……しかし、えらく静かだな」
ξ゚⊿゚)ξ「校長の歌も聞こえないわね、体育館の中はどうなってるのかしら……」
('A`*)「中、覗いてみるか」
ツンが飛び出した扉も含め、体育館は四方八方締め切られていた。
ドクオは体育館の重い扉に手をかける。
('A`*)「ダメだ、鍵がかかってる」
ξ゚⊿゚)ξ「え、でもブーン達はもう起きてるはずでしょ?」
('A`*)「そのはず、だよな」
ドクオは扉を叩き始めた。
('A`*)「おーい開けろよ! みんな居るんだろ!」
('A`*)「おい! ブーン!!」
('A`*)「……」
返事は無く、扉を叩く音が空虚に響くだけ。
二階のカーテンも全て引かれて体育館の中を覗う術はない。
('A`*)「何だよ、皆起きてるんじゃないのか?」
ξ゚⊿゚)ξ「どこかに移動したとか?」
('A`*)「うーむ……そうなるよな」
('A`*)「とりあえず校舎ん中に入ってみるか」
ξ゚⊿゚)ξ「うん……」
('A`*)「校舎内から回れば体育館にも入れるしな」
('A`*)「まずは状況をキチンと把握しないと始まらん、行くぞ」
ξ゚⊿゚)ξ「待って!」
ξ゚⊿゚)ξ「まだ校長がその辺にいるかもしれないから、慎重に行きましょ」
('A`*)「ああ分かってるよ」
ドクオとツンは正面玄関に向かう。
卒業式に相応しかった日は陰り始め、どんよりとした空模様になってきた。
風も強く、聞こえるのは木立のざわめきとドクオ達の足音のみ。
('A`*)「昼間だってのに近所もえらく静かだな」
ξ゚⊿゚)ξ「車の音もしないわね」
('A`*)「なんだよこの雰囲気、まるで世界の終わりみたいだな」
ξ゚⊿゚)ξ「変なこと言わないでよ!」
('A`*)「俺たち以外の人間が根こそぎ消えちまったみたいだ」
ξ゚⊿゚)ξ「アンタと二人っきりの世界なんてまっぴらね」
('A`*)「……」
('A`*)「あっ、校長!」
ξ゚⊿゚)ξ「!」
ξ;⊿;)ξ「ヒー! に、逃げなきゃ! ドクオ!」
('A`*)「嘘だよばーか」
ξ;⊿;)ξ「……」
ξ;⊿;)ξ「……」
ξ゚⊿゚)ξ「……」
ベチン!
(*'A`*)「ぐあ!」
(*'A`*)「お前少しは加減しろよ! 本気で叩くなよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「あたしが本気出したらアンタの首吹っ飛ぶわよ」
(*'A`*)「コイツ……」
やがて二人は玄関前へ到着する。
(*'A`*)「お、ここは開いてるな」
ξ゚⊿゚)ξ「いい? 慎重にいくのよ?」
(*'A`*)「分かってるっつーの」
ブツッ!
ブヅヅヅヅッヅッヅヅ!
(*'A`*)「!?」
ξ゚⊿゚)ξ「な、なに!?」
ブツブヅヅ、♪―ブッヅ!
ブヅヅ♪ブヅ―――♪
――♪
(*'A`*)「こ、校内放送?」
ξ゚⊿゚)ξ「これって……」
ξ゚⊿゚)ξ「校長の歌声じゃない!」
校内のスピーカーから流れたのは校長の歌うVIP高校校歌であった。
やがて外付けのスピーカーからも歌声が流れ、辺り一帯が校長の声で包まれた。
ξ゚⊿゚)ξ「何これ! キモ!」
ξ゚⊿゚)ξ「そう、これよ! この歌でみんな寝ちゃったのよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「ねぇドクオ!」
ξ゚⊿゚)ξ「って、ドクオ!?」
(*'A`*)「う、うぐぐ、こ、これ……」
(*'A`*)「あ、あああああああああ!」
(*'A`*)「ああ、あ、あ、あ、あ……」
(*-A-*)ガクッ!
ξ゚⊿゚)ξ「ドクオ―――!」
ξ゚⊿゚)ξ「あ、アンタまで、寝ないでよ!」
ξ゚⊿゚)ξ「えい!」
ベチン!ベチン!
(**-A-**)「zzz……」
ξ;⊿;)ξ「もぉ! 何でみんな寝ちゃうのよ!」
ザッザッザッザ……
ξ;⊿;)ξ「な、何!?」
ザッザッザッザ!
(-@_@)「……」
ξ;⊿;)ξ「きゃ! 校長!」
ξ;⊿;)ξ「ん? じゃなくて教頭??」
ザッザッザッザ!!!
ξ;⊿;)ξ「どどどっちにしろ逃げなきゃ!」
ξ;⊿;)ξ「ドクオの馬鹿!」
(-@_@)「……」
ξT⊿T)ξ「イヤ―――!」
玄関前で倒れたドクオに背を向け、
教頭に追われるツンは何処ともなしに駆けだした。
☆
(?)「ド…オせん…い」
(-A-)「……ん?」
(?)「ドクオ先輩!!」
('A`)パチッ!
(;'A`)「ん? なんだ、あれ?」
(;・∀・)「先輩! なんでこんなとこで寝てるんすか!」
(;'A`)「あ!?」
(;・∀・)「もうみんな中庭に集まっちゃってますよ! 早く急いで!」
(;'A`)「ちょっと待て! なんだよ一体!」
(;・∀・)「ああもう! いいから行きますよ!」
(;'A`)「ぐわ! 引っ張んなってオイ!」
ドクオは中庭の人混みの中へ引っ張り込まれ、やがてステージの上に放り上げられる。
(;'A`)「ちょ、なんだなんだ!」
ざわざわざわざわ……
(;'A`)「おわ!」
ドクオの眼下には同じ制服を着た夥しい数の高校生がいた。
皆膨らましたジェット風船を携えてドクオを凝視している。
図書室の屋上には金管楽器を持った生徒がずらりと並び、
これまたドクオを凝視している。
(;'A`)(な、なんなんだよこりゃ)
(;'A`)(待て待て待て、思考が追いつかん!)
(;'A`)(えーっと俺は、俺は……なんだ? 何してたんだ??)
(・∀・)「先輩! 頼まれてたもん用意しましたよ!」
(・∀・)「合図くれたら思いっきり蛇口ひねるんで!」
ドクオは水の滴るホースとマイクを受け取る。
(・∀・)「文化祭開幕宣言、バシッと決めて下さい!」
(;'A`)「文化祭!?」
(;'A`)(文化祭……)
(;'A`)(文化祭文化祭……そうか)
(;'A`)(そうだ、今日はVIP高校の文化祭だった)
(;'A`)(俺たち三年にとっては最後の、大事な文化祭じゃないか!)
(;'A`)(こんな大事な日に何で俺は寝てたんだ?)
(;'A`)(いや、今はそれどころじゃねぇよ!)
(;'A`)(とにかくビシっと開幕しねぇと)
('A`)「よ、よしみんな! 随分待たせたな!」
('A`)「いよいよVIP高校文化祭、開幕だ!」
('A`)「カウントダウン、いくぞ!」
10! 9! 8! 7! 6! 5! 4! 3! 2! 1! 0!
その瞬間ステージ脇の巨大クラッカーから金色に煌めくテープが飛び出す。
頭上には数多のジェット風船が飛び交って歓声が上がり、
吹奏楽部が盛大な演奏を始める。
('A`)「よし、準備で徹夜続きの奴も多いことだろう!」
('A`)「文化祭で居眠りしてたらしょうがないからな」
('A`)「こいつを浴びて目を覚ませ!」
('A`)チラッ
(・∀・)コクッ!
ホースの先から大量の水が噴き出し、ドクオはそれをステージからまき散らす。
「キャーww」
「ちょww」
「ウハwww」
(・∀・)「はーいこれより一般公開でーす!」
(・∀・)「生徒の皆さんは持ち場に戻ってくださーい!」
ざわざわざわざわ……
('A`)「ふぅ、また柄にもなく弾けちまったな……」
(・∀・)「先輩お疲れ様です! 文化祭、盛り上げていきましょう!」
(・∀・)「それと頼まれた持ち運び用の巨大クラッカーは生徒会室に隠してあるんで」
('A`)「お、おう」
VIP高校の生徒は散り散り校舎内に駆けていき、
他校の生徒等がゾロゾロと入ってくる。
('A`)「……」
('A`)「ん、あれ?」
('A`)「そういえば……」
('A`)「おい!」
(・∀・)「なんですか?」
('A`)「確かよ、カウントダウンして解散する前にさ」
('A`)「校長の簡単な挨拶とかあるんじゃなかったか?」
(・∀・)「……」
('A`)「……?」
('A`)「おい!」
(・∀・)「なんですか?」
('A`)「だからよ、カウントダウンの後に校長n」
(・∀・)「いや、ないっすよそんなの」
('A`)「あれ? そうだったか?」
(・∀・)「僕もう行きますよ、先輩も文化祭実行委員長なんですから頑張ってくださいね」
(・∀・)「また妙なとこで寝ないでくださいよ」
('A`)「あ、あぁ……」
('A`)「うむ」
('A`)「どうもまだ寝惚けてるみたいだな、俺は」
('A`)「高校最後の大切な文化祭」
('A`)「実行委員長の俺がシャキッとしてないでどうするんだ」
('A`)「今年も俺が頑張って何事もなく成功させねぇと!」
(つづく)