授業中、教師の言葉を一つも聞かずに
ただ、想像の世界に浸っていた
最大のタブーとはなんだろうか
やはり、誰かを殺す。
つまり、人生を奪うと言う事だと思う
たった数万円のため
痴情のもつれのため
ついカッとして
その最大のタブーは犯されている
不意にチャイムが鳴る。
あいさつを済ませ、教材をロッカーへと仕舞いにいくと
女子が数名たむろっている
あぁ、彼女達はとても幸せそうだ
悩みといったら男と自分の体の太さ
それぐらいだろう
僕のような崇高な悩み、考えなど微塵ももっていないはずだ
「でさー、彼氏がー」
「ギャハハハハ」
耳障りな笑い声をあげる集団を背に
また教室へと入っていく
軽く友人と話していると
授業の合間の10分間はあっさりと終わった
また授業中に考える。
僕の人生は空虚だと思う
また、さきほど話していた彼女達もまた空虚だと思う
しかし、幸せそうだった。
そこが僕と大きく違う。
急に僕の中で黒い感情が育ち始めた
僕の空虚な人生を差し出して
幸せそうな誰かの人生をもぎとる
しかし、けして殺さない
不幸せな人生を過ごさせることが目的なのだ
授業中、教師の目を盗み
僕はその計画を立て初めた。
「僕の平凡な人生１個と、幸せになるであろう人の人生１０個
秤にかけると、僕は対価を払っても良い。
そう思いました。今は凄く晴れ晴れとした気分です
もうすぐ僕は捕まるでしょう
なので、僕の言葉を流してください、流してください」
週刊誌宛に、ファックスを流した。
僕は明日にでも捕まるだろう。
いや、既に参考人として名前があがっていて
今日中にも捕まるかもしれない
目を突き刺したクラスメイト
最近彼氏ができたといって嬉しそうに話していた
腕を折ってやった野球部のエース
大会には回復は間に合わないだろう
スキップしながら家路を急ぐ小学生
少しはねっかえりの中学生
合計すれば、僕は10名の人生になんらかの形で
障害を与えたことになる。
はたして、懲役何年になるだろう
いや、少年法に守られている僕は
予想よりも早く出てくることができるはずだ
「ごはんよー」
何も知らない母親は、息子の醜悪な欲望を感じることもなく
毎日変わらない日々をそれなりに楽しんでいた。
彼の最後のエモノは、自らが捕まることによってぶち壊される
彼の両親の日常であった。
