Neetel Inside 文芸新都
表紙

山菜
5.曇り空

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5.1

――江戸


「のらえも~ん」
(クソッ!昼間から甘い声を出してボクを誘惑するつもりだってそうはいかないぞ)
「なんだいニョビ太君」
「のらえもんこれ毛生え薬じゃなくて芋羊羹だよ。ちゃんと毛生え薬を出してよ」
「だからその羊羹を食べるとー。あっタイムマシーンが!」
「タイムマシーンは貰っていくぞ!ハハハハハ!」
「むしゃむしゃもぐもぐのらえもんこの芋羊羹こんにゃくみたいな味がするよー」
「タイムマシーンを盗られてしまった!庭で乾かしていたばっかりに!」
「もぐもぐうっく、くるしい・・・」
「なんてこったタイムマシーンを悪用されたら大変なことになるぞまあいっか」



     



5.2 [恐怖!!戦慄の悪魔 の巻]

の 「ねえニョビ太くん。ねえってばー」
ニョ太 「うるさいなぁ。のらえもんは野原で追いかけっこでもしてろよ」
の 「チェー。千里眼鏡貸してやったの誰だと思ってるんだ。ニョビ太のくせに。」
ニョ太 「あっ!もうすこしでスカートの中が・・」
の 「なんだって!よ、寄越せ!」
ニョ太 「ただで貸してやるわけにはいかないな」
の 「何ィ!卑怯だぞ!」
ニョ太 「あとひと吹き・・あとひと吹き風で・・」
の 「俺にも見せろォォォォ!」
ニョ太 「ふん。このねずみでも眺めていろ!」
の 「・・・・」
ニョ太 「ん?変だな・・。いつもなら叫び声が聞こえるはずだが、さては驚いて失神しているな?」
の 「・・・・」
ニョ太 「馬鹿なやつだ!こんなときのためにねずみを捕まえておいてよかったよ。・・ハッ!?」
の 「ククク・・」
ニョ太 「こ、この笑い声は・・!?まさかッ!だが奴は失神しているはずッ!!」
の 「ククククク・・・」
ニョ太 「違うッ!失神してなどいなかった!始めから!奴はッ!
奴は、ねずみを見てなお失神することも叫び声を上げることもなく、笑っているのだ!!」
の 「残念だったなニョビ太。(グシャ!)」
ニョ太 「うっ!ね、ねずみを素手で!!これがのらえもんなのか!?だとすれば奴はなぜ平気で立っていられるんだ!」
の 「千里眼鏡は返してもらうぞ!貴様にはコンタクトがお似合いだ!!」
ニョ太 「いつの間に!?は、速いッ!いつもののらえもんの数十、いや、数百倍の速さ!
こんなことが・・こんなことがあっていいのかァァァァ!この俺がッ!このニョビ太様が!のらえもんごときにイィィィィ!!」
の 「ハッハッハ!見える見える。あんなものやこんなものまで見えるぞ!・・おや?どうしたニョビ太。
そんなところにうずくまって、腹でも痛めたのかな?」
ニョ太 「ギクッ!そ、そうさ・・実はさっきからお腹が・・
(クソッ!立ち上がるとコンタクトだと実はちょっとかっこいいのがばれてしまうからだなんて言えるわけがない!
これはそう、屈辱!正体を明かせないヒーローのように俺は嘘をつくしかないッ!!なんという屈辱!!グォオオオ!!)」
の 「あっ、まさか、こんなものまで見えるだなんて!恥ずかしいっ!」
ニョ太 「のらえもん・・一ついいことを教えてやろう・・。」
の 「な、なに!?」
のらえもんは困惑した。
ニョビ太はすでに戦意を喪失し、自分の敵ではないと考えていたにもかかわらず、
しかし彼から発せられた言葉には得体の知れない自信と闘志が確かに込められているように感じて、
そのことがのらえもんを恐怖させたからである。


     




5.3

~前回までのあらすじ~
ニョビ太「のらえも~ん」
の   「(クソッ!昼間から甘い声を出してボクを誘惑するつもりだってそうはいかないぞ)」
ニョ太 「あっ!もうすこしでスカートの中が・・」
の   「ククク・・あんなところまで丸見えだぞ」
ニョ太 「あっ・・。のらえもん・・すごい・・・いつもより早い」
の   「ニョビ太くん?・・失神しちゃった?」
ニョ太 「ぼく・・・なんだかお腹が・・・・・・」

「ねえのらえもん、僕がいいことを教えてあげるよ」.......


ニョビ太はポケットからおもむろに何かを取り出してのらえもんの前に放り投げた。
「なんだこの草は?この草が何をしてくれるっていうんだ?」
「違う!草じゃない!!」
「ニョビ太ァ!!貴様俺を馬鹿にしてるのか!」
「のらえもん、僕の話はこれからだよ。いいかい、これは草じゃない」
「だったらなんだっていうんだァ!シーチキンだとでも言うのか!」
「山菜だ。これは山菜なんだよ」

//.......++

     



5.4.プツッっ と音がして画面の中の黄色い狸は姿を消した。

父はビデオデッキに怨念を詰め込んでから消したテレビの電源をもう一度入れた。
「怨念を再生すればみんな帰ってくると思ってるんだ!!」
腹が立って怒鳴ったのは父の怨念は数え切れないほどの色が混ざり合って気持ち悪い色になっていたからで僕は言わなくていいことまで言ってしまう心の中で。
「肉棒が消えてなくなったなんて嘘だ!父さんは僕に見せたくなかっただけだろう!!」
でも心の声が聞こえない父がビデオデッキをスタートさせたから僕は画面に気味の悪いものが映る前に部屋を出て家を出てにんじん畑へ行った。

にんじん畑には兎がいた。
僕は兎に遊ぼうと言って一緒に飛んだり跳ねたりしながらいろいろなことを忘れた。
だから僕の家が森になっていることに気が付かなかった。

兎がにんじんの盗り方を教えてくれて僕がキャロットハンターになることを夢見たりしてる間に森はどんどん大きくなってにんじん畑を飲み込んでしまったけれど、いろいろなことを忘れていた僕はどうやって家に帰ろうか心配しただけで飛び跳ねるのを止めなかった。森はもっともっと大きくなって川や道路やにんじん畑を飲み込んでさらにさらに大きくなった。
僕はようやく驚いて家に入って父を探したけどいなかった。

「そうか!父さんは森になったんだ!!」
兎が何も言わないで僕を殴った。

- -

     



5-5.でも山菜が何をしてくれるっていうんだ。

にんじん畑のにんじんが発射されて兎はその中の一つに飛び乗った。僕は置いていかれたくなかったから兎の尻尾を掴んでぶら下がった。
にんじんと兎と僕は木のすぐ上をすごい速さで飛んでいく。どこへ向かっているんだろうどこを見てもなにもない。
兎は尻尾が痛くてずっと僕を睨んでいる。
僕はごめんねごめんねって言いながら落ちないようにもっと強く掴んだ。

森をずーっとずーっと行くと大きな山が肉棒のようにそそり立っていた。

にんじんは山の斜面を滑るように昇ってどんどん上へ向かう雲を突き抜けたけど頂上は見えない。きっと世界で一番高いんだ。


他のにんじんも頂上を目指して昇っていくんだけど山は段々細くなっていくから僕のまわりはにんじんだらけになってしまった。

「ワーイ!ここはにんじんパラダイスだ!!」
にんじんパラダイスには僕とトムソンと羊飼いのジョグリーと豆腐屋の娘のジージーだけが到達出来た。
僕たちは互いに幸福を称え合って故郷の心配をした。

「私たちどうなるのかしら」
ジージーが言った。豆腐を持つ手が震えてて見てられなかったけどかける言葉は見つからなかった。
僕もどうなるのか心配で大丈夫だなんてとても思ってなかったからだ。

「大丈夫だよ」
ジョグリーがそう言った。
僕は「どこが大丈夫なんだよ」って彼を殴ってやりたかったけど出来なかった。
ジョグリーの親友ベンジャミンはにんじんに体当たりして骨折して入院中だし、同じ羊飼いのライアンやジョグリーのお母さんの再婚相手の妹は悪いにんじんを食べ過ぎて危険な状態だし、途中で脱落していったともだちの8割はジョグリーの知り合いだった。
だから、僕らの前でにんじんから落ちた何人もの人たちがどうなったかわからないけど僕だったらきっと泣いてしまうのに平気な顔してみんなのことを気づかってるジョグリーにどこが大丈夫なんだよって言って殴るなんてとても出来なかった。

でも僕はジョグリーを尊敬の眼差しで見つめるあまり後ろから飛んできたにんじんに気づかなかった。
「危ない!」トムが何か言ったけどもう遅くてにんじんは僕をかばって飛んできたジョグリーに命中した。にんじんは爆発しなかった。

「不発だったみたいだ」
だけど僕を守るために自分のにんじんから飛び降りたジョグリーはもう僕らと一緒にはいられなかったジージーが悲鳴を上げた。

「ジョグリーーー!!!」

落ちていくジョグリーの足をトムが掴んだけどトムの乗るにんじんのすごいスピードが二人を引き離した。
「ジョグリー!どれでもいいから早くにんじんに乗るんだ!!」
ジョグリーはにんじんに乗ろうともしないで叫んだ。
「みんな!!」みんな、なんだよ!ジョグリーの影はどんどん小さくなっていくけど声は聞こえる。
「みんな、あの、」早く言えよ!
ジョグリーはもう見えなくなった。

見えなくなってからも視線の先に彼がいるんだと信じて僕らはずっと下を見続けた。

- -

     



5-6.ジョグリーはにんじんに掴まりもせずトムの手を振りほどいて落ちた。僕もトムもジージーも声が枯れるまで泣いた。

最後に何か言おうとしたのは何か言おうとしたけど言葉を作る時間が無くて言えなかったのかもしれないけどそんなことはどうでもよくて僕らはにんじんパラダイスで自分なりの冬をエンジョイしなきゃならない。

「お腹すいたね」
「食べ物って豆腐しかないよ」
「どうしよう、僕たちここで餓死するんだろうか」

僕は飛んでいたにんじんを捕まえて食べた。「なんておいしいにんじんなんだ!」
「あっ、ずるいぞ!俺にもよこせよ!」
「嫌だよ」
「もう・・・・・・だめ・・・・だ」
トムはお腹がすいて力を無くしてにんじんから落ちた。
ジージーは僕に豆腐を投げつけてにんじんから飛び降りた。
「あなたと二人っきりになるぐらいなら!」

一人になってしまった。

にんじんはいつの間にか昇るのを止めて山の周囲をぐるぐるまわってる。

僕は300円とライターだけ持って山の頂上に降りた。

頂上には小さな小屋があった。

- -

     



5-7.山菜屋さんの小さな扉は固く閉ざされたままだった。

僕は小屋の扉を叩いた。

「こんにちは!!山菜を買いに来ました!」

小屋の扉は開かなくて張り紙がしてある「本日終了しました」そんなバカな!

僕は山菜を買うためにここまできた。いろいろなものを見捨てて山菜を買いに来たんだ。
それなのに閉店ってどういうこと?明日まで待たなきゃならないってどういうこと?

「お願いします!!開けてください!!」

眼が熱くなって泣きそうになるのがわかったけど知らないふりして叫び続けるそうだ山菜のためならどんなことをしたっていい何を失ったっていい。
「願いします山菜を売ってください!!山菜を買うためにここまで来たんです!!」
僕は山菜があればなにもいらないのにその山菜が手に入らないいろいろなものを捨ててきたトム。ボブ。キャサリン。ジョナサン。ジージー。ジョグリー。僕のために落ちた。

「山菜を売ってくださいお願いしますなんでもします山菜をくださいたすけてください!!!!!」

何の声もしないこの小屋には誰もいないの?
「お願いしますお願いしますお願いします山菜を買うためにここまで来たんです僕は」
山菜を買うためにここまで来たんですみんなしんだけどぼくだけいきのこったうさぎはぞんびになっておにいちゃんはまちくたびれてじげんばくだんによってまちがふきどんできのこにされたおうさまはくまにたべられてぼくのからだにみつかったぜつぼうてきなびょうきはげんざいしんこうちゅうで

突然胸が苦しくなって眩暈がして地面に倒れた。あちこち痛くてトマトケチャップはぬるぬるだけど止めたくても止められない鼻血みたいに何の感触も無く眼から流れる涙が身体中の血を洗い流してくれる山菜をくださいお金は300円しかないけれど売ってくれないならこの小屋を焼きます僕の右手のライターで山菜を売ってくださいさんさいをさんさいさんさいさんさいさんさい

さんさいさんさいさんさいさんさいさんさいさんさいさんさいさんさいああああああああ

あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!

- -

     



5-8.僕は死んだ。

頭がギャンギャン鳴って吐き気がズキューンするのにぜんぜん苦しくない。僕の意識は身体と分離して4センチメートル浮いているまずフライパンに油をひいてよくなじませてから水洗いした山菜を投入して強火で炒めます油がはねるけど気合で避けてね山菜が真っ黒になったら塩胡椒で味付けますこのとき呪文を唱えながらやるとおいしくできるよメニィミメネェフェティジ・ネィメニィナヘニェメフェ
ってこんなことしてる場合じゃないおいしく焼けた山菜は後で食べることにしてスープを作ろうぞ今回のスープはきのこと肉棒の白濁汁っおおっと白濁スープです用意するものはえーーーときのこと肉棒をやわらかくなるまで茹でたらその肉棒をお腹に突き刺します後ろからグサッ!痛い痛いえ?なに痛い?大丈夫大丈夫痛いのは一瞬のことですぐ楽になりますよほんとかよぜんぜん楽にならないよウアーメニィミメネェフェティジ・ネィメニィナヘニェメフェメニィミメネェフェティジ・ネィメニィナヘニェメフェめにょめにょ言ってる場合じゃないってマジで痛い痛い痛い腹痛い助けてトムあれトムどこにいるのネイルサロン?僕より爪が心配だってのかちくしょうでもこんなところにネイルサロンあったっけそうだみんな落ちたんだどこにいるのトム助けに来てエリクサー持ってきてジョグリーなにしてんだはやく登ってこいよジージー最後に言ったあれどういう意味、ってあれ?ここどこ?

目を開けて周りを見ると僕の倒れた地面は森の中で怖い顔したパピーが立ってる。トムはどこ?
にんじんパラダイスは?

-to be continue-

       

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Neetsha