Neetel Inside 文芸新都
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玉石混交のショートショート集
夕飯(作:飯倉さわら)

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 むかしむかし、ある王国でイナゴが大発生して、麦も野菜もすっかり食い荒らされて大飢饉となりました。
 王様ですら三食満足に食べられないほどです。
 当然庶民は一日一食、食べられれば良いほうだという生活が長く長く続きました。
 普段食べていたものがなくなったので、残った麦の根を食べ、来年のモミダネも食べ、草を食べ、木の皮を食べて飢えをしのいでいました。
 ついには人糞まで食べるものもいる始末。
 国中の人が食べられるものを見つけるために躍起になっている、そんなある日。
 いつものように少年アールと少年エフが食べられる草を探しに森へと入っていました。
 そろそろ日が落ちようかとする頃、
「もう探しても無駄だよ。国中、毒草しか残ってないよ」とアールがエフに話しかけました。
「そうだね」とのんびりした声で返すエフ。
「おなかがすきすぎて、おへそが背中から出てきそうだよ」アールは泣きそうな声で言います。
「そうだね」と、またものんびりした声で返すエフ。
 雑草を探すのもどこか上の空。今日一日ずっとそうでした。
 その態度にむっとしたアールは、
「なんだよ。ずいぶんと余裕のある言い方だな。それともお腹がすきすぎておかしくなっちゃったのか?」と聞きました。
「ふふふふ」と含み笑いをするエフ。
「何だ気持ち悪い。本当におかしくなったのかい?」
「お前だけに教えてやるけど、うちの父さんが食べ物をどこからか見つけてきたみたいなんだ」
「え? 本当に」
「うん、だから今日は夕飯までに戻って来いって言われているんだ」
 夕飯……久しぶりに聞く言葉にアールはくらくらしました。
「いいなぁ。エフの父さんは力持ちだからどっかから野犬でも捕まえてきたのかな?」
「分からないけど…とにかく夕飯までに戻らなきゃ」
「いいなぁいいなぁ、うちの父さんは病気だから蝶々だって捕まえられないや」
「だから俺はもう帰るな」
「いいなぁ…」とアールは寂しそうにエフを見送りました。
 こうし二人は分かれました。
 けれどもアールはエフの家の夕飯が何だか知りたくなって、こっそりと後をつけていきました。
 木の陰に隠れて近づいて、窓からエフの家の中をのぞき見ます。

 エフの家族が全員、食卓についています。
 しかし食卓の上には料理がありません。
 不思議に思っているとエフの父親が立って、火掻き棒を手にしたかと思うと、エフの頭のてっぺんに打ち付けました。
 エフは頭から薄いピンク色の液体を流しながら食卓に突っ伏して、数回ビクンビクンと動いた後それっきりです。
 エフの母親は肉切り包丁を取り出して、エフの腕や足の肉をきれいにそぎ落としていきます。
 骨は父親が鋸でギーコギーコと歯を立てます。

 アールはその光景を見ながら涙とよだれが止めどもなくあふれ出しました。
 そしてそっとその場を離れ、家路へとつきました。
 道すがら拾った石を片手に、夕飯の父親の肉の味を想像していました。

     




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「夕飯」採点・寸評
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1.文章力 80
2.発想力 40
3. 推薦度 40
4.寸評
 悪くはないのですが、オチが弱いかナア。
 この答えは一番初めに持ってきた方が良かったと思います。
 食人派とヒューマニズム保守派の戦い。
 こっちだともっと好みでした。

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1.文章力 60点
2.発想力 30点
3.推薦度 40点
4.寸評

 糞まで食うものがいるというのに、オチにある行動が行われていない方が不自然なわけで、正直オチはすぐに分かってしまった。
 最後のアールの行動も含めて、最初の国の状況を説明している時点から分かる人には分かってしまう。いわゆる「使い古した設定→予想を裏切らないオチ」の作品になってしまっているのが残念。
 会話を主体にした文章は読みやすく、すらすらと読み進められるのだが、少年二人の会話から後は勇み足過ぎて起承転決の転と決がないがしろ過ぎる構成に見えた。
 もう一ひねりのオチが欲しかったことも含めて、後半をもう少し練っていればまた変わったのではないかと思わずにはいられない。
 いいものが書ける作者だと思うので、別の形での話作りに期待したい。

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1.文章力
 90点

2.発想力
 80点

3. 推薦度
 85点

4.寸評
 短編らしい、強烈なオチの一品です。
 ――とはいえ、オチ自体はそこまで意外ではありません。描写が巧みなのです。一部始終を見ていた少年が最後に抱く二律背反の感情……それが読者に鋭く突き刺さることになります。巧いです。
 それにしても、心底食うに困れば、本当に家族ですら手にかけてしまうようになるんでしょうかね……実際はそんな気力もなく野垂れ死にそうな気もするんですが。

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1.文章力 80点
2.発想力 40点
3.推薦度 75点
4.寸評
 文章:
  子供の無邪気さの描写がテンポ良く、更に文章も短く上手く纏まっていて非常に読みやすいです。ただ、オチの動機付けが若干弱いです。なぜ身内を食べなければいけないのでしょうか?

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1.文章力
 70点

2.発想力
 50点

3. 推薦度
 40点

4.寸評
 文章は読みやすく、情景も伝わります。(それだけに吐きそうですが)
 ただ発想的には本当は残酷な~で見られるとおり、ありがちなものです。
 根本的にグロが嫌いなのでおすすめはしませんw 

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1.文章力 (60点)

2.発想力 (50点)

3. 推薦度 (50点)

4.寸評 
前作に続いて文章は相変わらずの読みやすさですが、あっさりとしすぎている感があります。
オチも前作に比べて弱く、ラストが簡単に予測できてしまいました。
暴力的な解決ではなく、合法的に人肉を得るアイデアか何かがあれば面白かったのではないかと思います。
個人的に、こういったブラックユーモアを選んだ着眼点に好感が持てます。

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各平均点
1.文章力 76点

2.発想力 48点

3. 推薦度 56点

合計平均点 180点

       

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