Neetel Inside 文芸新都
表紙

玉石混交のショートショート集
クロネコ収集社(作:ゆゆゆ)

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俺は一人呟きながら『また』調査書を乱暴にめくった。



                               
  ◆ 

珍しく朝早く起きてしまった。まだ6時前だというのに。とりあえずトイレ行って寝なおすか、そう思い一階に下りた矢先、母にごみ出しを頼まれた。
小言を言って口論になるのが面倒だからさっさと済ませてしまおう。
 

                               
  ◆ 



 (ココハドコダ?)

男が目を覚ます、頭が痛い、俺は誰だ、ここはどこだ、今何時だ?だめだ、混乱している。いや、混乱していると自覚できる分まだマシなのか。
落ち着け。落ち着け。
俺は園田 柚 19歳、学校は…とそこまで思い出したら少し落ち着いてきた。
時間を確認してみる。午前6時15分だ。なんだ、まだ布団の中で二度寝をしてる時間じゃないか、きっとこれは夢だ。そういえばここはすごく暗い。
俺はもう一眠りするため、意識を深く沈めようとしたとき、男の声が響いた。
「やっと起きたか。と言っても君が一人目だがね。」

男はマエダと名乗った。
俺は再び混乱し、その時初めてここが密室、いや車内だということに気づいたのだった。
この車は確実に俺の知らないどこかへ向かっている。
「君は園田 柚君だね?市内の専門学校に通うごく普通の一般人。」
マエダが俺の個人情報をべらべらと話しはじめたが、それどころではない。
これはいわゆる拉致というものなのではないか?そうなら早く警察に連絡して助けを呼ばなくては。110、119、ケータイはどこだ。
俺は両ポケットの中を探るが見つからない。そこにマエダの制止の声がかかった。
「無駄だよ。携帯電話は回収させてもらった。」
ならば今度は大声でどうにかするしかない、と腹いっぱいに息を吸い込む。しかし
「この車は防音仕様でね、いくら叫んでも意味がない。特注なんだよ?」
と、俺の行動を見透かしたかのように言いやがる。
「どこの特注だ!クソッ!!」
なかば八つ当たりのように、聞いても意味のないであろう言葉を叫んだ。
「政府だよ。」
マエダからのあまりに意外な返答により、俺は言葉を失った。

「昨今の大不況はニュースをよく見ていない君でも知っているだろう。なかでも最近の不況は5年前に起こった株価大暴落をも超え、どん底の状態にある。」
そんなことはおれでもわかる。今朝の新聞の一面もその記事だった。ここ三か月は経済か殺人の話題で持ちきりである。嫌な世の中になったものだ。
「物価高騰も加担して国民も疲弊しきっている。そんなとき、君ならどうする?」
大層なご質問だ。それがわかれば苦労しない。そう思ったので黙っておいた。
するとマエダが続ける
「そう、答えはそう簡単に出るものではない。だから政府は苦肉の策を打ち出したんだ。」
そこで一呼吸おき、その言葉を口にする。


「人間削減法案」


背中に怖気が走った。心臓が高鳴り頭の中が真っ白になった。思わず唾を飲み込んだ。
そんな俺に構わず、説明が続く。
「いらない人間を削減して、日本を立て直そうっていう計画だ。詳しい説明は抜きにするよ。ボクには、いやきっと誰も理解できない。」
「狂ってる・・・」
俺は小さくつぶやく
「そう、狂ってしまったんだ。この国も。世界も。そして君がそれに選ばれた人間だ。」
「なぜ俺が選ばれたんだ!!!!!」
俺は今まで感じたことの無い恐怖心に支配され叫んだ。
「ああ、その説明がまだだったね。」
一転マエダが面倒くさそうに言う。
「もちろん無作為に選ばれているわけではないよ。ちゃんとした組織があってね。人間の性格や傾向ごとに分けてまんべんなく減らしていくんだ。」
このときの気分をどう表せばいいだろう。諦め、悲しみ、怒りそれらが一気に押し寄せてきて脳がパンク状態だ。
俺は喋ることができずにいた。
「ボクは無気力な人間を削減しに来たんだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「君は何かを成し遂げたことはあるかい?何かに本気になったことは?途中で投げ出したりするのがほとんどだろう。明日から本気出すとか言ってるんじゃ終わってるよ。」



ああ、そうか、俺は… 
今まで適当に生きてきたんだ。でも目立った問題も無かった。成績も普通くらいだったから、金を出せば入れるような専門学校に行き、親のすねをかじって生きている。
友達もいるし、好きな人がいるときもあったけど、なあなあで終わってしまった。今の状況だってきっと

『なんとかなる』と思ってるんだ。俺は。
「なんとかなるって思ってたんだろ。君は。」
見事に考えを当てられてしまったがさして驚かなかった。きっとコイツはそういう奴を、選んだのだから。

「さあ、普通なら説明を聞かせて諦めてもらったところで、このまま収集所に送る訳だが、君にはひとつ賭けをしてもらおう。」

マエダの手にはナイフ、これで俺になにをさせようって言うんだ。刺されるのか、それでも収集所なんかに送られて意味のわからない死に方をするよりマシかも知れないな。
もう諦めがついた。
「こんな狂った所にいるくらいなら自殺でもなんでもしてやる。」
「よし、じゃあ君には…」
                            

  ◆




(よしあの子にしよう、ちょうど俺と同い年くらいかな。)
近づく
(結構かわいい子だな、でも今から俺が×××るなんて思ってないだろうな。)
近づく
(どうせだし振り向かせてから…)
背後
「あの、すみません。」

「はい?」

ドス

                         

その時の彼女の顔は忘れられない。だが俺は初めて生きていると実感できた。

                            
  ◆


「記憶がないだろうけど、君は起きる前大きな袋にはいっていたんだよ。」
クロネコ収集社のステッカーが貼られた収集車を見ながらそんな説明を受けた。
「まさにゴミ扱い。ハハッ」
前田が笑う。俺は笑えない。

俺はマエダとの賭けに勝ち命を落とすことなく、収集所に着いたが、これからどうなるのか…。
「大丈夫。悪いようにはしないよ。それに殺されるよりマシだろう?」
俺の疑いの視線に気づきそうつけたした。仕方ないが俺は黙ってついて行くことにした。
ここで逃げたってどうにもならない。

「君さ、何の躊躇もなく見知らぬ女の子を×××したよね。君も相当狂ってるよ。」

それはお互い様だ。と言いたい気分だった。

                           
  ◆


俺は昔のことを思い出しつつコーヒーをすすった。もう冷め切ってやがる。
コピー機から調査書が出てくる。またか…。最近多いんだよ。

この収集所に集められた人間の年齢、性別、性格、職業、そして嗜好は様々で、一度ここに入ったが最後、彼らは『物』として扱われ、そして最期には殺される。
何をされるかは、今『あなたが死んでもされたくないこと』を想像してもらえればいいだろう。あるいはそれ以上か。
そしてこれを「×××」と定義する。
勿論俺が彼女に何をしたかなんて、言うことはできない。

今日も日本中で被害者が増え続けている。
明日、あなたの身に訪れることかも知れない。

「アンタ達も気をつけろよ。」

     




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「クロネコ収集社」採点・寸評
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1.文章力
 50点

2.発想力
 40点

3. 推薦度
 40点

4.寸評
 こんな政府は嫌ですねえ。
 物語が伝わり難い文章だと感じました。そんなに深く読みたい物語でもありませんが……
 あらゆるところに納得がいかない表現や説明があるので、疲れました。

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1.文章力
 40点

2.発想力
 50点

3. 推薦度
 30点

4.寸評
 作者様の脳内では法案の意味も×××の先も、主人公がどうなってるかも、どんな賭けであったかも、前田の立場も、タイトルの意味も理解できてるんでしょうが…  読者には「はぁ!?はぁ!?はぁ!?」の連続なんだよ!!!!!読んでる側としては何もかもが一貫性がなく説明不足で、意味不明な作品を読まされたという印象です。
 いくら「この発想、展開、おもしれーーー」と作者様が思っても、読者に伝わらなければ何の意味もありません。作者のオナニーです。基本からやり直してください。

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1.文章力 50点
2.発想力 60点
3.推薦度 40点
4.寸評
 構成が分かりにくいです。時系列に並べたほうが良かったのではなかったでしょうか?
 ところで、政府がこんな賭けをするような真似をするんでしょうか。狂ったにしろ、ちょっとリアリティーに欠けるように思えます。

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1.文章力 70点
2.発想力 60点
3.推薦度 60点
4.寸評

 まず、主人公が自分を攫った人間の言うことをあっさりと信じ過ぎてしまうことに説明があるのは良かった。
 主人公がそういう性格で、だからこそ攫われたのだということは読んでいれば分かるのだが、最後に主人公がした選択さえ人に言われたことをそのまま実行しただけ。自分の意志で何か行動を起こせたわけではないというのはいい皮肉である。
 一見無茶苦茶に見える設定と展開だが、マエダという男が語ったことが事実だという描写もない。
 主人公がわけのわからない事態に巻き込まれる、という状況からオチ系の話かと思いきや、メッセージ性を反面教師的に見せる作品だったわけだ。
 残念なのは、せっかくタイトルに冠した収集社について最後までほとんど分からないことだ。そこがはっきりとしないと主人公の最後のセリフにも説得力が出ず、行動に共感もできない。
 それと、そこを突っ込んではいけないのかもしれないが、無気力な人間を選ぶにしても最初に前途ある学生は選ばれないだろう。

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1.文章力 30
2.発想力 30
3. 推薦度 40
4.寸評
 途中途中で好きな形の文章が存在した。
 内容はよくある物なのだが、気持ちよい構成の片鱗が見える。
 もう少し長くしてもらいたい作品。

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1.文章力 (70)

2.発想力 (80)

3. 推薦度 (70)

4.寸評 
×××って見ると、なんだかエッチなことを想像しちゃいますよね!
文章は平坦ですが、それが物語と合っており気になりません。読みやすく、淡々と物語が進行していくのに、読んでいるほうはどこかドキドキさせられる。そんな面白い話です。
最後のセリフはNEET社に対する挑戦なんでしょうか。

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各平均点
1.文章力 48点

2.発想力 48点

3. 推薦度 42点

合計平均点 138点

       

表紙

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Neetsha