Neetel Inside 文芸新都
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神々の異世界
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戦いの理由は難しくなくていい。
シンプルなほうが後々楽になる。
自国の繁栄のためであるとか。
誰よりも強い力を持つためだとか。
約束を守るためだとか。

しかし一番簡単な理由がある。
物的な理由がなくてもいいこの理由。
領土も文書も奴隷も何も関係がない。
思想が違うというだけで、人は殺しあう。
尊皇攘夷か佐幕か―――これだけで戦争の理由になるではないか。

神にはいろいろな種類がいる。
いわゆるゴッドなわけだが、ユダヤ教にもキリスト教にもイスラム教にも神はいる。
唯一神という考えもあれば、日本には八百万という途方もない数の神様がいるという考え方がある宗教だってある。

もしその神がひとつの物を黒といい。
他の神がそれを白といったらどうなるだろう。
私たちの神様が正しいはずだ。
いや、俺たちの神様に間違いはない。
お前たちの神様は偽者だ。
そんなこというならお前らの神とやらはくそ野郎だ。
なんだと、調子に乗るのもいい加減にしろよ。お前らの神と一緒でお前らはカスだよ。
もう許せん!こうなりゃどっちが正しいか生き残りをかけて勝負だ。

目に見えてる。

神はどんな姿なのかはわからない。
それが人型なのか、動物系なのか、液体なのか、ガス状なのか、それとも得体の知れない怪物のような姿なのか。
人型ならさぞ威厳があるような顔立ちや容姿なのだろう。
動物ならシシガミのように特殊な形をしているとか、バハムートのようなでっかい神なのだろう。
液体やガス状はちょっとわからないが、金色にひかったり、七色に瞬いたりするのだろう。

ともかく神々しいという字に神が使われているのだから、神々しいのだろう。
見ただけで、人々は頭をたれ、ガチガチと震える。
話せる人は高い位ににつき、王にも意見をする権力を持つ。
いや、そのものが王になる。卑弥呼がいい例だ。

そんなまだまだ世界には王や貴族なぞ、中世。
そして、ヨーロッパではキリスト教が神の名の下に戦争を起こし、人殺しを神が正義という勲章つきで、世界に広めているところだ。
時代はここ。
しかしキリスト教なんてのはない。イスラムもない。
だってこの物語は、キリストともアッラーとも違う神によって支配されている世界の本だから。

     

その国の王様の名前はラヴ・メジャーといった。
メジャーというのはこの国の王様が代々ついで行くものだった
この国の名もメジャーといって、メジャーというのはこの国の名前でもあり、この国の王様のことでもある。
そんなこの国は宗教でもって国を治めていた。
あがめている神様の名前はカルコサといった。
その神様はとても醜くて、口では言えないようなにおいを発し無数の触手を地面に這わせながらどこか遠くの異次元の世界で安住しているといわれているのがこの国の民の通説である。
なぜ、神々しくもない醜い神様をあがめているのかと旅人は聞いた。
この国に立ち寄る旅人は大体その質問を口に出す。
言い回しは違うかもしれないが、民は歌うようにこう答える。

その昔――――まだ王様がメジャーと名乗る前のこと。
国の回りは敵だらけでした。
北にはヘイロー南にはリーズン東にはプラチナム西にはゴーア。
ヘイロー、ネオネオ。リーズン、ブラキア。プラチナムはレッカ。ゴーアはイデーサ!
それぞれに守護神ともいえる神々がいました。
この国の名はまだありません。というか国がありません。
そのときあなたのような旅人が、きっとあなたのような旅人が。
この地の大地主に話したのです。
「私はどの国の神よりも強い神様を知っている」
それを聞いて地主である、アプトン・メジャーは身を乗り出しました。
いや、まて。旅人はアプトンの前に手を出して遮りました。
その神はとても醜くて、強烈なにおいを発し、呼び出した際に無礼を働いたら死ぬまで踊らされるオリーブの木にされてしまうという話を聞いても地主は、目を煌びやかに光らせます。
醜いぐらいがなんだ、私の妹のほうがずっと醜いかもしれない。
くさいのがなんだ、俺の親父の足のにおいをあんたはかいだことがあるのか。
無礼を働く?俺はごますりで生きてきたんだ。そんなことするわけないだろ。
地主はもう神様を呼ぶ気満々です。
旅人は深いため息をついて答えます。
私から話しておいてなんですが、あなたは後悔しませんね?
後悔?国の王になるのになぜ後悔するんだ?
旅人は不満そうに答えます。
・・・あなたが思っている神と私が言っている神とははっきり言ってレベルが違うのです。
ネオネオなんてのは、せいぜい天候を変化させたりする程度でしょう。
イデーサはこの間ゴーアによって神官を見てきましたが、せいぜい一年後のことがわかる程度でしょう。
じゃあ、お前が言う神様はなにができるんだ?
100年後の世界がわかるのか?
そんなことはできませんよ。
じゃあ不老不死にできるのか?
冗談じゃないですよ。
では、魔法使いにしてもらおうかな?
無茶ですって。
だったら何ができるのだ!地主は叫びました。
旅人は静かに、暗く、低い声で答えました。
破滅――
地主は怪訝そうな顔で旅人の顔を見つめます。
破滅、腐敗、消滅、壊滅、根絶。
いいかたはどうでもいいのです。
そこにある人が国が物が城が破壊されます。
川は腐って生き物はすめなくなります。
谷は荒れ果てて悪魔が住み着きます。
その場所は・・・なにもないただ一面の荒野があっという間に出来上がるのです。
地主は青ざめながら小刻みに震えています。が、笑顔です。
その力は本当か?
そんなすばらしい力があればこのガザダゴン大陸の王になることだってできるじゃないか!
旅人はもはやなにもいいません。
一食一般の礼として、この近い未来にガザダゴン大陸を一つにまとめようとする男にとんでもない事を教えてこの場所を去ったのです。
それからはよくわかりません。
アプトンはカルコサを召喚した。三樽のぶどう酒とヤギの肝をお皿一杯に盛って、呪文を唱えたのです。
その呪文はメジャー様が代々しっています。
北のヘイローはカルコサによって国ではなく、焦土になってしまいました。
まだ北には木も生えていません。
それを見て、東も西も降伏しました。
南のリーズンはブラキアを召喚してメジャーといわれた新生神国に立ち向かったのです。
しかし、ひどいものでした。
ブラキアはカルコサの姿を見るなり、たちまち逃げ出し、ヴァルシア火山に逃げようとしましたがカルコサの触手につかまり、なんと食べられてしまったのです。
それからしばらくして、メジャーに逆らう国はありません。
そうして平和になりましたっと。

そうなのですか。ありがとうございます。
そういって旅人はまた旅に出た。
大体正しく伝わっているみたいじゃないか。
そのとき風が吹いてローブが飛んだ。
次の神様はあいつなのか。
そう思って旅人は歩き出した。

そんなラヴ・メジャーはカルコサのことなんて何も知らなかった。
親父も祖父もその親父も極端にカルコサにおびえていた。
あの場所以外ではカルコサの名前も出そうともしなかった。
寝所ではたびたびうなされるようだった。
そして旅人は去り、二年が過ぎて20となったラヴにある儀式が行われようとしていた。
王様が20になったら成人の儀式と当主の交代ということをあのおぞましい神様と面会しなくてはならないのだ。

地下室というには広すぎるこの部屋は巨大な空間の中に幾何学的に狂っている角度の石がたくさんあった。
そしてその中にひときわ目立つ石というより岩がある。
その岩は何かクワガタのようなはさみが幾重にも幾重にも連なっているような形で、明らかに異様な空気を放っていた。
この部屋に入ってからラヴの気分はよくない。
嫌過ぎる圧迫感と気にせざるを得ない臭い。
そして薄暗いこの空間と特徴的な石とが気味が悪い。
前当主である、クサキ・メジャーがカルコサを召喚した。

召喚といっても目の前にカルコサが現れるわけではないのだ。
なんせ、カルコサは異次元にすんでいて、同じ次元に来るわけはならないのだ。
同じ次元の同じ場所に現れたらもう召喚者も崇拝者も謀反者も敗北者も関係ない。
残酷に殺されるか、無残に腐らされるか、ムシャムシャの食べられてしまうのかのどれかだ。

この日を機にラヴはたびたび夢でうなされることになる。
町でカルコサの名前が出るたびに吐き気を催してその日は生きた心地はしなかった。
日々やつれていく自分。
父や祖父とまったく一緒だった。
それでも崇拝をやめてはいけない。
無礼を働いてはいけない。そう初代アプトン・メジャーが言われてから何より大切に守っている。
このの二つを破ったときメジャーという国もヘイローと同じような結果になってしまうから。

       

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Neetsha