Neetel Inside ニートノベル
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わろすうがく
Ch1 Kyo-ju

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担当教授の部屋を、学期が始まって三カ月目にして初めて訪ねた。
明日が提出期限の課題に関して質問があったからだ。

先生、課題って明日提出ですよね?と、教室で一番前の席で堂々と居眠りをする学生が珍しく来たかと思えば、やれやれそんな事か、とでも言いたげに先生はキーボードを叩くのを止めた。
「何か問題でもあるの?」
「課題ってどこですか?」
先生は僕の問いには答えなかった。代わりに、ノートを取り出し何かを書き始め、それを書き終わると、そのノートにかかれた内容を読み上げてみなさい、と講義中の様に指示した。

正直に言うと、僕は早く帰ってニューヨークとシカゴの市場の動向を確認したかった。

     

ノートにかかれたことを読み終わり、もう一度先生の方を向いた。
「今日は沢山やるべき事が増えたね。」、付け加える様に、また明日、と言って先生は再びキーボードを叩き出した。

数値計算のソフトを持っていなかったので、生協でMATLABを買わなければならなかった。
生協でMATLABを注文すると、104ドルと言われたので買わないままアパートに戻った。
帰りの道中、とは言っても一マイルにも満たない短い間だが、確かGNUなんとかってフリーの数値計算ソフトがあったな、と考えていた。既に問題の偏微分方程式を解いた気持ちでいた。

自分の部屋に戻りニューヨーク市場の終値を確認した。
小幅に上がっていた。
東京も小幅上げかな、と思ったら結局300円近い上げだった。
スズキを売っていくつかの銘柄を買い足した。

     

頭が痛かった。
数学の課題提出が、実は来週だった事は良しとして、直接教授と話したにもかかわらず期限を勘違いしていた自分のコミュニケーション能力の低さに悲しくなった。
そういえば、暇つぶしに履修している国際政治とアメリカ史の課題も、来週が提出期限だった。
アメリカ史は、講義の間中ニューヨーク市場の動向をiPodで確認しているから、当然のごとく何も分からない。国際政治の講義も、教授の出席を兼ねた小話の後は寝ているから、これもまたサッパリだった。

これら二つの課題は適当にでっち上げればいいや、何とかなる何とかなる何とかするさ、と独り言を言いながら自分を慰めた。今日はダウが250ドル近く上昇したから、保有している株もあがるかなぁ、とニヤニヤしながら帰路についた。

結局ほとんど保有している株価は上がってはいなかった。ハズレばかりを引いた様だった。
「うわらばw」
今日は仕方ないからチマチマと保有している株を売って、10%近く値を下げていたみずほフィナンシャルを買って引けた。

明日のニューヨークの動向次第で日曜の午後が違ってくるなぁ。

       

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